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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1384/1818

EX・その結婚届けを僕は知りたくなかった

連休なので、こそっと投稿。

 マイネフランにあるアメリスの家に戻ってきた僕らは、一先ず彼女の家に下宿させて貰うことになった。

 宿を取っても良かったのだが、僕と母さんの住民票を書いたりいろいろ書類とかあるから家に泊まってくれたまえとアメリスに促されたことが決め手だ。

 リエラ達も最近はアメリス邸、じゃなかった。フィラデルフィラルだっけ? まぁアメリスの家に御厄介になってるそうで、宿代浮くからってことが理由らしい。


 あまりの豪邸に母さんが震えていたし、街並みや髪の色が黒じゃない人々を見て困惑していたけど、なんかもう逆に新鮮だったので困惑されたままにしておいた。

 なんか、母さんの反応見るのが微笑ましくって。

 まるで自分の自慢の家に友人呼んだような気分である。むしろ、逆か。自慢の友人の家に母を呼んだ気分である。


 アメリス邸、じゃなかったフィラデ……言いにくいしアメリス邸でいいか。

 とりあえずアメリス邸の客間に親子で待たされる僕と母さん。

 ソファに座った僕の膝上にはアルセ。

 隣に母さんが座り、シャンデリアの光におろおろしそわそわと忙しない。


「おー」


 ああ、ちなみにこのアルセ、アルセ本人ではなく端末体という存在だそうだ。

 皆で名前を考えていたらしいんだけど、カインがアルセイデスの近種でアルセの端末体だろ、だったらアルセデスでいいんじゃね?

 ということでアルセデスという種族になったらしい。アルセです。と主張してる気がするんだけど僕の気のせいかな、ねーアルセ?


「おー?」


「と、ところで、その、ここは? 病院は?」


 今更聞くんだ母さん。えっとどう説明すべきだろうか?

 煌びやかで落ち付かない部屋でうろたえる母さんへの説明を考える。

 周囲を見回しながら説明順序を考えてみよう。


 部屋は二十畳くらいの、アメリス邸では比較的狭い部屋だ。

 調度品はほぼ高級で、客間というだけあって他者に見栄えのいい高級だけど壊れても問題の無い程度の調度品が置かれている。

 部屋の隅の高そうなでっかい壷も数千万ゴス程度だろうし、アメリスの父親なら十個くらい壊されても笑顔で消耗品だから気にせんよ。と言いそうだ。


 ソファもふっかふかの高級素材。目の前にあるテーブルは大理石。アルセデス、間違ってもマーブルアイヴィ使って破壊しないでね? あ、彼女達が使うのはマーブルアイヴィじゃなくてヒヒイロアイヴィか。

 アルセがこの世界に居た時に使えていたスキルはほぼ覚えているアルセデス。正直単体を狩ろうとするだけで人族滅ぶんじゃないかなってくらい強力な魔物になっている。


「えっと……」


「待たせたね二人とも」


 僕が現状を母さんに伝えようとした瞬間だった。

 ドアが開いてアメリスとミルクティがやってくる。

 手に持っていた紙から僕等に見せるように一枚取り出す。


「はい、コレが住民票発行書。カインが自ら採決するから確実に発行される。ここに名前を書いてくれ、住所やら保証人やら年間税については既にこちらで書いてあるし払ってある」


 用意が良すぎます。

 なんというか、アメリスには頭が上がらないなぁ。


「何から何までありがとアメリス」


「なぁに構わんさ。何しろ……おっと書けたか」


 ついつい日本語で書いてしまった。

 見知らぬ漢字という文字を目にしたアメリスがほうほうと唸る。


「えっと、まずかった?」


「いや、見知らぬ文字だが名を顕しているのだろう。問題無い。いや、本当に、これで問題無くなったよ旦那様」


「……ん?」


 ぴらり、名前を書いた書類がなぜかめくれ、下の紙が顔を出す。

 ……ん?

 なんだそれ? え? 結婚届け……? あれ?


「いやー、父が早く結婚相手を見つけろ女はダメだとゴネていて焦っていたんだ。最悪カイン王の側室にと考えていたんだが、王族になるとまた面倒でな。手ごろな男で私とミルクティの関係を知っている男を夫に迎えておきたかったんだ」


「え? あの、それって……」


「ああ、すまん、ほら、コレが本当の住民票発行書だ。もう一度名前を書いてくれたまえ我が旦那様よ」


「え? え? えええええええええええええええええええええええええ!?」


 話に付いていけない母さんの目の前で、僕は結婚届けにサインしてしまい、アメリスと結婚したことになったらしい。


「ああ、安心したまえ、貴族になれば側室は娶り放題だ。私もリエラ達の仲を裂く気はない。存分に結婚しまくり給え。ああ、ちなみに結婚したいと言っていた奴の名前は既にここに書いてあるからこやつらは全員お前の妻な」


「はあぁぁぁぁ!?」


 見ればリエラやらパルティやらルクルやらアカネさんとかテッテとかリフィの名前がつらつらと……って、待って、セインとかノノとかロディアとか誰か知らない人の名前もあるんだけど!?


「おめでとう。これで君は我がフィラデルフィラル家の次期家長だ」


「……は?」


「フィラデルフィラル家にようこそ。伯爵子息殿」


「い、嫌あぁぁぁぁぁぁ!?」


 異世界グレイシアに舞い戻って一日目、僕は沢山のお嫁さんと次期フィラデルフィラル伯爵の地位を無理矢理押しつけられたのだった。

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