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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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後日談・コルッカ

 コルッカでは戦勝学園祭が開かれていた。

 国ぐるみで凱旋パレード。兵士に冒険者に学生たちが国中の道を通り皆に祝福を受けながら行進を行っていた。

 高らかにホルンの音が鳴り響き、無数の楽器がハーモニーを奏で人々の歓声が埋め尽す。


 アレンもクラン全団を率いてコレに参加しており、歓声を上げる人々に手を振りながら通りを歩く。

 学生たちも恥ずかしそうにしながらも、葛餅を頭に乗せたロディアを先頭にして行進していた。

 当然ながらロディアは緊張し過ぎて右手右足、左手左足と揃っての行進になっている。

 周囲からカチコチ歩くロディアにくすくす笑いが起きているが、いつの間にか新入生代表みたいになってしまっている彼女には周囲に意識を向ける余裕などなかった。


 隣にノノが居てくれるからまだ前に歩けているが、ノノがいなかったらと思うと自分の状況に付いていけなくなってその場で停止しながら動けなくなっていただろう。

 なぜ自分が皆の代表として葛餅を乗せて歩かなければならないのか。意味が分からない。


 葛餅としては実力を買ってこいつなら伸びそうだと期待しているだけなのだがロディアにとってはいい迷惑だった。

 そんなロディアを護衛するようにクァンティ、ラーダ―、カルアが続き、その後ろをフィックサス、クライア、キキル、ファラム、ライカ、ランドリック、ヲルディーナ、レックスといったメンバーが。さらに後ろにはにっちゃんとにっくんが仲良く飛び跳ねている。

 ただ、アメリスやミルクティの姿はそこになく、落ちこぼれニンニンが身代わりのように二体のお守として学生たちに紛れ込んでいた。




 サファリ洞窟前に、その男達は集まっていた。

 冒険者パーティーハッスルダンディは、皆涙を流し洞窟前に立つ男に別れを告げていた。


「そうか、イくのか」


「ああ。俺たちは冒険者だからな。他の地域にも行かなきゃならねぇ」


「そうか、寂しくなるな」


 そう告げたのは彼らの願いを受けコルッカ防衛にやって来たサファリ洞窟の主マーキス。

 彼は洞窟に戻る際、ハッスルダンディのメンバーに呼び止められたのである。


「貴方は、またここに?」


「ああ。世界バグで七大罪としての力は無くなったが、俺はもう引き返せない場所まで来ちまった。大切な妻が二人もいるしな。ニコポナデポやボノー達と楽しく暮らすさ」


「ならば、またいつか。いつか必ず、貴方の元へ戻ってくる」


「ふっ。期待はせずに待っておくよ。我が愛しき男共よ」


 男達は咽び泣く。

 ただ隣町への護衛依頼を受けただけの冒険者たちは、この世の別れの如く握手を交わし、熱き抱擁を行い、一人、また一人と護衛任務へと向かって行くのだった。




 レーニャはカレーニャーの森へと戻って来ていた。

 頭の上にはネズミミック。

 しばし外に出ていたためか、レーニャの体内からよく出てくるようになった。

 そんなネズミミックの隣には五匹のネズミ。

 チューチュートレインもまたレーニャと共にカレーニャーの森へとやって来たのである。


「チュー」


「れにゃー」


 帰って来たよ。と挨拶をすれば。ひょこひょこっとカレーニャーたちが木々の隙間から顔をだす。


「ヒャッハ」


 そういえばヒャッハーたちもここに居たな。レーニャはそんな事を思いながらカレールーバーを取り出し自分で食べる。

 すると、カレーニャ達が木々から飛び出し姿を見せて、同じくカレールーバーを食べ始めた。

 彼らだけで通じ合う謎の行動。

 久々にゆったりと仲間たちと過ごせることにレーニャは和やかな気持ちになるのだった。




「「イェーイ」」

 アメリス邸の庭では、今、今世紀最大の熱き闘いが始まっていた。

 結局ここに居付いたイエイエ康と吾輩はサルであるのサルが互いに自己主張合戦を始めたのである。

 ただいま三百戦三百勝三百敗三百引き分け。互いに勝利を譲らず相手を敗北だと決めつけるがゆえにこんな戦績結果になっていた。正確に言えば三百引き分けだけでいいのだが、それを他人が告げるとまたややこしくなるためアメリス邸のメイドや執事たちは彼らの意味不明な闘いを無視して作業を行うことにしていた。


 鶴の構えを取るイエイエ康。カマキリの構えをするサル。

 二人の決着が付くのはまだまだ先のようであった。

 というよりも永遠決着は付きそうになかった。




 静かになった学生寮。パレードは疲れるからパスという学生たちが居残っていた。

 その一人であるハロイアはちゃぶ台に湯呑を置いて既に座っていたロリコーン至高帝の隣に座った。


「平和になりましたね」


「ふぉっふぉ。善きかな善きかな」


 二人してゆっくりとお茶を飲み、一服。

 洗練された動作の至高帝のしぐさを見てぽぅっと顔を赤らめるハロイア。

 そっと身体を寄せて思考帝にもたれかかる。


「は、ハロイア嬢?」


「ふふ。おじ様。そろそろ私と、子作り致しませんか」


「ふぉ、ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 お茶を噴き出しかけた至高帝の耳元にふっと息を吹きかけ誘惑を始めるハロイア。

 幼女認定しているハロイアに誘惑され、紳士の興奮はMAXへと駆け上がる。

 紳士的対応ができたのか、至高帝が暴走したのか、その先に何が起こったのかは、当の二人以外、誰も、知らない――――……

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