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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1374/1818

後日談・海洋、森林、大空

 深海にて、初めての魔王連合による会合が開かれていた。

 場所は白く輝くアルセの海洋樹である。

 この大樹を囲むように円陣を組み、各海洋の魔王たちが集まって来ていたのだ。


 リフィたちはマイネフランに向かいたいということで、今回はおらず、リヴィアサンが代表としてでていた。隣には四聖獣の一人プレシオがいるため、他の魔王達に舐められることもない。

 対等に意見を言い合えるため、此度の会合を開くことも出来たのである。


 なにより皆、先の戦争で共同で闘ったこともあり、それなりの関係は気付けていた。

 宴会目的の魔王も居たが、その辺りはどうせ話を聞いてすらいないので、彼らは放置しての海洋を統べる者たちがむやみに侵略しないようにとこの話し合いが始まったのである。


 我の強い魔王達なのでなかなか守られにくいかもしれないが、こうやって年一回でも互いに顔を合わす意味はあるようで、この後毎年このアルセの海洋樹を目印に集まることが決定された。

 敵対中の魔王もこの日だけは戦争を止めて楽しむという約定も決められる。

 リヴィアサンは感謝する。こんな日が来たのも、リフィが彼らと出会ったからだ。

 リフィとアルセ姫護衛騎士団に心の中でお礼を告げて、リヴィアサンは宴の準備に取り掛かるのだった。




「ロン!」


 ドドスコイ付近の森で、彼らは集まっていた。

 スクーグズヌフラ、レーシー、メイヴ、ティターニアの四人である。

 妖精女王は妖精郷からティターニアと共にやって来て、四人打ち麻雀に参加中である。


「がぁぁ!? また振り込みましたの!? ありえませんわ!!」


 ティターニアがレーシーに振り込み叫び崩れる。

 当然、レーシーはイカサマオンパレードであるが、素人の三人がそれに気付ける訳もない。


「はぁ……ところで妖精女王、そう言えば貴女出張って来てよかったの?」


「ええ。エイケン・ドラムに向こうを任せて来たから数日は大丈夫よ。それにしても、面白いわね麻雀。妖精郷に逸らせようかしら?」


「やめときなさいな。道具がないでしょ」


「それもそうね」


 そうそう諦めたメイブが溜息を吐く。


「そう言えばレーシー。先程から何度か配った後に牌を変えてたようだけど、アレってやっていいの?」


「へぁ!?」


「まさかあなた! イカサマしてやがりましたわね!」


「あはは。イカサマイカサマ。がんばれー」


「うわっ。って、シアナにアンヌーンじゃない。あんたたちも来たの?」


「ええ。エーケが女王様連れ戻して来てとうるさいから」


「え? 嫌だけど?」


「そう言うと思ったから女王代理特権使ってどんな手を使ってでも連れ帰って来いって言われてるのよ」


「はぁ!? 私が女王なんだけどっ」


「問答無用。ほら、帰りますよ」


 嫌がるメイヴをシアナがひっぱり妖精郷へと連れ帰って行く。


「丁度いいわねお開きにしましょう」


 そしてティターニアがお辞儀をして去っていく。


「じゃあ私も帰るわね」


 そしてスクーグズヌフラも去っていく。

 手を振って別れてしばし、はっと気付いた。


「しまった、あいつら負けた分の金払わず帰りやがった!?」


 気付いた時には既に遅く、彼女の側には誰も存在していなかった。




 それは世界樹ユグドラシルとも、イグドラシルとも呼ばれる大樹の上に居た。

 この世界の均衡を保つ四聖獣が一人、ヴィゾフニール。

 彼は今子育ての真っ最中である。

 真下の虫を捕まえてはひな鳥たちに餌を与えている。


 双子のひな鳥、ではあるのだが、片方は自分の妻、そしてもう一人はずっと妻の体内で生活していた艦長らしい。

 二人はアルセの為に世界を救って散った魔物達だ。

 転生して自分の娘として蘇った妻に、どう接すればいいのかヴィゾフニールは戸惑いを浮かべていた。


 二人の名前は生前のエアークラフトピーサンからエクー。ウミネッコ艦長からウミネと名付けられた。ウミネからは私はオスだ! と叫ばれたが、育児に疲れたヴィゾフニールは頑として譲らなかった。これ以上名前を考えるのが面倒臭くなったのである。


「あんまり美味くないわね。これなら空軍カモメたちが持ってきてくれる魚の方がマシだわ」


「ぬ、ぬぐぐ……」


「酒は? 酒は無いのかね父上」


「あ、あるかぁぁぁっ!!」


 そして爆発した。


「欲しいなら自分で好きな餌を取ってこいよ!?」


「私ひな鳥、ここから動けない。あなた、父親……あとは、分かるな?」


「ぐあああああああっ」


 両羽根で頭を抱えてもがくヴィゾフニール。

 彼の子育て奮闘記はまだまだ始まったばかりである。

 何度巣ごと蹴り落とそうと考えたことか。

 他の四聖獣達とは一味違う悩みに悶える彼の姿はしばらくの間世界中の上で見ることが出来、妖精たちから嘆きの声が上がったとか上がらなかったとか。

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