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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
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後日談・ギルメロン、ナーロイア、ぺズン、メリケンサック

 ギルメロン共和国ではジョナサン指導の元、魔物達との融和が始まっていた。

 ハイ・タリアンたちとこわごわ握手で和解するニンゲン達を見て、ジョナサンは涙を流してうん、うんと頷いている。


 正直強制的な和平に見えなくもないが、これで魔物達が街に襲いかかって来ないとなれば、ニンゲンたちにとっても安全になったと言えなくもない。だからこそ恐怖こそあるがサザウェンと握手を交わす議会の長たちだった。


 これから戦勝会。

 ギルメロン共和国にて魔物合同の祭りが開かれる。

 街の中央ではジョナサンが踊る予定で、評議会の面々は今から頭が痛い状況であった。




 ナーロイアに残ったのはギリアムとアマンダ。

 他のメンバーは既におらず、ギリアムたちは今、戦勝による祭りの最中だった。

 国を上げての大祭であるため、ギリアムもまた御輿に担がれアマンダと共に恥ずかしそうにしていた。


 バグの影響だろう。アマンダは地上に居ても呼吸困難になることはなくなっていた。

 進化したのか肺呼吸可能になったのか、どっちでもいいアマンダにとってはギリアムと隣り合っていられることの方が重要だった。


「はぁ……人生って不思議だわ」


「アマンダ?」


「ペットの復讐に喧嘩を打ったクランの一員と恋に落ちて王妃候補になるなんて、想像すらしなかったもの」


「ふふ。そんな人生だってあってもいいだろう。私は貴女と出会えて嬉しいよ。アルセ神たちに付いて行ってよかったと、心の底から思うよ」


 わーわーと歓喜する民衆の見ている前で、ギリアムはアマンダに口付ける。

 一層ヒートアップする民衆のエールを受けて、ギリアムはにこやかに手を振って答えた。

 逆にアマンダはかぁっと顔を真っ赤にして俯き、微動だにしなくなる。

 ナーロイアは本日も平和で美しい都であった。




 ぺズンもまた、お祭りが行われていた。

 王城前では王族による普通の祭り、ムーちゃんと共にセネカもこちらに参加していた。

 普通の祭りなので王族が御輿に乗って手を振って去っていくイベントや、ピアノ演奏、大道芸人など、様々な催しが行われていた。


 が、少し離れたぺズン王国入口付近でも、別の祭りが行われていた。

 その祭りの主催者はアフロ好きガニ。

 鋏をカチカチ動かしながら踊る姿はある意味異様。

 民衆はすべてアフロ化しており、ジョナサンが残した踊りを踊りながらアフロ祭りを楽しんでいた。


 そして王国から離れた湖で、一人オヒシュキは湖岸に座り寛いでいた。

 眼を閉じ、自然の音の中、王国から聞こえてくる喧騒に耳を傾ける。

 あそこで騒ぐ少女たち。彼らを守り切れたのだ。


 訪れた平和を存分に愛でる。

 降り注ぐ日差しの中日光浴を続けるオヒシュキは、しばらくゆったりとしていよう、と欠伸を噛み殺しながら思うのだった。




 メリケンサック公国では解放祭が始まっていた。

 なんでもモザイク人から解放された人々と喜びを分かち合う祭りだそうである。

 戦勝祭というよりも人々に受け入れられそうだからってことらしいのだが、民衆は全く気にしてすらいなかったようだ。


 ハレッシュとカノンは屋台を巡りながら楽しげにデートしていた。

 一方は幼い少女。そんな少女が腰元に来るくらいの背丈のマッシュルームカット男が手を繋いで楽しそうに歩いているのだ、周囲から見れば兵士さんあいつです、案件である。


 しかしながら勇者であり国王からも認められた夫妻であるハレッシュとカノンは、何度か通報され兵士に呼び止められつつも、それもいつものことだと笑いながらデートを楽しんでいた。

 ヤキソバを食べて口元が汚れたカノンをハンカチで拭いて、笑顔でおでこにキスをするハレッシュ。

 二人はとてもラブラブであった。


 ハレッシュたちとは別方向、スールとホーキが唖然としていた。

 目の前には椀子ソバを機械のように食べ続ける少女と、げふぅっと腹をさすって休憩中のパンクヘッド。

 ネフティアとアキオは世界各地をバイクで回っており、本日はここ、メリケンサックで昼食を取っていたのである。


 はい、はいっと掛け声と共にお碗に側を入れるオバサンと、一定の速度で食べ続けるネフティア。

 あまりにも出来た流れ作業に、まるでそういう機械なのではないかとすら思ったスールの目の前で、ふいにネフティアの流れが止まる。

 というよりも、素早く食べ終え蓋をしたのである。


 今まで流れ作業だったおばさんは止まり切れずに最後の蕎麦を閉じられたお碗に入れようとしてしまう。

 刹那、アキオが慌てて自分の椀を開いてぼちゃりと受け止めた。


「あ、危ねぇ! もったいなくも捨てる所だった」


「お、再開かい?」


「へ? あ、ちょ、待って。俺もう腹いっぱい」


「お碗閉じるまで永遠入れてやるよ」


「やめろババァ!? マジ無理、いやぁぁぁっ」


 アキオの悲鳴と共に椀子ソバが再開される。

 アキオの悪夢の時間が、始まった。

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