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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1372/1818

後日談・ダーリティア、コットン、ギルガン

 ダーリティア帝王は頭を悩ませていた。

 邪神の使徒と呼ばれることになった女神の勇者たちは退けた。

 しかしながら平和になった筈のダーリティアは今、かつて無い問題を抱えていた。


 一つ、後継者が居ない。

 唯一とも言えるバカ息子は女神の勇者が滅んだことで意気消沈し老けこんでおり、精神的にも何かできる存在ではなくなっている。そもそも全世界バグの影響か、全身から羽根が生えており、いつでもサンバが踊れそうな姿になっているため人様の元へ出られる身体ではなくなっている。


 つまり、世継ぎが居ない。

 早急にこの問題を何とかしなければダーリティアが消え去ってしまう。

 とはいえ、騎士団長のレティアを第二の正妻にしたことで早急にこの問題は解決するだろう。

 妻に先立たれてより世継ぎのことなど考えもしなかったが、こればかりはレティアに頑張って貰わねばなるまい。

 ダーリティア帝王は忠誠心の高い騎士団長を思い浮かべ頭を抱える。

 アイツで本当に大丈夫だろうか?


 そして問題その二、世界は未だバグを孕んでいる。

 この国にも残ったバグがいくつか存在しており、マイネフランとの直通路が民家のドアに繋がっているのだ。つまり互いの国に入り放題。

 いや、マイネフラン側は中央の噴水上空に繋がっているので確実にずぶぬれになるという意味不明なバグなのだが時間をかけずに行き来できるということもあり、結構な人々が通路を使っている。

 その為互いの国の兵士が検問を敷かねばならずたびたび会議を開かねばならなくなった。


 そして最後に、兵士達だ。

 リファインにより謎の調教を受けた兵士たちは眼が血走っており、悪人には徹底制裁、いつも周囲を隙間なく伺っており、住民から怖いと苦情が来ている。

 しかしながら精強な部隊になったことは確かであり、住民の安全も問題なく守れている現状。苦言を呈するくらいしかできないのだ。


 兵士長は兵士長で苦言を苦言とすら認識しない鈍い感性の持ち主なのが帝王の頭痛の種を増やしている。

 それでも、緊急事態だからと王城の壁を素手で登って来て王の部屋に直接やって来て報告して来た兵士が居た時には血相を変えていたモノだが、結局、彼らが国の為に動いている以上何も言えない帝王であった。




 コットン共和国は今、お祭りムードであった。

 それは戦争に勝ったからではない。

 本日、新たな王族が誕生するからである。


 コットン王ハーケンの新たな妻、ムリアンのイネアである。

 御輿の上にある玉座にハーケンが座り、隣の豪華な椅子の上に小さ過ぎる女性が座っていた。

 椅子の上にムリアン用の座イスを作ってもらい、そこに座っているのだ。


 当然ながら見物客達から見ることは不可能に近い。玉座に座ったアリを探せと言われているようなモノである。

 結局ハーケンは本当にムリアン達に結婚を申し出て、イネアだけが快く了承してくれたのである。


 イネア曰く、ぬははついに私も王族となるのね。ひかえおろー。

 と、胸を張って他のムリアン達にツッコミを喰らっていた。

 おそらく楽しそうだからノリで結婚するのを了承したようだが、ここまで大事になるとは思っていなかったらしく、物凄く緊張した顔をしている。


 そしてその行軍を、メルトガルドとモスリーンは魂の抜けた顔で見つめているのだった。

 なぜ、こんなことになってしまったのか。

 この日、世界初、ムリアンと結婚した国王が生まれた。

 後世に語り継がれた妖精の御后様という舞台演目は長くコットン共和国に語り継がれる喜劇となったらしい。




 ギルガン王国は神国祭の真っただ中にあった。

 ギルガン王ガウシスは街の広場に打ち建てられたアルセの噴水を前にして、自ら音頭を取っての祭りを開催していた。

 もはやアルセ神の奇跡を疑う者はこの国には居ない。


 世界を救ったバグは全てアルセの功績として称えられており、ガウシスが高らかにアルセを褒め称え祈りを捧げる。

 飲めや歌えの大騒ぎ。アルセ教の信者たちは大商会と共にアルセグッズを売りだし荒稼ぎしていた。


 稼いだ金額の半分はアルセ教の寄付金にするのだそうだ。

 それにしても……とガウシスは空を見る。

 輝くような緑の空は、どう見てもバグっている。

 ギルガン王国の上空のみが緑色になっているのだが、ある意味アルセの奇跡だと言われても不思議はない。呪いなのか祝福なのか、ガウシスでは判断が付かず、後の学者たちも頭を悩ませたという。


 だが、国民にとっては空が青だろうと緑だろうと関係は無いらしく、皆が笑顔で祭りを楽しみ、アルセ神への賛辞を叫びながら大酒かっくらっている姿が良く見られた。

 翌日には死屍累々となるだろう。しかし、今はただ、ひたすらにこの世に生を受けた喜びを存分に分かち合うのであった。

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