後日談・マイネフラン2
聖樹の森では今、大規模な祭りが行われていた。
アルラウネとワルラウネが久々に一同に会しての魔物達全てを集めての祭りである。
この日の為に捕まえられた生贄であるミクロンは聖樹前に丸太で作られた十字架に貼りつけにされ、火を掛けられていた。
アンダカギオギオたちが楽しげに柏手を打ったり踊ったり。
それを死んだ瞳で見つめるミクロンは自分、何でこんなことになってるんだろうと後悔する。
自業自得と言えばそれまでだ。
アンダカギオギオ族の集落を見付けたので思わず侵入してしまったのだ。
一度集落を襲撃されたせいで過敏反応したアンダカギオギオたちにあっという間に捕まり、殺されそうになったのだが、丁度森の主であるアルラウネから戦勝の宴を開くと連絡があり、ならば丁度良い生贄だ。とアンダカギオギオに連れて来られたのである。
「あのー。助けてはいただけません?」
「えー。どーしよっかなー」
近くに居たワルラウネにお願いするも、しゃがみ込んで膝に肘を付け、両手で顔を支えながら見上げる彼女は楽しげに眼を細めるだけである。
「悪ふざけは止めて助けたげなさい。あのニンゲン、一応アルセの関係者みたいだから」
「えー。しょーがないなー。おねーちゃんに感謝だゾ?」
マーブルアイヴィが十字架の真下に付けられた火を増したからブチ壊し、ミクロンを助け出す。
アンダカギオギオたちが驚き抗議してくるが、ワルセイデスたちに笑われるだけであった。
聖樹の森で宴が開かれている頃、マイネフラン噴水前でもまた、宴が開かれていた。
特設ステージで歌を歌っているのはマイネフランのアイドルパティア。
オッカケ達の熱も最高潮に達しており、何度もパティアたーんの掛け声が響く。
「お、なんだ天元の頂も来てたのか?」
「おぅ、バニングじゃねーか。そりゃ来るだろ。パティアたんのライブだぞ!」
「相変わらず人気だねェ。お? なんだ、デュエットしてんのか?」
「最近コンビ組んだんだ。カルエちゃんがんばれー!」
パティアとカルエが段上で笑顔を振りまきながら動き、歌う。
盛大な声援を受け、二人が光り輝いているようだった。
そして教会では……
ロリデッス神父が子供たちに囲まれていた。
今回の闘いで孤児になった者、もともと浮浪孤児だった者。セインとロリデッス神父が必死に集めた寄付金でようやく教会で囲う算段が付いたのである。
愛らしい子供たちに囲まれロリデッス神父はデレデレ。
それを良く思っていないのはシスター・マルメラ。もともと彼女を見つめ続けたロリコーン紳士からクラスチェンジしたのがロリデッス神父なのだ。
だからこそ、なんかムカつく。
自分はもう幼女ではないから見向きもされない。そんな気がしてムカッとしているため、最近の彼女の評判はすこぶる悪い。
しかもそんな彼女を気に掛けようとしたロリデッス神父は子供の呼びかけ優先のため気に掛ける途中で子供たちの方へと向かうことがままある。
なんかムカつく、マジでムカつく。何でこんなにイラつくのか?
「それは、恋ですね」
「はぁ? 頭にウジ湧いてんのかセイン」
「はっは、私の頭に湧いてるのはアルセ神様への忠誠オンリーです」
「だったらなんでンな訳のわかんねーこと言えるんだ。この私が、あのロリコン変態神父に、恋?」
「えー、だってヘンリーさんに相談したら、そりゃ恋じゃね? って言われましたよ」
「よし、殺して来よう」
早速ヘンリーへ突撃していくマルメラ。
アルセ教教会本部の信者たちにとって、ヘンリーは丁度良いストレス発散できる存在となっていたのである。
どれだけ攻撃しても死ぬことは無いし、相手も気にしないみたいなので遠慮がいらないのが良い。
特にアルセ神の怒りを買った存在であるだけに、何をしても周囲から酷いと言われることがないのが良い。
「しっかし、子供たちは純粋ですねぇ。あの変態紳士相手に好意を持ててるのだから。うん。皆の将来が心配なのでちょっと手を打っちゃいますか。という訳で妖精さんたちよろしくです」
「おっけー。アイツ最近調子乗ってるから徹底的にやってやんぜ」
「ひゃっはー。トリックオアトリート。お菓子をくれても悪戯するぜーっ」
許可を得た妖精たちが喜び勇んでロリデッス神父へと突撃していく。
「え? お? なんですか貴女達は!? あ、ちょ、ダメ。そこはダメですっ。あああっ、幼女たちの為に作ったクッキーが!?」
「ひゃっはー接収だー」
「奪え奪えー」
妖精たちが楽しそうだったので子供達も真似してロリデッスの懐に隠された飴やクッキーを奪い去って行く。
「ずらかるぞてめーらーっ」
「にげろーっ」
笑いながら去っていく無邪気な子供と妖精の群れ。
後にはぼろぼろになりながらもどこか満ち足りた顔のロリデッス神父だけが残された。




