そのラスボスがアルセ(>_<)ノなことを彼女たちは知りたくなかった
「行くぞリエラ!」
「はいっ」
リエラとカインが走る。
透明な部屋に佇む増殖の勇者は余裕の顔で二人の接近を待つ。
自分が闘うつもりはないようだった。
それもそのはず、既に彼は手を打っていたのだから。
「さぁ、いでよインペリアルナイツ」
「つっても自分なんだけどな」
「ようやく出番かよ。じゃんけんで勝ったばかりに本体の護衛役なんざやることになって暇だったんだ」
「男は殺して女は犯す。今から楽しみだぜ」
「せいぜい抵抗しろよなぁ。楽しませてくれねぇと困るぜ。折角ここまで来たんだしよぉ」
側面から四人の増殖の勇者が現れる。どうやらずっと待機していたようだ。
今までと違うのはその装備だろうか?
一人は剣。神々しいまでのその剣は無骨ながらも神気を放っている。
一人は弓。簡素な造りながらもただならぬ気配を漂わせている。
一人は槍。古代文字の書かれた槍はとてつもなく嫌な気配を感じる。
一人は鎚。雷を纏わり付かせた鎚は神秘的な雰囲気に包まれている。
「カインさん気を付けてください!」
「分かってる。ありゃ神殺しの武具だ。グーレイ神すら殺せる武器だぞ、迂闊に受けようとするなリエラ」
「は、はい!」
「甘いなァ」
ニタリ、鎚を持った増殖の勇者が笑みを深くする。
「離れようとも逃げようとも、俺の雷撃からは逃げられねぇんだよっ! 喰らえトールハンマーッ!」
その鎚は彼の知っている神話になぞらえミョルニルと呼ばれる武器だった。
地面を叩けば対象の敵へと雷が降り注ぐ。錬成の勇者が作った神殺武器である。
そして彼は迷うことなく床を打つ。
リエラとカインに向け、真上から稲妻が迸った。
物凄い音と共に二人が光に襲われる。
「離れた場所から!?」
「マズい、これは……?」
リエラとカインははて? と周囲を見回す。
相変わらず物凄い雷鳴エフェクトが二人に襲いかかっている。
だが、哀しいかな。神殺しの武器は既に……バグっていた。
ただただ物凄い雷鳴を鳴り響かせるだけで実質ダメージを与えることのない攻撃になっていたミョルニルを、増殖の勇者は自信満々使ったのだ。
そして、ダメージを負った様子の無いリエラとカインに戦慄する。
「馬鹿な!? 雷撃が効かない!?」
「はっ、雷属性対策済みか。どけ、次はこのイチイバルの威力を知れ!」
それはいくつもの特性を取り入れた神殺武器。
対象との間に異物があろうとも転移して相手を射抜き、決して癒えぬ猛毒を与えて確実に殺す弓矢である。
増殖の勇者がサディスティックな笑みを向けてリエラを射る。
咄嗟に剣で払おうとしたリエラ。剣をすり抜けた矢がリエラの眉間に刺さる。
リエラの能力が一時的に増加した。
「あれ? なんか身体が軽くなった?」
矢を引き抜き小首を傾げるリエラ。
「馬鹿な!? 俺のイチイバルを喰らって死なない!?」
「偽物掴まされたんだろ、どけ!」
槍を持った増殖の勇者が走る。カインに向け、渾身の一撃。
「喰らいやがれ、神槍ロンギヌスッ」
絶死の一撃がカインに迫る。
剣で受けようとしたカインだが。あまりの威力に耐えきれず剣ごと吹き飛ばされる。
カインの体力が回復した。
「おお? なんか走って疲れてた身体が軽くなった?」
「はぁ?」
「そら! よそ見してんなよ女! コレが勝利を約束されている剣って奴だ! エクスカリバーッ」
剣を持った増殖の勇者が離れた場所で剣を振る。
剣から光が迸りカインに注意を向けていたリエラに襲いかかった。
が、リエラに当る直前直角に折れ曲がり、槍を持った増殖の勇者を飲み込んだ。
スキル絶対勝利は既にバグり、絶対裏切りの特性を持ったエクスカリパーにより、ロンギヌス改めロンギヌヌを持っていた増殖の勇者は光に呑まれて消え去った。
呆然とする増殖の勇者たちに、リエラは自然笑みがこぼれる。
「くっ、何が、何がおかしいッ!!」
「いえ。すいません。そうですよね、私達は一人じゃ無かった。託された思いがここにある。アルセの武器がここにある。そして……あの人が残してくれたモノがある」
「なんだかよぉ、どんな御大層な武器が出て来ても、もう負ける気がしねぇな」
「行きましょうカインさん。涅槃寂静!」
「そうだな。そろそろ勘違い野郎に引導を渡してやるか。涅槃寂静!」
二人同時に覚醒へと移行する。
焦る増殖の勇者。必死に自分の武器で応戦しようとするが、既にバグった神殺しの武器では勝ち目など一つもありはしなかった。
「行くぜステータスギガブースト、縮地、貴女の為の英雄譚……兆殺崩牙斬!」
「行きますステータスハイブースト、音速突破、無限斬……応龍煉舞ッ!!」
互いに持てる全ての力を使い、リエラ、そしてカインが動き出した。




