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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
最終話 その彼の名を誰も知らない
1353/1818

そのアカルイセンがアルセにアトドルメッセすることを誰も知らない

「ようやく着いたか」


 乗っていた鳥から飛び降り、カインは大地に降り立った。

 見たこともない建物が折れ曲がった廃墟のような国。

 どうやらアカネたちの大暴れにより荒廃してしまったようだ。


 巨大ビルディングは根元から破壊され横倒しになっており、コンビナートと思しき丸い球体が転がっている。

 アスファルトで舗装された道路は破壊され尽くしており、もはや道の態をなしていなかった。

 そんな場所に降り立ったカインは目の前で脱出しようとしている男を見つけた。


「よぉ、そんなに急いでどこに行くんだ?」


「ふん。決まっとろう。ここじゃあ武器が打てん。別の場所でひたすら鍛造するのだ」


「あんた、女神の勇者だろ。上に錬成の勇者って表示されてんぜ」


 事実、錬成の勇者の頭の上にはHP・MPのバーと共に名前が表示されている。


「そうか。悪いがお前さんに構っとる暇は無い。武器を、最高の武器を造らんと」


「悪いが、逃す気はねぇ」


「嬢ちゃんは見逃したがの? どうせ儂なんぞ武器を打つくらいしかやることはないんじゃが?」


 リエラが逃したのか? 一瞬思ったがすぐに打ち消す。

 確かにリエラなら逃すかもしれない。

 しかし、今ここに居るのはリエラじゃない。カインだ。


 リエラ程のお人好しさはカインには無い。

 リエラのような自由さはカインには無い。

 だからカインが下すのは、マイネフラン国王としての采配だ。


「悪いが、国を預かる身として、あんたを見逃すわけにゃぁいかねぇな」


「なぜじゃ? 儂がやっておるのは鍛造だけ。他に迷惑など掛けておらんが?」


「ああ。だがな、あんたが作った武器を帝国兵が使う。その使用された武器が各国の民を、兵士を傷付ける。これ以上の被害を出さないために、あんたを殺す」


 剣を引き抜き正眼に構える。


「悪いな。世界の為に、死んでくれッ!」


 気合い一撃、逃げだすことすらできていない錬成の勇者を切り裂いた。


「おい、グーレイ、聞こえてるか」


 ―― カイン君、ちょっと神様に対して不敬じゃないかな? ――


「はっ。敬称なんぞで神罰下すような心の狭い奴じゃないだろ。女神の勇者ってのは後どれだけ残ってる?」


 ―― 女神の勇者か、残っているのは、おや増殖の勇者だけみたいだね ――


「マジか。もうそいつだけかよ!?」


 ―― 増殖、知識創造、鋼鉄、融合、料理、錬成、飛行、操船の勇者が居たが、操船は海の藻屑、飛行はピーサンに飲み込まれ爆死、錬成は君が今斬った。料理はリエラが倒し、融合はこの戦争が始まる前に死んでいる。鋼鉄の勇者はこの世界の勇者唯野さんが討ち取った。知識創造は……先程アネッタになったよ ――


「アネッタになった? よくわからんが、とりあえず残ってるのは首魁のみっつーことだな。どこに居る?」


 ―― 案内しよう。今リエラ君が向かっている。行くのだろう国王陛下 ――


 カインは目を閉じ考える。

 リエラが行くのなら任せてしまってもいいだろう。

 彼女ならばきっとやってくれる。そう思う。

 でも、だ。

 マイネフランに襲撃を掛けて来た相手にきっちりお礼をせずに終われるか?

 それがマイネフラン王でよいのか?

 いや良い訳がない。むしろ自分自身がソレを良しとしていない。

 かっと、眼を開く。決意に満ちた顔でカインは告げた。


「当然だ」


 ―― いいだろう、指示を行う。行きたまえこの世界の勇者。邪神の使いを見事打ち倒してくれ ――


 神に頼まれて邪神の使徒を討つ、か。

 カインは不意に苦笑する。


「全く、一年前は気ままな冒険者だったっつーのにな」


 アルセに出会い、リエラに出会い、ネッテと結婚して王にされて、気が付けば神に願われ世界を股に掛けた大決戦の中心に居る。

 全てバグに導かれた結果である。


「思えば遠くへ来たもんだ……こうなりゃネッテの分まで最後まで付き合わなきゃな」


 グーレイ神に導かれ、カインが走る。

 行く手を阻む帝国兵を切り裂いて、戦車を薙ぎ散らし、味方が暴れる場所へと現れる。


「ちょ!? カイン!?」


「おお、マイネフランの王か」


「カイン王様!?」


「カインさんって、あの!?」


 驚くメンバーによぉっと挨拶しながら一直線に駆け抜ける。

 気付いたアカネが手を差し出す。


「ハイタッチ。行くならやって行きなさい」


「なんだそりゃ。まぁいい、こうか」


「私の分までぶっ飛ばして来なさい」


 アカネの側を駆け抜ける。


「アネッタ。この者も仲間だ。そら、行って来い」


「えっと、がんばって?」


 ルグス、アネッタとハイタッチ。そのまま前方の左右にいたセキトリとクルルカが手を差し出す。


「下でリエラさんが待ってます」


「頼みますカイン王」


「テメーも王族だろうが。まぁ、任せな! きっちり解決してくるからな」


 クルルカにハイタッチ。

 地下通路への入り口を持ち上げ待っていたセキトリと軽く言葉を交わし、ハイタッチして地下へと向かう。


「待ってろよ増殖の勇者。リエラ、俺の分も残しといてくれよ……」


 神に導かれ、ネッテの勇者もまた増殖の勇者の元へと向かうのだった。

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