そのア彼ルセがア藻ルUセいnアいルこセとをア少ル女セたちは知った
「ちくしょう……」
氷漬けにされた二体の鳥。その二匹を取り囲む氷を両手で叩いているのは、膝立ちの少女。
パルティエディアは失意のままに、未だ東大陸に居た。
力だけは強力だが、スキルを放つことが出来ない消耗状態。
あの彼の元へと駆け付ける為の鳥は氷の中。
彼女は今、完全に詰んでいた。
なんとか魔力が回復出来れば、少しだけでいいのだ。少し回復出来ればこの氷を溶かし、中の二匹を連れ出す事が出来る。
そうすればあの人の元へ向えるはず。
魔力回復まであと少し、もう少し、よし、これで……
刹那、世界が悲鳴を上げた。
はっと空を見れば、雲にモザイクが走り、ビリビリと砂嵐が発生している。
通常の空をテクスチャにして引き裂いたように、ノイズが走り異物が混ざる。
魔法が発動し、二匹の鳥を救出した時にはもう、もう、全てが終わっていたのだ。
「あ……あぁ……」
世界が急速に変わって行く。
全てが加速的にバグって行く。
それは彼女が最も恐れた結末だった。
それはカチョカチュアが望んだ結末だった。
復活した二匹の鳥がお礼を告げる中、彼女は一人。その場に崩折れる。
遅かった。
裏切り者の目論見通り、彼は使ってしまったのだ。
こうならないために神々の元へ行ったのだ。
あの人と別れることのないように。なのに……
「終わった……」
信じたくなかった。
一匹の背に力無く背負われ、羽ばたかれるまま彼の居る場所へと向かう。
信じられる訳がなかった。
あの人がもう、居なくなってしまうなどと。
納得できる訳が無いのだ。
だから、一縷の望みを掛けて、向う。
それは見たこともない大樹だった。
けれどなぜかそこが目指す場所だと理解した。
パルティを乗せた鳥が、ルクルを乗せた鳥と同時に丘へと到着する。
先を争うようにルクルと二人走りだす。
丘を目指していた帝国兵の一団を切り裂き、カレーを投げつけ撃破する。
アニスとペンネが守る丘へと辿り着いた二人は、その大樹の根元、ひっそりと佇むグランドピアノを見付けて呆然とする。
「ピアノ……」
「ああ、それ? いつの間にかそこにあったのよ。さっきまで音が鳴ってたんだけど、もう鳴らなくなったみたい」
アニスが告げる。
その言葉を、聞くことすらできず、パルティもルクルもただただ呆然とそれを見つめていた。
「そん、な……」
「るぅぅ(いない)……」
「アルセも大樹になっちゃうし、世界は変な状況になるし、どうなってんのかしらね」
帝国兵を撃破しながら告げるアニス。
どうでもいいと聞き流す二人に、帝国兵が斬りかかる。
一人でも多く道連れを。帝国兵の攻撃が二人に迫るその瞬間、彼らの目の前に見えない壁が出現し、致命的なバグが発生する。
それはまるで二人を守るようなタイミングだった。
はっと我に返ったパルティとルクルは彼が助けてくれたのかと歓喜するが、違った。
そこに彼の姿は無く、ただアルセ姫護衛騎士団に有利なバグが多発しただけであった。
「ごめんねルクル。私、守れなかったみたい」
「るー(そんなことない。貴女が悪いわけじゃ……)」
「……ルクル。心の声、上に出てるわよ」
「るっ!? (嘘でしょ!?)」
ようやく気付いたルクルが空を見上げて気付く。
自分の言葉が訳されて上に表示されていた。
「ああもう、自分が不甲斐なさ過ぎて悔しいな」
「るーっ(もう、暴れたい気分)」
「そうね。折角だし、とりあえずこいつ等全滅させましょ」
帝国兵は憎い。彼がバグを使う切っ掛けを作ったから。
カチョカチュアもメリエも憎くはあるが、今は後回しだ。
この怒りとやるせなさをどこかにぶつけたくて堪らない。
ルクルも同じ気持ちらしい。
「ぺんたん」
ペンネが何か告げるように鳴く。
よくは理解できなかったが、慰められているような気がした。
流れ出た涙を拭い、パルティは帝国兵を睨む。
「たんたんぺん」
差し出されたのは魔銃。
魔力回復魔弾が詰め込まれたそれを受け取り、パルティは自分に打ち込む。
少しではあるが膨大な魔力が回復した。
「ありがとうペンネ。あんたたち、覚悟は良いわね……」
ロックオン帝国兵。
「数多撃つ幾千万の烈光」
無数の光が瞬いた。
紫に煌めく光は帝国兵だけを狙い枝分かれしながら集団で打ち抜いて行く。
まるで意思を持つような無数の光が、逃げまどう帝国兵を殲滅して行った。
「るー(わ、私の出番……)」
怒りと悔しさのぶつけどころを失ったルクルがパルティの隣で四つん這いになって嘆くのだった。
その光景を、自分たちの踏ん張りってなんだったんだろう? アニスとペンネの白けた瞳が見つめていた。




