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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのバグが意思を持っているのかどうかを誰も知らない
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そのアルセとアルセが海アルセのびょ!?壁|゜Д゜(C=(´-`。)三

 リフィは呆然としていた。

 何が起こったのか理解できなかったのだ。

 否、その現象が誰によるものかは理解できていた。

 ただ、その規模が大き過ぎて理解が追い付かない状態なのだ。


 ヲルディーナたちも何が起こったのか理解できずに戸惑っている。

 海洋はまるでゼリーのように粘ついたものに変化していた。

 いつもの海ならばしょっぱさが際立つ物だが、この海は甘い。


「ちょ、ちょっと、どうなってるのよ!?」


「凄い、海の中に土が、いいえ宇宙が漂っているわ」


「プレシオ、感嘆してる場合じゃないでしょ!? どうなってるのよぉーっ!?」


「まぁまぁ、落ち付きなさいなヲルディーナ。ほら、リフィは落ち着いて……リフィ!?」


「ふぇ? あ、え?」


 リフィの身体を見て驚くプレシオ。気付いたリフィも自身を見れば、人のような肌色に変化していた。


「なんでそんな変化を?」


「え? さ、さぁ?」


 この姿なら、透明人間さんと会えた時どんな顔されるだろうか? と思わず思いを馳せるリフィ。可愛らしいというだろうか? クラゲ要素が殆ど無くなり、帽子のような状態のクラゲが頭の上に乗っている容姿になってしまった。

 別人、と言うには顔がそのままだし、本人と言うにはバグり過ぎている。


「ま、いっか」


 結果。透明人間さんに見せてから嘆くかどうか考えよう。そう結論付けたリフィは戦場へと視線を向けた。


「ええ!? 気にしてないっ!?」


「あんた姿変わってんのよ!? なんでそんななのよ」


 プレシオとヲルディーナが驚いているが、リフィにとってはどうでもいいことだったので気にしないことにした。どっちにしろ海の中を自由に遊泳出来る状態であるのは変わらないのだ。ならば全く問題じゃないだろう。


 視線の先ではファラムの混じった魔王の群れが魚群のように潜水艦に群がっている。

 潜水艦は今回のバグで増殖禁止にされたようで、これ以上増える様子は無かった。

 さらに航行が止まる艦が無数に現れ、その場に固定される潜水艦。

 半分だけ異次元に潜水してしまった艦。

 その場で回転を始めて渦巻きを作りだす艦。

 魚雷を打ちまくり、全て自身に戻ってきて爆散する艦。

 無数の潜水艦が行動不能になっていた。


「クソ、どうなってる!?」


「おい操船の勇者。何やってんだ!?」


「うるせぇ! なんで潜水しようとして浮上するんだよ!? 右に舵切れば縦回転始めるし。壊れてんのかこの操縦管は!」


 どがっと殴り飛ばせば操縦管が発射とばかりに操船の勇者のどてっぱらにロケットショット。


「げぶぅ!?」


 崩れ落ちる操船の勇者。

 そして激しく揺れる船体。

 魔王達がこの船に取りついたのだ。


「そ、操縦不能。機関部に触手侵入。あ、圧殺されます!」


「んなことぁわかってんだよ! なんとかしろぉ!!」


「なんともなりませんっ」


 操船の勇者の叫びに増殖の勇者下位士官が叫び返す。

 次の瞬間、ミシミシと軋む船体が、音を立てて粉砕された。


「そ、総員退艦ーっ!!」


「出来るかバカ増殖ッ」


 帝国軍は海の中へと投げだされる。

 深海に放り出された操船の勇者は群がる魔王達に襲いかかられる。

 もはや逃げ場などなかった。


 息も出来ず敵に囲まれ、彼らの生存など、不可能でしかなかったのであった。

 潜水艦が次々に破壊されて行く。

 増殖が止まれば旗艦に辿り着くのも早く、旗艦を潰した後は掃討戦に移行する。

 逃げ切る潜水艦は存在しなかった。

 皆等しく海の藻屑へと変わって行く。


 アルセ二号が海底で踊り出す。

 周囲のイカやタコがソレをみて周りで踊り始めたので、暇になった魔物達が一人、また一人彼女の元へと集まって踊り出す。


 そして踊りは戦場からあぶれた魔王達も巻き込み始めた。

 まさに勝利の踊りとでも言うべきか、古参の魔王まで参加し始めたので、掃討を終えた魔王達もまた踊りに参加し始める。

 踊りを見てなんだこれは? と呆れていたファラムはリフィたちの元へと戻ってくる。


「どうなってる?」


「さぁ? でも、見て。アルセ二号の足元」


「……根付いている?」


 海の底でアルセ二号が根を張った。

 踊る皆に見守られながら、アルセ二号が海底樹へと姿を変えていく。

 変化に気付いた魔王達が踊りを止めて彼女を見守る。


 海の中、巨大な大樹へと成長したアルセ二号は海の中に唯一の木として白い葉を見事に咲かせてみせるのだった。

 神秘に彩られた白色の大樹。

 海流に揺れて咲き誇る彼女を、魔物たちはただただ見上げ続けるのだった。


 発光を始めるアルセの樹。青白く輝く光が深海を照らし、魚たちがその葉に身を隠して踊り出す。

 その大樹の側では食物連鎖が起こらないとでもいうように、小魚からサメや大魚に至るまで、多種多様の魚が寄って来ては踊るようにアルセの樹周辺を回りだすのだった。

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