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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのバグが意思を持っているのかどうかを誰も知らない
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曾野アルセとBBAがセレナーデなのぴょってるKyOTOヲ知ぺそもめ

 ダリア連邦の空は灼熱に燃えていた。

 大空を焼く大火に巻かれ、戦闘機が火だるまとなって墜落していく。

 デヌはその空を見て呻く。


 一体どんな能力を使えば世界にこれ程の変化を引き起こせるのかと。

 Gババァが光り輝く。髪が金色に変化し逆立つ姿はどこかの異星人を彷彿とさせるものだった。

 ステファンはこれぞ神の奇跡とばかりに感涙し、再生能力を失った帝国兵を駆逐していた。


 世界に様々な変化が起こっている。

 アクセルタイガーの姿が一回り大きくなり、尻尾が三叉へと変化。

 近くに居たポイズンカイザードラゴンがデフォルメされた形状になる。

 防衛を行っていた兵士の一人がショタへと変化し、それに気付いた変態に拉致される。


 無数の変化が一斉に起こる。

 帝国兵は顕著にその影響を受け、手酷い打撃を受けていた。

 被害はあまりにも多い。


 増殖能力を強制的に剥奪。手に入れた女神からのプレゼントスキルは全て意味不明の物へとバグり、戦車が移動不可となり、壁扱いになり、動かなくなる。

 一度増殖が止まれば、かなりな数を有するダリアと魔物の混成部隊が一気に押し返す。

 勝敗など、すでに決したようなものだった。




 ドドスコイ王国へ向う帝国兵もまた、変化の波に呑まれていた。

 トサノオウの群れが縦横無尽に駆け巡り、戦車を帝国兵を踏み潰して行く。

 抵抗しようにも戦車はその場で回転を始め、増殖は止まり、銃器は殺傷力を失ってしまっている。

 これでは反撃など出来るわけがなかった。


 サーロもレーシーたちの参戦で余裕が生まれ、精神的負担は無くなっていた。

 ひのきの棒を振り回し、帝国兵を薙ぎ散らす。その時だった。

 帝国兵の振り回した銃が彼の頭に当る。


「あいた!?」


 ダメージと言う程ではなかったが、実体を持つ銃によりダメージを受けたことで彼も気付いた。

 本来であれば呪いとも呼べる透過バグ。その能力が世界がバグったことで失われたのだ。

 慌てて相手から距離を取りながら自身を確かめる。


「掴める……」


 落ちていた銃器を拾いあげる。

 感動が押し寄せる。しかしすぐに我に返る。

 今は実体もっちゃだめだろう。と。


 銃弾が彼の頭に激突する。

 幸いにもバグったせいで回復する弾丸だったのでダメージにはならなかったが、途端に血の気が引いた。

 彼は今、敵陣真っ只中なのだ。


「あ、ぐ、くっそぉぉぉっ、もうヤケだ。やれるだけやってやるッ!!」


 逃げだすのも不可能、この場に留まれば死は確定。

 もはや腹を据えて敵を駆逐するしか手はなかった。


「折角武器持てるんだ。アイテムボックスの肥やしになってるこいつを」


 愛用の剣を引き抜く。

 さぁ、生き残る為の闘いを始めよう。

 そう思った彼の側をトサノオウの群れが駆けていく。


 実体を持ったからこそ気付いた。

 今、彼は味方にすら弾き飛ばされる危険がある場所に居るのだ。

 ともすれば、気付かれることなく踏み潰される。


「じょ、冗談じゃねぇ!?」


 慌てて逃げ出すサーロ。

 その背後からトサノオウの群れが襲いかかる。

 ヤバいヤバいヤバい。慌てるサーロ。必死に逃げるがトサノオウの速度から逃げられるはずもない。

 そのままトサノオウの群れに帝国兵共々呑まれて消え去る。


「……って、死んでたまるかァ!!」


 ぎりぎり足を潜り抜け、尻尾に掴まったサーロが走るトサノオウの群れに巻き込まれて移動する。

 なんとか揺れる尻尾に捕まるが、振動で腕の握力が低下し、結局尻尾より後ろへと投げ飛ばされる。


「い、嫌だ、死にたく……」


「はい死なないわよーっと」


 中空へと投げだされた彼を受け止めたレーシーはトサノオウを飛び移りながら安全な個体へと移動し、その頭に居座る。

 すぐ前に鼻水塗れのサーロを降ろした。


「い、生きてる?」


「お疲れ人間さん。孤軍奮闘見てたわ」


「は、はは。やべぇ、生きてる。生きてるのか。マジあんがとございますっ」


「いいってことよ。このレーシー様に感謝しまく……」


「ありがとうアルセちゃん。君の加護凄過ぎだぜぇ、愛してるっ」


「うをい、あんた助けたのは私だっつーの!」


 しかしサーロがレーシーに感謝を告げることはなく、ひたすらにアルセを褒め称えていた。

 いい加減イラついたので殴って黙らせる。

 それでも止まらぬサーロを蹴落とそうかと思ったレーシーだが、流石にそれで轢き殺されても寝覚めが悪いので、仕方無く同道させてやることにした。


 レーシーの胸三寸で生かされていることに気付きもしないサーロは、自分が生きている奇跡をアルセと言う名の神に感謝し続けた。

 彼の頭の中からはすでにレーシーや戦場のあれこれ、オオゼキやミズイーリの顔は既に一欠けらすら存在しなかった。

 自分自身が生きて帰ることが出来る。それだけが今、彼の頭を占める言葉であった。

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