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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのバグが意思を持っているのかどうかを誰も知らない
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そのアルとぉーっセがのぴょっΣ(゜o゜)なKЖ知覧(o|o)

 コイントスの侵略者である帝国兵たちは、アンサーの活躍により撃破された。

 コイントスは助かったのである。

 しかしながら暴走を始めたアンサーはマリナを連れ出しどこかへと去ってしまった。


 後に残ったのは防衛軍と魔物の群れ。

 そしてアホ毛の代わりに指揮官のヘルメットにある角をむんずと握ったバルスと、側頭部に穴のあいたままバルスの元へやって来たユイアだけが残っていた。

 世界の変革が起こる。


 既に終わった戦場で変化したのは大地や空だけで、戸惑い浮かべる防衛軍と魔物がお互いに助け合う姿が周囲でよく見られた。

 数人、怪しげな恋愛が産まれていたが、バルスもユイアもそんな事に注意など向けていられる余裕は既になかった。


「ふはぁ、なんとか生き残ったわね互いに」


「ああ、ユイアは普通だったら死んでたけどね。頭に穴空いたままだよ?」


「あ、そうだったわ。回復魔弾撃たないと」


 魔弾を打ち込み回復するユイア。そのユイアの頭から、アホ毛がひらり、舞い落ちる。


「……え?」


「ユイアっ!? え? アホ毛がなくなったのに……生きてる?」


「嘘!? なんで……?」


 ふぁさりと落下したアホ毛を拾いあげるユイア。

 震えながらそれを受け取り涙を流すバルス。まるでユイアが死んでしまったかのような悲壮な顔をする。

 が、次の瞬間、はて? と小首を傾げた。


「なぁユイア。僕さ、なんでこんなアホ毛を集めたいと思ったんだろう?」


「……え? さぁ? 趣味なんじゃないの?」


「なんか、さっきまでの高揚感がなくなったというか? うーん?」


 二人は知らない。

 世界がバグった時、彼ら二人もバグの影響に晒されたことに。

 そしてユイアからはアホ毛という特性がバグり、意味の無さないスキルへと変化した。

 結果、彼女には既にないアホ毛が本体となり、彼女自身は倒されても死なないという特性だけが残り、バルスからはアホ毛好きのスキルが消え去った。


 つまり、普通のバカップルに戻ったとも言える。

 敵の居なくなった戦場で、動かなくなった戦車に背もたれ二人は空を見上げる。

 夕闇と夕焼けと青空と曇り空が入り乱れた不思議な空は、しかし何故か二人に安堵感を齎す空だった。


「ねぇ、バルス……」


「ん?」


「世界、壊れてるね」


「うん。これ、多分バグさんがやったんだよな……」


「バグ?」


「ユイアは気付いてなかった? アルセ姫護衛騎士団に、僕らが姿を知らない仲間が居たんだ」


 気付いていなかったらしいユイアに薄く微笑み、バルスは告げる。

 それは名も知らぬ一人の仲間の物語。

 自分が体験したこと、他の皆から聞いた話。リエラに尋ねて知った真実。

 その誰かが生きた物語を、バルスはゆっくりとユイアに聞かせる。


 皆を救いたいから、自分をバグらせて貰ったことも。

 そのせいでユイアのアホ毛を狙っていたことも。

 アホ毛バスターの御蔭で今も生き残れたことも。


 全て、包み隠すことはなく。幼い頃からずっと一緒に冒険を続ける仲間に語り聞かせる。

 いや、そうじゃない。

 ただの仲間、なんかじゃない。


「ユイア。僕、思ったんだ」


 そうだ。この戦争で知ったんだ。

 いつも一緒にいた幼馴染が一瞬で殺されてしまう現実を。

 アホ毛が本体になっていなければ、ユイアは既に死んでいた。

 だから、これはきっと、奇跡だ。バグやアルセが起こしてくれた、歩み全てがここに繋がる、旅路の果ての結末。

 だから後は、自分の決意……それだけだ。


「ユイア。僕、君が好きだ」


「……ふぇっ!?」


「戦争終わったらさ、結婚してほしい」


 だから、彼は、ずっと胸に秘めていた思いを口にする。

 いつも居てくれた幼馴染。ずっと一緒だと思っていた幼馴染。

 そんな彼女と最後まで一緒に居るために。


「……~~はひ。お、おねがいしまひゅ」


 完全な不意打ちを喰らったユイアの顔は、一生見ることは叶わない程間抜けで真っ赤な顔だった。




 アンサーは空にいた。

 鳥の足に掴まり、逆の腕でマリナを抱えている。

 目的地はロックメイア。

 しかし、辿り着いた先には殆ど敵が見当たらなかったのでさらに移動を行いフィグナートへと向かう。


 だが、バグの御蔭で小康状態に向かい始めている敵軍は数が少なく、アンサーの一撃で消え去る程度しか居ない。

 放っておいても撃破出来てしまうので、彼は焦りながら敵を探っていた。


「クソ、敵は、敵が大量に居る場所はないのか! 奴ら一瞬で殲滅してやる!!」


「と、とぉーっ」


「煩い黙れッ! お前は私に敵を貢げばいいのだ! 全滅だ! 次の一撃で全滅させてやる!!」


「とぉぉ……」


 半べそ掻きながら連れ去られるままのマリナ。

 今までやりたい放題だっただけにここまで拘束されてしまうとマリナとしてはどうしていいか分からず、打つ手がなくなってしまうようだ。


「見付けたぞ! アレが……なんだ、あれ?」


「とぉ?」


 メリケンサック公国に群がる無数のモザイク人。

 敵ではないが意味不明な存在に思わず呻く。

 流石に国に攻め寄せている以上、彼らを放置するわけにも行きそうにない。


「仕方ない。アレをやるぞ!」


「とぉ!? とぉーっ、とぉーっ!!」


 いや、ムリムリムリ。そう告げるように暴れるマリナだったが、彼女を拘束しているアンサーは気にすることなく新たな敵へと向かう。


「喰らえ何かよくわからない生物! 一撃で貴様等を、消し去る!!」


 こうして全体攻撃アンサーVSモザイク人の闘いが始まるのだった。

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