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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのバグが意思を持っているのかどうかを誰も知らない
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その吾輩アはルサルセで山Pあるのぴょっ!?は知らいぇい

 帝国兵が増殖する。

 その数はあまりにも多く、増殖率はあまりに速い。

 イエイエ康も吾輩はサルであるも他の魔物がどれ程頑張っても帝国兵の増殖力が上回る。

 スカイベアーも戦闘機を駆逐し歩兵部隊撃破に向かい、ティディスダディもティディスベアを引き連れ迎撃するが、それでも増殖率が上回る。


 このままでは一気に逆転される。

 サルもイエイエ康も焦りを浮かべる。

 予想外の場所に自己主張の強い存在が出現している。

 まさか自身を増殖させることで自己主張して来るとは予想外だった。


 必死に自身をアピールするが、一人一人では増殖を続ける帝国兵の自己主張力には敵わない。

 一人一人のアピール力はあまりにも弱い、しかし群として見た時、彼は今、誰よりも自己主張が強かった。

 世界中に満ちる勢いで増えているのだ。サルもさすがに悔しげに呻く。


「くぅ。なんという自己主張力。このようなズルい男達に勝てぬのか」


「まだだ。我らの自己主張力はこのような男に負ける筈がない。吾輩はサルであ……!?」


 刹那、世界が悲鳴を上げた。

 サルは即座に気付いた。

 自己主張をすることない対極に位置していた存在が、ついに己の実力を発揮したのだ。


「これは、なにが……」


「究極の自己主張。クソ、先を越されたか」


「サルよ、何か知っているのか?」


「アルセのお嬢にくっついてる自己主張を行うことが無かった者だ。これ程の自己主張力を隠し持っていたとはな」


「自己主張!? これが、自己主張だというのか!?」


「バグが、世界に満ちた。ああ、奴は俺たちの目指す高み、既にこの世界全てが奴になっちまったのさ」


「なん……だと」


「世界その者と同化したのだ。変化が起こるぞイエイエ康。覚悟せよ」


「覚悟? はっ!? これは!?」


 イエイエ康は気付いた。

 周囲が革変する。そこかしこの大地が別の大地に入れ換わる。

 毒の大地黒い大地赤い大地黄色い大地。

 白い大気青い大気緑の大気。

 空に大地が現れ大地に空が現れる。

 意味不明な現象に、イエイエ康は慄いた。


「こ、こんな、ことが……」


「コレが世界への自己主張と言うものだイエイエ康。己のエゴを世界に認めさせ、割り込み、世界すらも改変させる」


「世界の改変……」


 世界中の人に知られることが自己主張だと思っていた。

 違うのだ。イエイエ康は気付かされる。

 サルも、そしてこの自己主張を行った存在も、見つめていたのは人々だけではない。この世界全ての存在に己を認めさせようとしていたのだ。

 規模が、違う。

 ガクリ、四つん這いになったイエイエ康に、吾輩はサルであるは笑みを浮かべる。


「何をしているイエイエ康」


「わ、私の自己主張力は児戯だった。その事実を知ってしまったのだ」


「ならば、さらに高みに行けばいい。共に来いイエイエ康。吾輩をこの高みに連れて来てくれたのは、ほかならぬお前の前世たちなのだから」


「サルよ。ふふ、そうであったな。ああ、嫌悪している暇などない。我々が行うべきはどのような場所であれ自己主張。死の間際ですらも、自己主張を忘れてはならぬ」


「行くぞイエイエ康! 奴らは増殖力を失っている。バグの自己主張力に敗北を喫したのだ。今のうちに畳みかける!」


「イェイ! 応ともさ。消し飛ばしてくれようぞ!!」


 スカイベアーが殴り飛ばしティディスダディが斬り結ぶ。

 多種多様の魔物達が入り乱れる戦場を駆け抜け、宿敵たちは邪魔な敵を駆逐する。

 サルの尿意棒が股間を打ち抜き、イエイエ康の剣技が冴え渡る。

 双方、敵を倒すごとに互いに自己主張を行い合い、見る見るうちに敵を激減させていった。


「くま!」


「何だあれは? 戦車? いや、違う?」


 のっぺりとしたキャタピラ型の装甲車が現れる。

 戦車と違うのは砲塔が無いことだが、魔物達を押しつぶすのに砲弾は必要ないらしい。


「重量で轢き殺すつもりか。イエイエ康!」


「任せよ。鉄砲隊、前へ!」


 お付きの部隊に指令を出し敵へと砲弾を打ち込むが、その全てを弾き装甲車が突撃して来る。


「くっ。あの車、弾を跳ね返す、だと!?」


「そういう装甲なのだろう。ならば!」


 尿意棒を持って装甲車へと突撃するサル。

 すぐ隣を通り、棒をセット。その棒の上を装甲車が通過した瞬間だった。

 梃子の要領で思い切り盛り上げる。

 片車輪が持ち上げられ、そのまま横倒しに倒れ込む装甲車。

 ごろんと転がり上部が地面に接触、仰向け状態になりキャタピラが無意味に回り続け始めた。


「なんと! すごい」


「さぁ、内部攻略だ! 行くぞイエイエ康」


「ふっ。当然私が先頭だぁ!」


「ふざけるな、吾輩に決まっているだろうが!!」


 我先にとハッチに向かうサルとイエイエ康。

 ハッチが地面と接触していることに気付いてどうしたものか、とその場に留まるのだった。

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