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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 そのバグが意思を持っているのかどうかを誰も知らない
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その漢我Θξ7ぽた古都を(V)o¥o(V)は識ら无

「おるあああああああ――――っ!!」


 辰真さんっ。

 叫ぶ番長の言葉に辰真が振り向いた。

 彼の額向け、飛び込んでくる鉄甲弾。

 鋼鉄をぶち抜く弾丸に、さしもの辰真といえど直撃を受ければ脳を破壊され死に至る。


 避けようにもそのタイミングは致命的になかった。

 焦る辰真がなんとか逃げようとするが、鉄甲弾が彼の額を貫く方が速い。

 もう、ダメか? 悔しげに呻く辰真。その額に弾が吸い込まれる瞬間だった。


 世界が、悲鳴を上げた。

 辰真の額に弾丸が激突する。

 辰真の頭を貫通し、鉄甲弾が遥か先の木に突き刺さった。


「おるぁああああああああああああ!?」


 辰真さ――――んッ!!?

 もはや誰の目にも絶望にしか映らなかった。

 あの辰真が、殺された。

 番長達が絶望に膝を突く。


「オルアァ!!」


 止まるなテメェら!!

 辰真の叫びが轟いたのは、彼らが膝を突いてすぐだった。

 死んだ筈の辰真が普通に叫んだことで唖然とした番長たちだったが、辰真が生きていることに歓喜しながら立ち上がる。


 それは、言うなれば、アレだ。

 その時、不思議な事が起こった。

 この台詞が一番しっくりくるだろうか?


 何が起こったのか、それは唯一つ。世界がバグった。だから、鉄甲弾の性能がバグった。

 物質透過スキルを得た弾丸は辰真をすり抜け、遥か先の大樹もすり抜け、地面をすり抜け潜り込んでいった。

 意味が理解できず狙撃手は再び弾丸を発射する。

 気付いた辰真の額を抜けて、同じ軌道でどこかへと去って行った。


「な、なんだ!? どうなってる!?」


 異変はそこかしこで起こった。

 突然増殖が止まる。

 驚く兵士達の目の前で戦車が浮かび上がる。

 焦る兵士たちの目の前で戦闘機が地面にめり込んでいく。

 意味不明な現象が次々に巻き起こる。


 地面が隆起しダンジョンの壁が現れ、雪が降りマグマが空を流れる。

 鳥が土の中を飛び魚が歩き芋虫が空を泳ぎ出す。

 空が海になり土が空になり海が土になる。

 無数の場所で同時に様々な現象が巻き起こる。


 すぐ眼の前で闘っていた人物との間に見えない壁が出現し、その場でループし、転移する。

 マイネフランとロックスメイアの大地が一部入れ替わり、人類未踏区の氷が空を浮かんで漂い始め、海が空の上に来る。

 世界が、一瞬のうちに壊れていた。


 帝国兵の増殖が失われ、武器の殺傷力が消え、戦車の移動力が消え、戦闘機の推進力が反転する。

 防衛軍の騎士団員が無敵になり、冒険者が禿げになり、魔物が隊長になる。

 致命的なバグからどうでもいいバグまで多種多様に世界に満ちる。

 番長の一人が女に変化し、ツッパリの髪が三メートル程長くなる。

 レディースのスカートが短くなり、スマッシュクラッシャーがムチムチプリンに変化する。


 ハードモットから髭が消え去り、モンドが上半身だけ女体化しマイケルが毛深くなる。

 ハーピーの一人が地面に潜りだし、ゴードンの頭に頭頂部を除いて髪がふさふさ生えてくる。

 クーフの肌色が人間のそれへと変化し、モーネットの胸が一回り膨らむ。


 バズのアレが巨大化し、エンリカの攻撃が遠距離まで届きだす。

 オークのプリケツを愛でる会の面々はオークの好きな部位が変化した。

 水晶剣が一撃必殺から常時必殺となり砕けなくなる。


 辰真にも変化が訪れる。

 呼べばどこにでも単車が現れるようになり、それに乗ることでステータスが増加する。

 まるでアルセに愛されている程いいスキルが付くように、アルセ姫護衛騎士団のメンバーはその殆どが強化スキルばかり増えていた。


「アルセの加護かしら、素敵よアルセ!」


「ちょ、エンリカさんをさらに強化するとか何考えてるんですかアルセさん。もう手が負えないのにさらに……あああ、触れることなく遠くの兵士を殴り始めたっ!?」


「凄い凄いぞ!! 見ろクーフ。我が水晶剣が一撃だけでは終わらんぞ。しかも我が意思により空を飛んで自動で敵に突っ込んでいく。なんだこの力は! これぞまさに王の……」


「勇者王様。それ以上はいろいろ問題があるのでご自重を」


「いや、しかしなクーフ。この楽しさは誰かに言いたくなるモノだぞ。そら、水晶剣百連を喰らうがいい!!」


 パチン。指を鳴らすだけで無数の水晶剣が帝国兵に突っ込んでいく。

 アルベルトの高笑いだけが無駄に響いていた。


「クソっ、クソがぁ! どうなってやがる。なんで喰らわねぇんだよ!? 増殖もできなくなってんじゃねぇか!!」


「おるぁ」


 よぉ。とばかりに狙撃手の目の前にやってくる辰真。

 気付いた狙撃手が彼を見上げる。


「た、頼む、見逃し……」


 慌てて武器を投げ捨てる狙撃手。

 当然、見逃すつもりは辰真には無かった。

 拳を握りしめ、相手の襟を掴み取る。


「オラオラオラオラオラオラオラオラ――――ッ!!」


「げ、ぶ、ばぁッ!?」


 顔面向けて拳の連打。

 逃げることすらできない男はただひたすらに辰真の拳を受け続けるのだった。

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