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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その抗う者たちを彼らは知りたくなかった
1322/1818

そのジャッポン同盟軍の力を帝国兵は知りたくなかった

「兄上様、ご無事ですか!」


 天空よりやって来た助っ人。その一人がジーンの元へとやって来た。

 忍者のような姿をしているが、彼の妹、ケトルである。


「け、ケトル? なぜここに」


 彼女はアルセ姫護衛騎士団としてコルッカやマイネフランで闘っていると思っていた。

 まさか援軍に来てくれるとは思っていなかったのである。

 だが、彼女はやって来た。

 それもフィグナートの勇者チグサと共に、そして、数々の丁髷頭の仲間たちと共に。


「突撃ーっ!!」


 扇動ちゃんが声高らかに叫び、お雛様軍団が突撃する。

 うっかり御用だの群れが十手を持ってしっかり与力達と共に敵軍へと殺到する。

 まろまろ頼朝の指揮の元ジャッポン同盟運がフィグナートの周囲を防衛に向かい、一緒に来ていたロリコーン紳士の群れがステッキ片手に激突する。


「忍!」


 忍者部隊が各地のフォローを行い。ムササビの術や凧揚げで空を舞って戦闘機へと対抗し始める。


「マズい、回り込まれ……」


「大丈夫だ小僧。ここには……俺が居る」


 ジーンが物見台から見付けた別働隊の前に、一人の男が立っていた。

 彼らに背中を見せ腕を組んで佇む魔物の名は、俺の尻で泣け。

 当然のように銃を構えた帝国兵に、俺の尻で泣けは一気に距離を詰め、バフリ。


 臭いの恐ろしさにのたうちまわる男達にブフリ。

 涙目で悶絶するリーダー格の顔面に自身の尻を押しつけダメ押しの……パスゥ~ブピ。

 一瞬にして別働隊は壊滅した。

 後には仁王立ちで背を向ける硬派な男が立っているだけだった。


「な、なんだかアイツ一人だけ次元が違う気が……」


「気のせいですよ。では、私も行って来ます」


「ケトル!?」


 その場から飛び去るケトル。飛んだ先で消え去り、遠く離れた戦場に姿を現す。

 忍者スキルらしいのだが、自分の妹が人の枠を越えてしまったのを見てしまい、ジーンは思わず目をこすった。


 その視線の先で三人に別れたケトルが左右前方から兵士に襲いかかり、対応しようと焦る兵士の後ろから四人目のケトルが現れ首を切り裂く。

 忍法多重分身による暗殺技だが、ケトルが人を止めたのを、ジーンは確信した瞬間でもあった。


 少し離れた場所ではチグサが敵陣へと迫っていた。

 銃弾をアルセ神刀で切り裂く。

 空軍カモメが咥えて持って来てくれた渾身の力作は、彼女の手になじんだようで、銃弾を粉微塵に消し飛ばして行く。


「スキル補助の御蔭でなんとか銃弾も見えるけど、全く面倒な相手ね」


「クソ、この女、刀一本で……」


「お、おい、後ろ、後ろにも来たぞ!?」


 チグサが前方から突っ込み、背後からは巨大なサイが現れる。

 否、それは一体だけではない。

 人の十倍はあるだろう巨体のサイが群れを成して現れる。


「あれは!? ジャマクサイの群れ!?」


「ジーン代理国王陛下! 周囲から無数の魔物が、どれもこの近隣の魔物達です!」


「国王陛下、いえ、代理国王陛下、西方よりダンジョンにしか生息しない筈の魔物が群れをなしてます。これを率いるのは……ダンジョンボス・ベルアガーダ!?」


「え!? 何ソレ!? 僕初耳なんですけど、どれですか、べるあなんとか」


 兵士が指差す方角には無数の魔物が帝国兵に押し寄せどれがどれかわからない。


「あれです。あの赤いなんか凄いの!」


「どれ!? なんか凄い赤いのどれ!?」


 ちらほらと赤い魔物が居るが、どれもこれも厳つい顔だったり、筋肉質の魔物だったりとどれも凄い。

 兵士が必死に指摘してくれるが、どれを差しているのかジーンには分からなかった。


「代理国王陛下! 北より不死騎士団が! そんな、北の滅びた王国から出てくることなかったのに……」


「み、南より鳥の群れ多数。あれは……ガンダルヴァ!? 鳥人間の群れもいます! スラッシュバードの大軍が敵戦闘機に群がって、凄い、戦闘機がどんどん墜落していく!?」


「これは……魔物達がフィグナートを守りに来たのか……」


 そんなバカな?

 驚きながら頬を抓る。

 ジーンは夢じゃないかと疑いながらも、神の起こした奇跡に天を仰いだ。

 その天には光の柱が立ち昇っており、上空で無数に別れた光が世界各地に降り注いでいる。


「神が……動いた?」


 あり得ない。そう思いつつも目の前の幻想にしばし酔いしれる。

 ただ、その光の幻想的光景が、ババァが起こしたモノだと気付くのに、幾らも時間は掛からなかった。

 フィグナートにも、ババァ流星群が降り注ぐ。


 阿鼻叫喚の地獄絵図と共にババァに群がられる帝国兵たちの悲鳴が響き渡った。

 感動を返せ。ババァ共の包球に消える帝国兵。そんな光景を見ながらジーンは心の底で思い切り叫ぶのだった。

 だが、それでも帝国兵が増殖を始めたことで戦況は拮抗へと戻ってしまう。

 魔物達だけでも、フィグナートだけでも勝てないと気付き、ジーンは全軍の指揮へと戻るのだった。

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