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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その抗う者たちを彼らは知りたくなかった
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その反射の恐ろしさを帝国兵は知りたくなかった

「撃て撃て撃てぇ!!」


 リーダー格が叫ぶ。

 無数の銃撃が一人の男向けて放たれていた。

 男の名はリパルツォ。銀色の体躯を持つグーレイ教の元神官である。


 彼は両手を広げ、幾らでも打ち込んで来なさいと無防備にゆっくりと近づいている。

 気押され退きながらも乱射する兵士たちは、その銃弾を発射した側から反射され、自身の身体を打ち抜いていた。


 それでも、増殖許可が出たため無意味に死ぬだけではなくなっていた。

 確実に増えながら自滅して行く兵士達。

 リパルツォはただただ無防備に彼らとの距離を詰めるだけだ。

 グーレイ神、そしてアルセ神の御加護が自分を守ってくれている。

 その確信だけをして、恐れる愚かな者たちへ救いの御手を差し出そうとする。


「クタバレ、バケモノッ」


 兵士の一人がロケットランチャーを打ち放つ。

 ひゅるると音を響かせ迫る砲弾は、リパルツォに当る瞬間踵を返し、ランチャーへと帰りつく。

 砲塔に綺麗に収まった次の瞬間、銃諸共射手の腕を吹き飛ばす。


「がぁぁ!?」


「バカ野郎が、戦車だ。戦車で殺せ!」


 一機の戦車が砲撃。

 しかし綺麗に折りかえした砲弾が戦車を爆発させる。


「引き殺せ!」


 戦車の巨体がリパルツォに襲いかかる。

 しかしリパルツォに当る直前、彼の上方へとキャタピラが乗り上げ、そのまま横転してしまう。

 そこへ真上から戦闘機による機銃斉射。

 リパルツォに当る瞬間跳ね返り、戦闘機が爆散する。


「クソ、どうやったら殺せるんだあの野郎は!?」


「マズいぞ、止めきれん!」


 実際問題リパルツォに攻撃手段はないのだが、彼らは近づかれたら終わりだ。という謎の絶望感を覚え、必死にリパルツォへと射撃を行い続けるのだった。




 妖精の援軍が来たロックスメイアだが、グラゲラーズ・アンヌーン、シアナ、ティターニアが率いる妖精族の参戦だけでは、増え始めた増殖の勇者たちを撃破する術は無かった。

 が、ここに更なる戦力が増えるとすれば別である。


 兵士と妖精が絶望的な闘いを強いられていた時だった。

 遠方よりぽつぽつと、そして徐々にゾクゾクと、各地の魔物が集まりだす。

 そして。後方の祠を粉砕し、タングスタートルが現れたことで、ロックスメイア防衛軍が再び拮抗状態へと持ち直す。


 魔物と兵士に挟撃された帝国兵は慌てふためき、魔物達が連携して闘って来るのに戸惑い、街を粉砕しながら現れるタングスタートルに困惑を浮かべる。

 タングスタートルは前門へとやってくると、思い切り身体を縮ませ、飛び上がる。

 空中で甲羅に籠り、くるくると回転しながら放物線を描く。


 戦場ど真ん中へと落下すると、甲羅から両手足を引き抜き着地した。

 地震かと思う程の振動を響かせタングスタートルが首を出す。

 帝国兵が新たな敵だと射撃を行って来るが、デバグ中の無敵亀には効きはしなかった。


「折角だ。この国の守護獣として猛威をふるってくれようか」


 言うが速いか再び五体を甲羅に引っ込み、回転を始める。

 無差別に弾き飛ばしながら不規則に回転移動。

 轢かれた兵士たちが次々と消え去って行く。


「危なっ!?」


 その光景を見ていたシアナがうわぁっと呆れた声を出す。

 ロックスメイア防衛軍はタングスタートルが出現した瞬間に全軍を引かせて様子見転じていたのだ。

 御蔭で被害らしい被害は殆ど出なかった。


 タングスタートルが縦横無尽に駆け回るのを、全身盾で身を固めた男達の後ろから見学することになったのである。

 そこへ、グラゲラーズ・アンヌーンがやってくる。


「なんか凄いことになってる?」


「四聖獣だって。こっちは彼に任せてよさそうだわ」


「じゃあティターニアの援軍に行っちゃおっか」


 二人の妖精は頷き合い、眷族の妖精たちを連れてティターニアの元へと向かうのだった。

 西門へとやってきた二人は、ようやく戦争らしい戦争を目の当たりにした気分だった。

 挟撃されながらも必死の抵抗を見せる帝国兵。

 増殖で増えた先から魔物に喰われ、防衛軍に切り裂かれ、妖精に吊るされる。


 銃弾が飛び交い、魔物を蜂の巣へと変え、防衛軍のニンゲンにヘッドショット。妖精の羽根を貫通し、一生残る傷を負わせる。

 それでも、この場所は拮抗できていた。

 兵士の増殖力と連合軍の攻撃による死者の数が拮抗しているのだ。


「ティターニア、応援に来たわ」


「手伝いって言いましょう。あ、貴女は本当に応援だけみたいねアンヌーン」


 シアナは呆れた顔で溜息を吐いた後、黄金の玉を作りだす。


「さぁ、ボーリングでも始めましょうか」


「おー。がんばれがんばれシ・ア・ナ!」


 本当に応援を始めたアンヌーンに、シアナとティターニアがほぼ同時に溜息を吐くのだった。

 はっと気付いたティターニアは迫る敵を蹴り飛ばし、雷撃魔法でトドメを刺す。


「まぁ、せいぜい私の邪魔をしないようフォローなさいな」


 上から口調なのは治りそうになかった。

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