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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十六部 第一話 その集う者たちを彼らは知りたくなかった
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その少女が役に立っていないことを誰も知らない

「くたばれ!!」


 ランチャーポッドから十六連ミサイルが発射される。

 ロディアが悲鳴を上げる中、彼女の武器となっている葛餅は迷うことなく扇状に広がってこれらすべてを受け止める。

 くるりと推進力を反転させ、無数のミサイルとそのまま打ち返す。


「ばかな!? こんな、こんな――――っ」


 驚く帝国兵は十六のミサイルに突撃され爆散する。

 元の状態に戻る間もなく葛餅は触手を伸ばして危機的状況に陥っていた学生を救って行く。

 あるモノが銃撃を受ける瞬間弾丸を弾き、敵に拘束された女生徒を相手の腕を切り裂くことで救出し、巨大兵器を真っ二つに切り裂く。


「うお!? そこの女生徒、助かった!」


「貴女が助けてくれたの!? ありがと」


「うおぉ!? すげぇな君、戦車も真っ二つかよ!?」


 特攻中の学生たちが口々にロディアに声を掛けて来る。

 だが、ロディアは理解不能だった。

 自分はノノちゃんを助けようとしただけで、助けた後はノノちゃんの側に立っているだけである。

 なのに葛餅は自分の腕に絡みついたまま、四方八方に触手を伸ばして全体の援護を始めていた。


「凄いねロディ。負けてられないわ」


「え? 待ってノノちゃん、これは違……」


 ノノまでがロディアを称賛し始めたので、自分の功績ではないと告げようとするが、彼女は取り合ってくれなかった。

 魔法を唱え終え、他の皆のフォローを始めてしまったのである。

 その間にも葛餅はせっせと働き、無数の生徒たちの危機を未然に防ぐ。


 危機を防ぎ、敵を屠り、ロディア達の護衛も忘れない。

 凶悪な一撃は身を呈して庇い切り、味方全体への指示も忘れない。

 まさに葛餅の独戦場であった。


「あの女だ! あの女を狙え!」


 気付いた兵士がロディアを指差すが、誰もロディアへは辿りつけない、全てが葛餅により粉砕されているからである。


「喰らい付け!」


「無理です、あの変幻自在の剣が厄介過ぎる! ロストアイテムか何かか!?」


「戦車が豆腐みたいに切れやがる! 何とか出来ないのか!?」


「火炎放射だ! 喰らえ!!」


 火炎の一撃に迫っていた葛餅の姿が唐突に反転、戻って行く。


「行ける! 火炎放射器ならいけるぞ!!」


 全員が武装を火炎放射器へと変える。

 生徒達に焦りが走る。

 葛餅ソードがあるからまだ戦場が保っているのだ、このアドヴァンテージがなくなれば、戦線は一斉に崩壊する。


 焦る生徒たちの動揺が波のように伝わって行く。

 崩れ出した生徒たちに、帝国兵はニヤリと笑みを浮かべた。

 火炎放射器は射程こそ短いものの、威力と広範囲への拡散は随一と言っても過言ではない。


「恐れるなヒヨコ共っ!」


 そんな戦場に大音声が響き渡る。

 二人の女性がそこに居た。

 一人は両手に銃を持ち、もう一人は両手で黄色い毛玉を抱えていた。


 その者たちの名は、ミルクティ、そしてアメリス。

 アメリスはゆっくりと砲弾にっちゃんを地面に置く。


「我らの力を特と見ろ帝国兵。この黄金の輝きある限り、貴様等の勝利はないのだからな! 行って、にっちゃん!!」


 黄色いにっちゃうがたわむ。

 その刹那、戦場の全ての者の背中をゾクゾクと何かが這いまわった。

 次の瞬間、


 ドパンッ


 大地を抉り飛ばし、にっちゃんという名の砲弾が吹き飛ぶ。

 前方に居た全てのゴミを消し飛ばし、悪夢の一撃が閃光となって駆け抜ける。

 後に残ったのは、抉れた大地だけが残されているだけだった。


 新たな脅威を目の前にして、帝国兵たちは何が起こったかすら理解できずに固まっていた。

 だが、にっちゃんにはそんな事は関係ない。

 再びたわむにっちゃんにリーダー格が叫ぶ。そこでようやく兵士達が動き出す。


 ドパンッ


 閃光が走った。

 一直線の光が、兵士達を的確に消し飛ばしながら、今度は空中で軌道を変えて高速移動を行い始める。

 当然、誰もが一番危険な生物だと判断する。


「こ、殺せぇぇぇ!!」


 だが、にっちゃんを焼き殺すなど不可能だ。

 風圧で炎が届くより先に武器が自分ごと消し飛ばされるのだから。


 さらに葛餅が参戦すると、帝国兵の生存は絶望的になったのであった。

 葛餅が参戦再開を始めたので、学生たちの意気も上昇する。


「流石にっちゃん。さぁ、にっくんも! 行くわよ」


「にっ」


 真上からの奇襲を止めたらしいにっちゃんも戻って来てアメリスに合流する。

 無数の魔法弾を待機させ、葛餅だけではフォローしきれていない場所に魔法弾を飛ばして援護を始める。

 もはや数えるほどになった帝国兵は、立て直しすら出来ないままに全滅しようとしていた。


 そう、本来ならば、彼らを倒して終わり、になるはずだったのだ。

 だが、突然兵士達が嗤いだす。


「何がおかしい?」


「残念だったなチビ女、来たんだよ! スキル解放命令がなぁ!!」


 絶望的に追い詰められながら、兵士たちは笑いだす。その姿が徐々に……

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