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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十六部 第一話 その集う者たちを彼らは知りたくなかった
1315/1818

その山の奪還戦を総統は知らない

「ウキャァ!!」


 開眼したサルは並み居る敵を薙ぎ払い。

 伸縮自在の棒を片手に戦場を駆け巡る。

 自己主張は忘れない。

 常に敵に味方に自己主張しながら敵を撃破する。


「吾輩は! サルである!」


「うるっせぇっ!!」


 叫びと共に引かれた引き金。

 無数の銃弾が彼を襲うが、尿意棒をくるくると回して銃弾を弾き散らす。

 銃撃が終わると同時に地面に棒を突き立て、これを支柱に一気に距離を詰め、銃撃を行った兵士を一突き。


「ぐぉっ!? クソ、エテ公の癖に生意……はおっ!?」


 そして突然襲い掛かる尿意に崩れ降ちる。

 一突きすることで相手に尿意を催す特殊な棒。

 悶絶する男達が睨みつける。

 その怒りの視線を一身に浴び、サルはさらに輝きを見せる。


 今、彼らの視線を一人占めしてるの吾輩! とばかりに尿意棒片手に敵を駆逐する。

 負けじと他のミーザルたちも一気呵成に攻め立てるが、敵もさるもの。

 少しずつミーザルやキカザールに銃弾が当りだしていた。


「クソ、面倒だがやれなくは無いぞ! あと一息だ!」


 マウンテンゴリオが斃れる。

 シ・ザルが恥ずか死する。

 ヨイドレが泥酔する。


 一人、また一人と倒れて行く魔物達を見ながら、ティディスダディはティディスベアたちに指示を出し、帝国兵を一人一人確実に潰して行く。

 空から空爆を仕掛けてくる戦闘機にはスカイベアーとアンギャートビスの群れが迎撃に向かっている。


 スカイベアーによる一撃で戦闘機が粉砕され、アンギャートビスの群れがこれに群がり脱出しようとした兵士を逃さず餌にする。

 一進一退。

 突出した魔物の御蔭で決定的な敗北にはならず、個々の力が弱いせいで、決定的な勝利にもならない。


「ええい、温いぞサル!」


「なんだと!? ……バカな!?」


 ふいに、大音声が響いた。

 自身に掛けられた声に反応したサルが見たのは、真下の森から昇って来た侍たちの大軍勢。

 その大軍勢を率いるのは、新たに時代劇の逆塔より生み出されしイエイエ康。

 イェイ。とピースサインをサルへと向けて、軍配を振るう。


「さぁ、再戦よ! モノ共かかれやっ!!」


 言うが速いかイエイエ康が突出するように馬を走らせる。


「イエイエ康!?」


「貴様との接点は無いが、前回の我が世話になったようだな。だが私は貴様など認めんぞ。より目立ち世界の頂点に立つのはこの私だ!」


「望むところだ。世界一目立つ男に吾輩はなる。付いて来いイエイエ康」


「イェイ! いいや世界一目立つ男は我である。付いて来いサル!」


 自身をサルと呼ぶ事から前世の記憶はイエイエ康の中にあるのだろう。

 それに気付いたサルはふふっと不敵に笑う。

 死んだならばすぐに次のイエイエ康が生まれる。複雑な感情があるが、そんなモノ、言葉にするほどではない。


 イエイエ康と吾輩はサルである。が出会う。そのことこそが重要なのだ。

 互いに譲れぬ思いの為に、世界中にその名を轟かし、相手の屈服を持って史上最強の自己主張の星になるのである。


 互いに遠慮することは無く帝国兵向けて走り出す。

 イエイエ康は剣で、サルは尿意棒で撃破する。

 もはやこの場は彼らの狩り場。


 帝国兵は彼らの自己主張の為の礎となるしか道は残されていなかった。

 どれ程の抵抗を示しても、尿意には勝てなかったのだ。

 この場で漏らすことを出来ない日本人のさがだろう。戦場の兵士であれば垂れ流すことも気にしなかったかもしれないが、帝国兵にはそんな羞恥の極みなど行えなかったのである。

 結果、銃器を手放しもだえ続けるしかなかった。


 イエイエ康の連れて来た軍団が残りの兵士達を撃破して行く。

 追い詰められた兵士たちは股を絞めてもじもじとしながらも必死に銃器を構えて迎撃する。

 尿意棒で一撃喰らった帝国兵がなんとか必死に立て直そうとしているのだ。


 だが、かなしいかな。

 尿意のせいで注意力は散漫となり、身体能力が極端に低下してしまっているのである。

 ミーザル達が眼前で自己主張を行い、イラつきを募らせる。

 イエイエ康が眼前にピースサインを突きだし自己主張。さらにイラつきが募る。

 そんな兵士たちは尿意棒の脅威により一人、また一人と無力化させられていた。


「クソ、まだか。本体の許可は!」


「まだだ。良いか、どれ程敗北してもいい、一人だけでいい、生き残れ!」


 兵士たちは必死に防戦する。

 たった一人でもいい、より長く生き残るために奮戦する。

 戦闘機を撃墜し終えたスカイベアーが降りてくる。

 ティディスダディ率いるティディスベア軍団が迫る。


 もはや数える程に少なくなった兵士達。

 これまでか。最後のリーダー格が諦めようとしたその刹那。


「来た!」


 感覚で理解した。

 増殖の勇者。その真価が発揮されようとしている。


「くく、ははは。これで、これで負けは無くなった!!」


 帝国兵たちの嗤い声が高らかに響き渡った。

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