そのオッカケたちの思いを総統は知らない
マイネフラン東の平原に、マイネフラン侵攻部隊東方第二部隊が現れた。
戦車がきゅらきゅらと平原を進む。
第三部隊と合流しているようで、巨大兵器も同時に迫っている。
それを見つめ、ヘイオはふぅっと息を吐いた。
帝国軍第一部隊は今しがた、最後の一人がポスターを顔面に突き刺され絶命した。
オッカケ達の損耗は軽微。誰も脱落した者はいない。
一度死に瀕した彼らだが、ヘイオの叫びでオッカケ魂を刺激され、不死鳥の如く立ち上がったのだ。
手に手にポスター、サイリウム、メガホンを装備して、オッカケの群れが隊列を組む。
その姿を、後ろからパティアとカルエが心配そうに見つめていた。
だからこそ、ヘイオは、オッカケは闘える。
自分たちの背に、自分たちの安心を願い少女が居てくれるのだから。
「行くのだな、戦士たち!!」
「「「「「「「「「「ぱてぃあたーんっ!!」」」」」」」」」
迫る戦車へ向けて、男達が走りだす。
迫撃砲が大地を穿ち、銃弾が雨のように襲いかかる。
けれど止まらない。
オッカケ達は自身に銃弾を喰らいながらも、爆発に巻き込まれ吹き飛びながらも、血塗れで敵へと接近する。
気合いと共にポスターを、サイリウムを叩き込む。
ヘイオも血塗れになりながらも戦車を両断。
せまるミサイルポッドをサイリウムで薙ぎ払う。
パティアが見てくれている。
背中にパティアが居てくれる。
ならば、自分は闘える。
重火器が火を拭く。
流石のオッカケ達も一人、二人と倒れてしまう。
それでもヘイオは諦めない。
自分たちが負けてしまえば、愛するパティアが死んでしまう。
ならば、死ねない、負けられない、止まれない。
雄叫びと共に帝国兵を粉砕する。
「パティアたんっ!?」
焦るオッカケの声、なんだ? と振り向けば、ミサイルの一つがパティア向けて飛んで行く。
「マズい、誰かッ!!」
叫ぶヘイオ。しかし、前線に向かったオッカケ達は誰も救えない。
祈る少女はヘイオを見たまま動かない。
否、隣のカルエが必死に悲鳴を上げているが、二人とも逃げる気配は無い。きっと腰が抜けて逃げられないのだろう。
だからせめて、皆の勝利を願う。
そんな少女たちに、ミサイルが……
「だらっしゃぁっ!!」
迫るミサイルと少女の間に、その男は直前で割り込んだ。
ミサイルを両手で掴み、軌道を変える。
少しだけの変化だが、少女の横を通り過ぎ、遥か先で爆散するだけの変化は可能だった。
「くぁぁ、何だ今の一撃。受け止め切れなかったぜ」
「バズ、無茶し過ぎよ!?」
「うるせぇ! こんな時に無茶せずいつしろってんだ! オークのバズに笑われちまうぜ」
クラン天元の頂に所属するパーティー、バズラック・チャイコビッチ、エンリッヒ・エンデンベルグ、アタッカーオルタ・ピグマリオ、ナポ・リティアン、ベロニカ・ピグマリオが戦場に現れた。
「おう、流石にこの闘いに参加は危険だが、嬢ちゃんのお守は任せなオッカケども!」
「恩に着るんだなッ!!」
バズラックの大きな声に、ヘイオは叫びで返し、サイリウムで戦車を切り裂く。
これでパティアは安全だ。
冒険者達に感謝して、オッカケ達が気勢を上げる。
「お、おい、なんだありゃ!」
だが、危険はまだ終わっていなかった。
帝国兵たちの後ろから、多種多様な魔物の群れが迫り来る。
平原を覆い尽くす物凄い数の魔物たちは、迷うことなくマイネフランへと迫っていたのである。
「さ、流石にあの数はヤバくないか?」
「待って、彼らの動き!」
魔法を唱えていたナポが最初に気付いた。
魔物たちは帝国兵の元に来ると、進撃を止めて帝国兵撃破を行い始めたのだ。
空を飛び交う戦闘機には、光を帯びた老婆の群れが襲いかかって行く。
絶え間なく出現するババァの群れに、戦闘機は一機、また一機と光の彼方に消えて行くのだった。
「は、はは。なんだそりゃ」
「魔物王国マイネフラン……ってか」
そう、彼らが目にした通り、集まった魔物の群れ数千億匹は全てマイネフランをしいてはアルセの望むモノを守るために集結したのである。
「魔物が全て仲間かよ。負ける気がしねぇな」
「こうして見ると、帝国兵が哀れに思えてくるわね」
自分たちの数億倍に上る魔物の参戦で、帝国兵はなすすべなく討ち取られて行く。
もはや東方軍は撤退すらままならず。徐々に生存場所を詰められ、四面楚歌へと陥っていた。
ヘイオは決して気を抜くことなく、サイリウムを突き上げる。
「パティアたんが笑って暮らせる平和のために! 行くんだな!」
「「「「「「「「「「ぱてぃあたーんっ!!」」」」」」」」」
生き残った帝国兵向けて、男達が殺到した。




