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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十六部 第一話 その集う者たちを彼らは知りたくなかった
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そのゴボル平原の特攻を総統は知らない

 爆炎が晴れる。

 暴走するロードローラーの上に辰真は居ない。

 それでもツッパリ達は諦めることなくお礼参りだとばかりに敵陣へと突っ込んでいく。


 ブォン


 凶悪な空気振動と共に駆動音が響く。

 爆風が吹き飛ばされ、黒光りするバイクが爆炎から飛び出す。

 白きガクランはためかせ、ポンパドールの男がバイクに乗って飛び出した。


 ワァっと歓声が上がる。

 ガクランの背中には怨敵撃滅の四文字背負い、漢一匹巨大なバイクが隊長機へと突撃する。

 魔王辰真であった。背中の文字は気分によって変わるようだ。


「おっるぁぁぁぁ――――ッ!!」


 アルセ神バットを引き抜きたった一人、隊長機戦車向けて特攻を仕掛けた。

 ヤッたと思っていただけに焦ったリーダーは辰真向けて引き金を引く。

 砲塔から放たれる凶悪な弾丸を。辰真はバットで迎撃する。

 一瞬の拮抗。ビキリ、こめかみに血管を浮き出させ、辰真渾身の一撃がピッチャー返しとして砲弾を打ち返す。


「どるぁああああああああああああああ!!」


 撃ち返された砲弾は砲塔にすっぽり収まり、盛大に爆散した。


「た、退避、退避だッ!!」


 真下部分のハッチを開きリーダーは即座に脱出。

 もたつく乗組員を放置して彼が脱出した瞬間だった。

 バイクから飛び上がった辰真の一撃が戦車の車体を叩き潰す。


「は、ハッチが潰された!? 脱出が」


 内部から誰かの声が聞こえたが、気にせず辰真は一度地面に降りると、戦車を持ち上げ投げ飛ばす。

 地面に激突した戦車が盛大に爆散した。


「クソ、ふざけやがって……」


 リーダーは逃げだし、必死に走る。

 周囲ではツッパリたちが戦車をべこべこに叩きつけ、頭上からは水晶剣が降り注ぐ。

 さらに水晶剣に混じって空から降ってくるババァ。


 何だこの状況は?

 焦りながらもマイネフラン方面に脱出したリーダー格だったが、そちらも既に敗戦濃厚だった。

 騎士団により帝国兵が蹴散らされ、空からは銃器を持ったハーピーの群れ。

 地上を迫る帝国兵は何故か無気力になっており、銃撃つのめんどくさいと銃を放り投げて地面に倒れて惰眠を貪り始める者多数。

 あるいはフレイムベアーにより燃やされ炎に塗れて踊る兵士達。

 あるいはゴールデンベアーのヒップアタックで押しつぶされる戦車達。


「クソ、何だこいつ等は。近代兵器を何だと思ってやがる。こんな状況になるなんて聞いてねェぞ!?」


 本来、魔物など一直線に襲ってきて銃殺されるだけの存在だった筈だ。

 国を守る兵士達もだ。有効な手立ては一つとしてなく、蜂の巣になって虐殺されるだけの存在だった筈だ。

 なのに、なぜ?


 防衛部隊は銃弾を防ぐ全身盾で城門を守り、騎士団や冒険者たちは薄緑色の防具を身に付け銃弾を弾く。

 余程狙ってようやく殺せる位である。

 魔物達は組織立っており、ハーピーなどは銃器を奪って打ち返して来る程の知能を有している。


 東大陸の魔物はただ直進で迫ってくるだけだったので楽に倒せたのにだ、この西大陸の魔物は別種だと言われても納得するほどに銃器に対する防衛力が高い。


「あり得ない。こんな、こんなこと……」


 戦慄する彼の頭上に影が差した。

 はっと気付いた彼は空見上げる。

 鬼女が居た。


 真上から凶悪な表情の女が迫っていた。

 あまりの迫力に一瞬恐怖で固まった。

 そんな彼に、振り被られた腕が迫る。


 見上げた彼の頭に、アイアンクローが襲いかかった。

 何も出来ることなどなかった。

 エルフの女は彼が何かする暇すら与えず腕を振り被る。

 自分の身体が宙に浮くのに気付いた彼は、次の瞬間後頭部から地面に突き刺さっていた。


「え、エンリカさん突出し過ぎですっ!」


「そう? あら、本当ね。マイネフラン側に出てしまったわ」


 追って来たモーネットに気付いたエンリカが立ち上がる。

 獅子奮迅の活躍を行う彼女は、勢い余って敵軍を突破してしまったようだ。

 彼女が進んだ道には敵兵の頭が地面に埋まり、無数の兵士が地面に埋まって生えていた。


「さぁ、駆逐して行きましょうかモーネットさん」


「あ、あはは。遅れないよう付いて行きます」


 苦笑いのモーネットを後ろにして、エンリカが再び戦場を駆ける。

 その近くではオークたちがバズの指揮で敵兵士と斬り結んでおり、拮抗の様相を見せていた。

 当然、エンリカはそちらに足を向けてオークを蜂の巣にせんとした兵士を次々に消して行く。


 ある者は拳の一撃で弾け飛び、ある者は顔面を鷲掴みにされて地面に埋まる。

 マイネフラン西方面。間もなく決着がつく、かに思えた時だった。

 戦車を破壊していた辰真に向け、そいつは震えながら照準を付けていた。


「オルァ? オルァ――――ッ!!」


 辰真さん避けろッ!!

 気付いた番長の叫びが聞こえた。

 はっと気付いた辰真が振り返る。

 辰真の額目掛け、狙撃用ライフルから鉄甲弾が放たれた。

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