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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十六部 第一話 その集う者たちを彼らは知りたくなかった
1310/1818

そのゴボル平原の闘いを総統は知らない

 マイネフラン西に広がるゴボル平原。

 今、新日本帝国マイネフラン侵攻第二部隊とマイネフラン防衛軍との闘いが始まっていた。

 第一部隊を撃破でき、戦闘機部隊も軒並み撃破したため、カインは既にペリルカーンに乗って東大陸へと向かっていた。


 それでも、彼が抜けた穴はそこまで酷い結果にはなっておらず、戦闘機部隊には仇打ちに燃える鳥達とピッカ率いるハーピー銃士隊。そしてティアラザウルスの群れが近づく戦闘機を掴んでは投げ掴んでは投げしている。 


 ゴボル平原にはマイネフラン王国インペリアルナイトや、騎馬部隊に冒険者。三匹の熊も参戦し、戦車部隊相手に良く闘っていた。

 そこに、光が飛んで来た。

 無数の光はババァの証。無数のババァたちが空から急襲を仕掛け、さらに周辺を埋め尽す程の魔物の群れが帝国兵向けて襲いかかる。


 オオカミモドキたちが群れを成して飛びかかり、迫撃砲がこれを撃破していく。

 一進一退の攻防は、しばしの均衡を生むかに思われた。

 だが、その均衡は破られる。


 セルヴァティア方面からそれは音を鳴らして現れた。


 パラリラパラリラー


 不思議な音を響かせて、辰真率いるツッパリ愚連隊が爆走する。

 まさか自分たちの背後から奇襲を受けると思ってもみなかった帝国兵は慌ただしく動き出す。

 だが、四方を魔物とマイネフラン兵に囲まれ、上空からはババァ流星群に襲われている現状では、背後の彼らに割く余裕などありはしなかった。


「おるああぁぁぁぁぁ――――ッ」


 野郎共、合戦だ! とばかりにロードローラーから咆え猛る辰真。

 無数のツッパリ達が戦車砲を避けながら、時に直撃喰らいながら爆炎を突き抜ける。


「なんだ!? 背後を突かれた!?」


「隊長、あれはセルヴァティア方面のツッパリです!」


「なにっ! ということはセルヴァティア征圧部隊は……」


 さらに後続から何かが飛んでくる。

 初めは矢かと思った。

 だが、違う。

 夕焼けを浴びて煌めく水晶剣が空から飛来する。


 空に無数の水晶剣が羽ばたいた。

 放物線を描き、帝国兵向けて一斉に突撃を開始する。


「か、回避――――ッ!!」


「ま、間に合いませんっ!!」


「隊長、ツッパリがっ」


「ええい、クソ、砲撃主、変われ!」


 埒が明かないと自分から照準を合わせる。


「死ね、クソ共!」


 発射。

 砲弾が敵リーダーと思しきロードローラーに向けて放たれる。

 だが、離れ過ぎていたようで、辰真のすぐ隣を通り過ぎ後方のツッパリ達を吹き飛ばす。

 怒りに震える辰真は、背後を振り向くことなく、両腕を組んでロードローラーに乗せた黒妖号改に仁王立ちで乗っていた。


「クソっ、! 撃て! 一斉射だ。あのロードローラーに乗ったいけすかない不良野郎を粉砕しろ!」


 リーダーをやれば瓦解する。そう思ったからの指示だった。

 各戦車部隊が慌てて砲撃を開始する。

 一つ二つと砲弾が辰真へと向けて放たれる。

 辰真はそれを微動だにせず見つめていた。


 ツッパリ達が接敵する。

 ある者は兵士達を殴りつけ、ある者はアルセ神バットで戦車を殴りつけ、またある者はアルセ神バイクでそのまま特攻を仕掛ける。


 辰真はそんなツッパリ達の後方からゆっくりと迫り、逃げ遅れた帝国兵をロードローラーで轢いて行く。

 遅れ、古代人が柩を盾にして突撃。

 さらにその背後からは弓に水晶剣を番え、打ち放つ古代人や冒険者たち。

 スマッシュクラッシャーたちが一斉にハンマーを投げつけ戦車を粉砕して行く。


「クソ、なんなんだ! セルヴァティア応答しろ! 聞こえないのか!? セルヴァティア侵略部隊! チッ。早々に全滅しやがったのか。邪魔しやがって」


 悪態付いてトランシーバーを投げ捨てる隊長に兵士達が不安げな顔をする。


「ええい何を見ている! 全軍に通達、四方に別れ、徹底抗戦せよ!」


 もとより投降など意味は無い。


「隊長! ロードローラーが!」


 はっと気付いた時には既にロードローラーが目の前に迫っていた。


「ここならば外さん。死ね!」


 隊長は狙いあまたず辰真に砲塔を向ける。

 一瞬、辰真と眼が合った気がした。


「くたばれぇッ!!」


 砲弾が発射される。

 仁王立ちする辰真、その眼前に、砲弾が迫る。

 そして……爆散した。


「おるぁぁぁぁ!?」


 番長達がまさかの光景に驚きの声を上げる。

 爆散したロードローラーコクピット。制御不能のロードローラーは真っ直ぐに進む。

 慌てて回避した隊長機。


 まさか、死んだ? 動揺するツッパリ達に、番長が喝を入れる。


「オルァ!」


 辰真さんはあんなもんじゃ死んでねぇ! お前らは辰真さんの言ってた言葉を信じこの国救うだけだ。泣いてる暇はねぇ! 行くぞ!!

 そんな言葉を投げかけられたツッパリ達は、涙をぬぐって敵陣へと攻め込むのだった。

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