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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十六部 第一話 その集う者たちを彼らは知りたくなかった
1302/1818

プロローグ・その少女の決別を誰も知らない

 音楽が鳴っている。

 彼が弾いていたピアノの曲だ。

 ずっと、その曲が鳴り止んだことは無い。


 名前は何だっただろうか? 少し前はドナドナ? も一つ前は翼をください。

 いくつかの曲が繰り返し流れる。

 でも、今は……


 最近はずっと、その曲だけが流れていた。

 大きなノッポの古時計という奴だ。正式な名前は知らない。

 曲自体はありふれたものだったが、彼女にとっては違う。

 それは彼と過ごした日々を告げるモノであり、同時に別れを告げる曲でもあった。


 自分の自我が目覚めてから、ずっと一緒に居た彼。

 成長する姿もずっと側で見守っていてくれた彼。

 いつの日も、いつまでも、自分と共に過ごしてくれていた。


 家族のような仲間たちが出来た時だって、別れがあった時だって。ネッテが花嫁になった時だって。ずっと一緒に歩んで来たのだ。

 だから、ずっと、だから……ずっと――

 ずっと、今が続けばいいと思っていた。


 何も無い空間に、振り子時計が一つ。

 少女はその時計の針を、止めていた。

 ずっとずっと止めていたかった。もっと皆と楽しんでいたかった。


 指先で必死に、振り子が動くのを止めていた。

 見て見ぬふりでずっと動かすつもりは無かった。

 でも、もう、子供のままでいる時間は終わり。


 嘆きと悲しみはもういらない。

 だから、時間を進めよう。

 もう子供のままでは居られない。

 例え今の絆が離れ離れになるとしても、皆の哀しい姿は見たくないから。

 だから少女は、遠慮を止めた。成長しないことを、止めた。


 振り子時計から手を離す。

 涙の出ない瞳で泣いて、歩きだす。

 もう、振り子時計に振り向かない。


 鳴り響く。

 古時計がベルを鳴らし、その時を伝え始める。

 別れの日が、やってきたのだ。


 緑の少女は幼い姿からゆっくりと年を重ねて行く。

 成長を、始めよう。反撃を、始めよう。神の奇跡を、始めよう

 さぁ、始めよう皆。


 ここから先は、私の世界・・・・だ。

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