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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 そのかけがえなき犠牲を彼女は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その消滅した国を彼女達は知りたくなかった

 グーレイ教国で敵軍を蹂躙したアカネとルグスは、迫り来た第二部隊の迎撃を行っていた。

 第一部隊を撃破して一息付いていると、きゅらきゅらと音を響かせやって来たのだ。

 ルグスはにゃんだー探険隊に安全地帯に居るように告げて逃し、全裸のアカネと二人、迎撃に向かっていた。


「敵は二人だ。さっさと潰せ!」


 戦車からの砲撃がアカネに直撃する。

 ダメージすらないのでアカネは爆風に煽られながら反撃の魔法を唱えて行く。

 戦車部隊を魔法で迎撃。

 巨大魔法陣が大地に描かれ、小隊諸共に爆散させる。


 遅れ飛び交うルグスの魔法。

 第三部隊も投入されるが、ミサイル、バズーカ、投石機。無数の兵器を投入してもアカネとルグスを撃破するには至らない。

 ルグスだけは時折ミスったのか爆散に巻き込まれて消失するのだが、即座に渦巻くように逆再生から回復し、魔法を唱えて来るのである。


 どれほど撃破しても倒せない不死者の王。

 どれほど攻撃しても倒れない全裸の女。

 帝国兵たちは決死の面持ちで両者に銃弾を打ち込んでいく。

 全裸の女が相手なのだ。本来ならさっさと捕縛して慰み者にしているはずである。


 だが、相手は中空に存在し、どれ程の攻撃も意に介さず魔法攻撃を行って来る彼女を捉えることはできず、一方的に魔法を喰らって吹き飛ぶ仲間を見ているしかできない。

 それでも彼らは闘った。

 必死に銃を撃ちつづけた。


 焼けついた銃身を構わず撃って暴発した奴もいた。

 全弾撃ち尽くして青い顔で爆炎に呑まれた奴もいた。

 戦車に乗ったまま焼き殺された奴もいた。

 それでも必死に銃を撃つ。

 それこそが現状を打開できるとでも言うように。


 でも、実際は……

 戦車がまた爆散した。

 戦闘機が魔法連弾で墜落して行く。

 歩兵達が爆発で宙を舞い、ハリネズミと化した大地に突き刺さる。


「クソ、クソがぁ!!」


「煩いッ、侵略者の分際でわめいてんじゃないわよ!」


 射撃を行う彼に雷撃が襲いかかった。

 逃げる暇などなかった。

 絶叫を響かせ倒れる。

 女のうすら笑いを見ながら、彼の意識は消えて行った――




 雷撃を受け、倒れた帝国兵が霞みのように消えて行く。

 先程からコレだ。

 敵は死体になることなく、まるで初めから存在してなかったように消えて行く。


 どれ程の敵を倒しても、戦車やら身に付けた武具は残るのに、生身が残ることは無い。

 なぜなら彼らは増殖したコピー体であるからだ。

 アカネは面倒だと思いながらも一先ずグーレイ教総本山に攻め寄せた敵軍全てを撃破することにする。

 まずはこの場の安全を確保。一兵たりとも逃せない。


「ふむ。充分過ぎる迎撃だ。間もなく全滅するだろう」


「ふふ、大火力二人ならこれ程の大部隊も瞬く間に迎撃できるのね。このままさっさと殲滅するわよ」


 了解だ。ルグスは答え、無数の魔法を紡ぎ出す。

 アカネもそれに答えるように無数の魔法弾を産みだした。


「そ、総員備えろッ、来るぞ!」


 まだ残っている指揮官が叫ぶ。

 だが、彼らに避ける術などありはしなかった。

 悲鳴が轟く。

 炎が氷が雷撃が、幾多の魔法が数多の兵を薙ぎ散らす。

 瞬く間に数を減らす兵士達に、指揮官は絶望的な顔を浮かべた。


「クソ、打つ手はないのか……」


 もはや勝利は絶望的だ。

 だから、彼はトランシーバーで告げる。


「グーレイ教国征圧本部より00ダブルオーへ! アルセ姫護衛騎士団のガイコツと全裸女が強過ぎ……」


 あ、と気付いた時には遅かった。

 彼に向け特大の火炎弾が迫る。

 ただただ呆然と、それを見ていた。


「っし、殲滅完了!」


 アカネの放った火炎弾が最後の一人を撃破した。

 おびただしい装備品のドロップだけが残る。

 戦場には未だに煙が立ち上り、ぷすぷすと燃え残った草木がくすぶっていた。


「索敵してみたがもう敵は居ないらしいな」


「随分多かったわね。何体来てたのかしら?」


「全体で約1万程ではないか。よくもまぁ同じ顔を揃えたモノだ」


 感心するルグスにうーんと背伸びするアカネ。

 全裸で仁王立ちして日差しを存分に浴びる。

 大暴れ出来て気分爽快だ。このまま服を来てルグスに連れて行って貰い他の戦地のフォローに向かおうか。そんな事を思っていた時だった。


 空から一機、黒塗りの平たい戦闘機が迫る。

 その速度は今までの戦闘機の比ではない。


「あれは……なんだ?」


「ステルス……爆撃機!?」


 戦慄する二人が魔法を唱える。

 だが、爆撃機は彼らの側には寄って来なかった。

 彼らからは離れた方向。

 彼らが守るべきグーレイ教総本山。その頂に、向かって行く。


「にゃー?」


「っ!? 馬鹿者、逃げろッ!!」


 ルグスが叫ぶ。その刹那、

 グーレイ教本部の真上から、一つの爆弾が投下された。


「このっ!」


 アカネがぎりぎり魔法を放つ。

 爆撃機を直撃し墜落させるが、既に爆弾が落とされた後だった。


「やめろぉぉぉ――――っ!!」


 ルグスが叫ぶ。

 差し出された手が虚空を掴む。

 核が弾けた。

 世界から音が……消えた――――

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