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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 そのかけがえなき犠牲を彼女は知りたくなかった
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そのアルセの使徒たちを帝国兵は知りたくなかった

 マイネフラン南に、帝国第二部隊が現れた。

 どうやらあまりにも敵が粘るので業を煮やしたようだ。

 それを見たアルセが踊りを止めて僕の元へとやってくる。

 どったのアルセ?


「おっ」


「ぺん」


「あら。皆さん、どうやらアルセちゃんが突撃をお願いしたいみたいよ」


「突撃? 俺らがか?」


 小首を傾げたのはバニングさん。オーク村義勇軍を纏めていたおっさんだ。


「つってもあの銃器相手じゃ俺らは蹂躙されるだけだぜ? それを止めるためにこっちに連れて来たんだろ?」


「ええ。その筈だけど……どうも一計案じるらしいわ。あの辺りの森に潜んで、合図と共に突撃、だそうよ」


「はっ。そりゃいい。俺らにも武勲をくれるってことか」


 くっくと笑い、バニングはオークたちに向き直る。


「野郎共ッ、アルセ神様から直々蹂躙指示がでたぜ。俺らはこれよりアルセの使徒として帝国軍を撃退する。鬨は挙げんな。声張り上げんのは奇襲成功後だ。行くぞ」


 アニスに言われた場所へ向け、義勇軍が去って行く。

 再びこの丘に居るのは僕とアルセ、ペンネたん、アニスの四人になった。


「ふふ、どんなモノを見せてくれるのかしら、アルセのお手並み拝見ね」


 アニスがふふっと微笑む。挑戦的な笑みを受け、アルセは満面の笑みで地面に何かを蒔き始めた。

 まさに枯れ木に花を咲かせましょう。とでもいった見事な蒔きっぷりだった。

 やがて、アルセが中腰に座り込み、うんしょーっと飛び上がるように身体を開くその瞬間、


 ポコポコポコッ。


 地面から付き出る無数のタマネギ。違う、これは……

 アルセギン、だぁ――――――――ッ!?


 現れたアルセギン達はうんしょっと地面から這い出ると、自分が生まれた穴ぼこを埋め直してから整列を始める。

 一定数集まった彼らにアルセは思い切り拳を突き上げた。


「おーっ」


 いってこーい。とばかりに突き上げられた拳に反応し、アルセギンの群れが一斉に帝国軍へと走り出す。

 小高い丘より一直線の逆落とし。

 丁度第二部隊が第一部隊と合流した瞬間を狙い、アルセギンの群れが間横から突撃する。


「なんだ!?」


「アルセイデスの群れ?」


「構わん、撃ち殺せ!」


 当然、反応した帝国軍によりアルセギン達が蜂の巣にされて行く。

 だから……どんどん破裂する。


「ぐわっ!? なん……ぐずっ、眼が、涙が……」


「ぎゃあぁっ、眼が、眼がァ!?」


「な、なんだ!? はっ!? そ、総員撃つなッ、奴らアルセイデスじゃないぞ!」


 慌てて斥候が相手のステータスを確認する。


「隊長、奴らアルセイデスじゃありません! アルセギンです!」


「アルセギン!? 新種の魔物か!」


「はっ、アルセの使徒と書かれています。特性は東大陸にもいたタマネギンと似ています」


「クソッ、刺激を与えれば爆散するタイプか。対策を……ぎゃあああああ!?」


 隊長さんが対策を告げようとした瞬間だった。

 彼の前にアルセギンが現れる。

 よっす。と手をあげた彼女に一瞬硬直した隊長。当然、アルセギンが見逃す訳が無い。

 特攻して抱きつくと、彼の眼前で破裂した。


「隊長がやられた!? 奴らを近づかせるな、自爆して来るぞ!!」


「お――――ッ」


 ただ自爆するだけじゃない。周囲に漂うタマネギ汁が彼らの眼から涙を誘発させ始める。

 眼をやられ、鼻をやられ、闘いどころではなくなった彼らに向け、アルセの指令を聞いたアルセの使徒こと義勇軍が飛びだした。


「なっ、奇襲!?」


「何だこいつ等は!? くそ、前が見えないっ。銃を、銃は何処だ?」


 虚空に手をさまよわせる兵士。何かの筒を掴み取る。


「これは? 硬いが、デカい? ロケットランチャーだったか? まぁいい、とにかく……」


 ぐっと引っ張る。動かない。

 思い切り引っ張る。びくともしない。

 ロケットランチャーにしても重すぎる。


「なんだ? この妙に暖かいのは、俺は何を……」


「あー、それな……」


 そんな光景を見付けたバニングは呆れた声で真実を告げた。


「それは……オークのおいなりさんだ」


「……へ?」


「ブヒァ!」


 呆然とした男の頭にアックスが突き刺さる。

 彼の前で全裸待機していたオークのおっさんがバカめ。と笑いながら命を刈り取ったのだった。


「相変わらずド変態だなおっさん」


「ブヒァ」


「そろそろ戦車が動くぞ、アレはどうするつもりだ?」


「ブヒ」


 オークが地面を指差す。

 なんだ? とバニングが思った次の瞬間、近づいていた戦車の群れに地中から蔦が飛びだしキャタピラを絡め取る。

 さらに砲塔をばきりと圧し折り育った蔦を見て、アルセの使徒たちは盛大な鬨の声をあげて帝国兵に打ちかかっていった。


「……お?」


 もはや優勢揺るぎなし、そう思った僕らだったが、ゾクリと背筋が凍った。

 なにか、恐ろしいモノが来る。

 そんな予感に遥か彼方を見上げる。

 東の空から、ソレはやってきた……

なんらかの指摘があればオークネタは闇に葬られます(ノ>_<)ノ ⌒ネタ 闇

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