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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 そのかけがえなき犠牲を彼女は知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その冒険者達の激闘を帝国兵は知りたくなかった

 コルッカ街道のメイン道路。クラン赤き太陽の絆のメンバーが勢揃いしていた。

 クラン長アレン・ボルダートを始めとし、メインメンバーは盾のアディッシュ。斥候兼罠解除役のルティシャ・エナ・カーディナル。魔法使いのプラスタット。僧侶のヒックス、料理人イーニス。他にもクラン内のパーティー全てがここ、コルッカに集結していた。


 ただ、事前にクランから別クランに移ってしまったらしい紫炎蜉蝣の面子だけはここには居ない。

 アレンとしては引きとめたかったが、今はそんな余裕などないのだ。

 騎士団や他の冒険者たちと力を合わせて敵軍を撃破しなければならない。他のことにかまけている余裕がないのだ。


「っつか、どーすんだよこれ!」


 ただし、騎士団が構えるアルセ神全身盾が街の入り口を守り、その背後から魔法や矢を降らせている現状では、アレン達近接部隊は何が出来るものでも無かった。

 かといって突撃すれば蜂の巣になるだけである。


「見ろよアレン、他の場所では戦車とかいうのや戦闘機が飛び交ってやがるぜ」


「こっちはその段階に入る前で苦戦中だぜ? クソ、赤き太陽の絆の名が泣いちまう」


「別に泣かせとけばいいじゃない。安全第一よ。ラ・グライラ!」


 プラスタットが魔法を唱えつつ隣のアレンとアディッシュの会話に割り込んで来る。


「全くだ。でも、このままじゃじり貧、いや、分が悪いよな、まだ第二陣出て来てねーし」


「あ、そろそろ来るみたいですわ」


 ルティシャが眼を凝らして遠くを見つめていた。

 その言葉にアレンはうわぁっと嫌そうな顔をする。


「既に崩壊間近だっつのにダメ押しかよ、死ぬんじゃね俺ら?」


「赤き太陽の絆全員集合でしょ、これだけ集まって死んだら笑い話にも出来ないわ」


 イーニスとヒッグスも近づいて来てパーティーメンバーが勢ぞろいする。


「仕方ねェ、ヒッグス、悪いが回復無理させるぞ。イーニスはあの鉄塊頼む」


「仕方ないわね」


「が、頑張ります」


「さて、そうなると問題は……」


 とアレンは空を見上げる。

 その空を飛行していく戦闘機達が一足早く街中へと侵入する。

 空から来られれば流石に迎撃する術がない。


 こいつ等の機銃は少々厄介だが、現状打つ手がないのだ。一先ず地上を攻め寄せる相手を倒して行くしかないだろう。

 あるいは、余裕が出来た部隊が戦闘機に向かって行ってくれることを期待して、クラン全員が闘う戦場に指示を出す。


「では赤き太陽の絆、戦闘開始! 戦車部隊を徹底的にぶっ潰せ!」


 言った次の瞬間、彼の背後から七色の斬撃が空へと飛ばされ、戦闘機を破壊する。


「おお、今の一撃凄かった!? アレンやったな」


「へ?」


「うお、また戦闘機やりやがった」


「いや、俺じゃねーけど……あいつか!?」


 女性一人と男二人のパーティー。年の頃と着込んだ制服から冒険者学校の生徒と思われる。


「敗走……って感じじゃねーか」


「むしろ助っ人にしか見えんぞ。こっちの方が助かったくらいだ」


 上空の戦闘機を剣技で撃墜している少年と、もう一人の少年。少女の手を引いて走りながらアレン達の元へと走り込んできた。


「すいません、手伝います」


「そりゃありがたいが、向こうは良いのか?」


「下手に戻るよりこっちの方が近かったので。葛餅先生が居るし問題は無いです」


「くっそ羨ましいなオイ。葛餅こっちにも回してくれよ」


 戦車部隊が現れた戦場は一気に帝国軍に傾き始めていた。

 このままではいずれコルッカ自体が滅ぼされかねない。

 唇を噛むアレンは己の無力さを嘆く。


 白兵戦ならばなんとでもなるのだ。あの銃という武器に加え戦車の装甲、砲撃力が加われば手も足も出ない。

 何とかしたいと思う彼だったが、現状彼のスキルで出来ることなど遠距離兵の応援だけである。


「このままじゃ……ん? なんだ?」


 別の方向から、何かが来た。

 大量の軍団とだけはわかったが、多種多様な姿なので、初め眼をこすったアレンには分からなかった。


「アレは……あふん像!?」


 最初に気付いたのは学生の一人である。


「知ってるのかレックス!」


「知ってるも何もお前も見てただろランドリック。アレは時代劇の逆塔に出現するボスモンスターだ。一つ目小娘に巫女夫さん、ナルシスファイター、ラムズフェローもいるぞ!? アレは鍋奉行か? 鬼も大量に居る。塔の魔物が全て出て来たのか!?」


「こんな時にかよ、最悪は重なるってか?」


「待ってアレンさん、アレ……味方だ」


 ヒッグスの言葉にアレンははぁっ? と大声で驚く。

 見れば確かに、時代劇の逆塔の魔物達が狙うのは帝国軍だけらしい。

 現れた魔物に思わず魔法を投げつけるコルッカ兵は完全に無視で、魔物たちは帝国軍だけを駆逐していく。

 その姿に、徐々に魔物たちへの攻撃が減って行き、コルッカ兵は疑惑の視線を向けながらも魔物達を放置して共に帝国兵の駆逐に乗りだすのだった。

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