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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
1283/1818

AE(アナザー・エピソード)その山を守るモノたちを帝国兵は知りたくなかった

 ハルステラ山にそいつらはやって来ていた。

 コルッカ侵攻部隊の遊撃部隊である。

 彼らはハルステラ山を悪用し、逆落としでコルッカを攻め落とそうと画策していたのだ。

 だが、ここに予想外の敵から妨害を受けることになっていた。


「ウキィッ!」


 そう、ミーザルである。

 自分を指差し自己主張し、俺だ俺だと目の前で挑発しながら帝国兵に迫ってくる。

 仲間たちを引き連れたウザったいミーザル達を前に、帝国兵は四方八方に銃弾に撃っていく。

 けれどミーザル達は華麗にこれを避け、馬鹿にしたように自己主張を繰り返すのだった。


 焦れた兵士がロケットランチャーをぶっ放す。

 これを避けたミーザルがうきゃきゃと笑う。

 わざわざ接敵して顔の前で自己主張を始めるミーザルに、兵士たちの怒りは頂点に達しようとしていた。


 別に挑発するつもりは無いのだが、ミーザル達の特性であるのだ、我慢してくれとしか言えない。

 結果、兵士たちは激昂してミーザル駆逐を優先するのだった。

 御蔭で散発的な少人数によるゲリラ戦を行っても彼らの行軍は殆ど止まってしまうため、充分な妨害となっていた。


 御蔭でキカザールやイーワザル、ヨイドレなどが少しずつ兵士を削ることが出来ていた。

 人数的には300人程。

 今は250人程だろうか。それなりに倒したつもりだがやはりこの山に居る魔物ではこれ以上の損害を期待するのは無理そうだ。

 ミーザルはそんな事を思いながらも敵の銃弾を避けながら考える。


 この山を彼らの好きにはさせない。

 その為にはどうしたらいい?

 当然、彼らを殲滅させるのが最終目的である。


「苦戦しているではないか、宿敵ともよ」


「うきぃ!?」


 真後ろで銃を構えた兵士の頭をカチ割り、甲冑姿の男が現れる。


「うきゃぁ!?」


 お前は!? 

 告げたミーザルに、その男、はイエーイと自己主張を行う。

 イエイエ康である。

 ミーザルの宿敵は、こんな時まで彼の元へ駆け付けてくれたようだ。


「イェーイ! さぁ、共に自己主張の星となろうぞ!」


「ウギギ」


 だが、参戦するイエイエ康に、ミーザルは悔しげに唸る。

 いつの間に喋れるようになったんだこいつ。そんな悔しさが滲んだ唸り声だった。


「ゆけい! 徳川の英雄たちよ!」


 動き出すイエイエ康の部下たち、ミーザル達もまた俺が先だと自己主張しながら敵陣へと向かって行く。

 銃弾や砲弾が飛び交う。されどこちらの軍に死者はでない。

 ミーザル達が率先してターゲットを自身に向けている御蔭で、弾道が読みやすいのだ。


「くま――――っ」


 さらに上空より援軍が到着。

 スカイベアーに乗ったティディスダディが地上へと落下して来る。

 巨大な包丁を地面に叩きつけ兵士たちの足場を揺らがすと、そこに何処からともなく現れるティディスベアの群れ。


 体勢を整える兵士たちの元へとクマのぬいぐるみ達が殺到する。

 そして生き残った兵士への熊パンチ。

 スカイベアーが放った空中からの一撃が五人を纏めて薙ぎ払う。


「ウキィ!」


 何か知らんが援軍だらけだ。

 頼もしくはあるが自己主張が少なくなるのはいただけない。


「ウキャ」


 不意に森の方から聞こえた声。

 その方角から飛んで来たナイフが兵士の額に突き刺さり絶命させる。

 シ・ザルの援護でイエイエ康を狙っていたらしい兵士を撃破した。


「うっきゃー」


 ありがとう。でも俺も気付いてたけどな! とばかりにミーザルがそいつに告げる、その刹那、シ・ザルは発見された恥ずかしさに恥死してしまった。

 そう言えばあんな特性だった。気付いた時には既に遅く、股間を隠しながら絶命した猿が一匹横たわっただけであった。


 すんでしまった事を悔やんでも意味が無いと、彼の死を胸にミーザルは帝国軍を睨む。

 シ・ザル、見ているがいい、我が自己主張力を!

 ミーザルが走りだす。

 眼に映ったのは丁度指揮を行い部隊を立て直そうとしていた隊長格。

 兵士達を足蹴に飛んで、相手が気付くより先に接敵する。


「しまっ……」


「うきゃ!」


 アルセ神スパイクシューズで顎を蹴り上げ自己主張。

 倒れる男の顔面に蹴りを突き入れ、尻尾を首に巻き付け身体を固定。

 倒れ込む男の顔面をスパイクシューズで蹴りまくる。

 当然、お前の顔面踏み締めてるの俺ーっと自己主張はしっかりとやっておく。


「クソッ! 隊長がやられた!」


「なら次は俺隊長な。全軍ぶっ潰せ」


「お前隊長向いてねぇよ!?」


「だったらお前らも向いてねぇだろ、俺らはもともと一人だし」


「取った!」


 男達がコントじみた会話を始める。

 むしろ俺の方向けよお前ら、と自己主張した時だった。

 兵士の一人が振り向き銃弾をぶっ放す。

 別の兵士に自己主張していたミーザルはこれに気付くのが遅かった。

 

「馬鹿者ッ」


 銃弾が肉を貫く。

 ミーザルを押しのけた、イエイエ康の身体を――

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