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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)そのひょっこり増えるモノを帝国兵は知りたくなかった

「ようやく、辿り着いたわ」


 メリケンサック公国。

 スール・フォラファン、ホーキ・ドンテの二人はとある郊外へと足を運んでいた。


「本当に、やるんだなスール」


「やるわ。いいえ、やるしかないの、この国を守るために、これを解くしかないわ」


 二人の前には巨大な岩が一つ。

 切り立った山肌にそびえる岩は、とある洞窟を封鎖する為のモノである。


「でも、グーレイ様がこの中は危険だって……」


「けれど、このまま国が滅ぶよりは、マシだわ。攻め寄せて来たあいつらに、本当の地獄を見せてやるべきなのよ」


 岩に取りつき、うーんと唸りながら岩に力を込める。

 しかし、子供二人の力で大岩が動くはずもなかった。


「ふはっ、駄目ね……」


「流石に封印されてるだけあって僕らじゃ無理だよ。これは無謀だ」


「だったら何よ! 見たでしょカノンの泣きそうな顔。ハレッシュさんが死んだらさらに泣いてしまうわ。そんなの、見たくないのよ。カノンには、幸せに笑っていて欲しいもの」


「そう……だな。うん、頑張ろう」


 再び力を込める二人。

 必死に力を込めたり、込める場所を変えてみたりと試してみるが、岩はピクリとも動かない。


「そこで何してるアホ共!」


「うわっ!?」


 突然掛けられた大人の声に、二人は揃って飛び上がる。


「あ、いえ、その、これは……って!?」


 慌てて謝ろうとした二人は、相手を見て固まる。


「よぉ悪ガキども。人手は必要か?」


 彼らの元に現れたのは三人の男。

 盗賊の肩棒を担いでいたが、脱出を手伝ったことで王国兵として召し抱えられた男と、たまたま見張り番に雇われ生き残った冒険者二人がそこに居た。


「おじさんたち。なんで……」


「お前らがどっか行くのが見えたんでな。隊長に人民の保護優先で戦場から遠ざかる許可をもらったのさ」


「どうせ此処に来るだろうと思ったしな。やるんだろ?」


「こういう責任ってのは、大人が取らねぇと、だよな。お前らは見とけ。ここを壊すのは俺らの独断だ」


 スールとホーテを押しのけ、三人の男が岩戸に取りつき力を込める。

 流石に男三人が押した御蔭か、ずずっと岩戸が横にずれていく。


「っし、そろそろヤバい、逃げるぞ」


 人一人通れる大きさまで開くと、スール達を抱えて男達はトンズラを始める。

 しばらく走り、岩戸が見えるギリギリの位置で振り返って見てみれば、岩戸の隙間からひょこ、ひょっこり、のっぴょろーんと、そいつらが現れた。


 アルセ神による神罰でモザイク人と化した盗賊の群れ。

 その大集団が封印を破り、現世に出現する。

 彼らはひょこっと岩戸から顔を出し、恐る恐る外へ出てくると、妨害するモノは何も無いとばかりに両手を上げてのっぴょーうと走り出す。


「あーあ。ついに封印解いちまった」


「短い人生だった。モザイク死はちょっと嫌だなぁ」


「とにかく、奴らが向かう方角は幸いにも敵軍側だ。とりあえず街に戻って国王に報告だな」


「だ、大丈夫なの? おじさんたちが大変なことになるんじゃ……」


「子供が心配するこっちゃねーよ。お前らは教会の地下で震えて結果待ってりゃいい。後は任せな」


「そういうこった。さぁて、久々に大暴れすっか」


「だな。どっかに居るだろうメリエの奴に二人と別れるんじゃなかったと後悔させるぐらいの大金星あげねぇとな」


 二人を教会まで護衛して、教会付きの兵士に引き渡した三人は、戦場向けて歩き出す。

 逃げるなどという言葉は彼らには無かった。ただ、戦場へと向かう男の顔で、最前線へと向かう。

 その最前線は……阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。




「のっぴょろーん」


「な、何だこいつ等はっ!?」


 メリケンサック公国の抵抗はそこまでない。

 だから完全に油断していた。

 銃撃を行いながら軍靴を鳴らしてただ前進すればいい。

 そんな油断を付くように、ひょこり、側面の森からそいつは現れた。


 両手を開き万歳突撃。

 あはは、待てぇーとばかりにのっぴょろーんと意味不明の言葉を吐きながら現れた全身モザイクの人型が帝国兵の群れへと飛び込んできた。

 ただの敵襲だと思った帝国兵がライフルをぶっ放す。

 しかし、銃弾はモザイク人に当った瞬間モザイク化してしまい、モザイク人は無傷で帝国兵に抱き付いた。


「うわっ!? クソ、なんだこい……あ、え? なんだ、こ……のっぴょろーん」


「お、おいどうし……も、モザイク化した!? 気を付けろ、こいつ等に触れると仲間にされるぞ!」


「おい、森、森を見ろ! モザイク野郎がまだ……」


「次から次に湧きだしたぞ、殺せ! 撃ち殺せぇ!!」


「隊長銃が効きませ……のっぴょろーん」


「ロケットランチャーで殺せ!」


 ロケットランチャーが火を噴く。

 モザイク人はそれに気付いてのっぴょろーんと鳴き声をあげるが、避ける知能もないのか、直撃を受けた。

 爆炎が迸る。が、その爆炎がモザイク化を始めて巨大モザイクとして動き出す。


「馬鹿な!?」


「隊長、援軍を! 第二陣の戦車でくのっぴょろーん」


「え、ええい、援軍、援軍求ム! 敵はメリケンサック公国軍と、謎ののっぴょろーん」


 帝国軍は一瞬で総崩れと化し、モザイク人の群れが急速に増えていくのであった。

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