AE(アナザー・エピソード)その無限の軍団同士の闘いを帝国兵は知りたくなかった
ナーロイア王国ではのじゃ姫、ワンバーカイザー、王子ギリアムとその恋人候補アマンダがやって来ていた。
アマンダだけは特注の水槽に入ったままで、鳥たちが重そうに運んでいた。
アマンダをアルセ教教会付近に降ろし、その近くへとギリアムが降りてくる。
「のじゃー!」「ワン」
空から侍軍団を敵陣に出現させたのじゃ姫も、一仕事終わったと戦線から離脱して来る。
「父上!」
「おお、ギリアムッ!!」
ぐわしっ。
国王と王子が熱い抱擁を行う。
ギリアムの額に頬にと感動の口付けを交わし、国王は再度熱く抱きしめる。
「信じておったぞ我が息子よ!」
「遅くなってしまい申し訳ありません父上。ですが、心強い仲間と共に、この国を守るため、アルセ姫護衛騎士団ギリアム。ここに推参いたしました!!」
二人の男がキャッキャウフフしている間に、のじゃ姫は召喚陣を出して次々と侍たちを出現させていく。
時折、マッシブガルーやらまだまだ死なぬわやら影からニンニンが召喚されているが、現れた侍たちは、一斉に剣を引き抜き敵軍めがけて走り出す。
ナーロイア軍を掻き分け前へと出ると、応戦とばかりに丁髷砲を放ち、敵の先頭を迎撃する。
「無礼でおじゃる」
「殿中でござる」
「殿中でござる」
「殿中でござる」
「殿中でござる」
「天誅でござる」
「殿中でござる」
「殿中でござる」
「何だこいつ等!?」
「俺らと似たような存在か!? メンドクセェ」
銃弾と砲弾が飛び交い合う。
「まだまだ、死なぬわぁッ!!」
「こいつ、どれだけ撃っても死なねぇぞ!?」
帝国兵の怒号と悲鳴が轟く。
袴姿の男達が刀を煌めかせ次々に突撃して来る。
結った丁髷からは砲弾が飛びだし、抜刀された刃は即死の一撃。
あるいは蹴鞠が空を飛び、隠れたニンニンよりクナイが飛んでくる。
ナーロイア相手に優勢だった帝国兵は瞬く間に劣勢に立たされる。
「第二陣に連絡。敵軍の増援で窮地、救援求ム!」
少し先に待機していた戦車部隊が動き出す。
戦闘機の群れが機先を制するように迫り来る。
だが、その戦闘機達が敵陣に辿り着くより先に、敵陣より膨れ上がる巨大ハンバーガー。
「な、なんだありゃ、巨大怪獣!?」
「ハンバーガーだろ? なんで異世界に?」
街を覆い尽くす程に巨大なワンバーカイザーが飛びあがって戦闘機に頭突きを行う。
衝撃で翼が折れた戦闘機が地面へと墜落して行った。
「クソ、機銃で応戦しろ!」
「馬鹿か!? 巨大怪獣だぞ、そんなことしたら戦闘機破壊フラグが立つだろ。誰か巨人か巨大ロボ呼んでこいよ!」
「ンなもん居るか!」
彼ら帝国兵が何もしなくとも、ワンバーカイザーはピクルスブーメランを放ち無数の戦闘機を破壊し始める。
戦闘機は彼に任せれば大丈夫と気付いたギリアムはのじゃ姫の側で陸上部隊の征圧を行うことにした。
ばらばらのナーロイア兵の足並みが揃いだす。
やはり王子であるギリアムが戻ってきたことは彼らにとって士気の増加に繋がるのだろう。
「おじゃるでござるのじゃーッ!! おじゃるでござるのじゃーッ! おじゃるでござるのじゃーッ!!」
のじゃ姫は息つく間もなく無数の殿中でござるを召喚していく。
MPが尽きそうなのか青い顔になってくる彼女だが、それでも必死に召喚を行い、限界に近付くと、MP回復薬をぐびぐびっと飲みほし再び召喚を開始する。
侍たちが倒されるよりも出現する侍たちの数が上回っている。
時折現れる別の擬人たちも、即座に戦闘に参加をし始め、扇動ちゃんが召喚されたことで全体の指揮力も上がる。
「お、おい、なんか変なの居るぞ?」
「何だあの一つ目のムキムキ男!?」
一つ目アニキを見た帝国兵たちが驚いた声を出す。
それを聞いた一つ目アニキがスキンヘッドの頭をキラリと光らせ男達に視線を向けた。
そのたった一つの眼が、光り輝く。
「マズい、逃げ……」
男達が気付いた時には遅かった。一つ目アニキの眼から光の奔流が迸る。
男達を消し飛ばし、帝国兵に少なくない打撃を与えた。
「あのテカテカ野郎を優先しろ! 逆鱗の眼光だ! これ以上使わせるな!!」
「ロケットランチャーでも撃っとけよ! アサルトライフルであの巨体倒せる訳ねーだろ!」
帝国兵たちは互いに敵を押し付け合い、その合間で溜まったチャージで逆鱗の眼光が再度発射される。
無数の帝国兵が何も出来ずに消し飛んだ。
「よしよしよーぉし!」
「父上、お下がりください。アマンダ、父上を頼む!」
「頼むったって、私も出来ないわよ?」
「側に居てくれるだけでいいのさ、何より私のやる気が上がる」
「ギリアム……」
にこり、ギリアムは微笑んで敵の元へと向かっていく。
だが、幾らもしないうちに立ち止まる。
そもそも彼が出張る必要は無いのだ。
バツの悪そうな顔で戻ってきたギリアム。その横ではのじゃ姫が絶えず召喚を行い、現れた侍たちがギリアムの横を通り過ぎていくのであった。




