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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)そのダンサーの出現を帝国兵は知りたくなかった

 ギルメロン共和国もまた、新日本帝国軍の侵略を受けていた。

 対応するギルメロン兵たちは、寄せ集めの軍隊であるため義勇兵や冒険者ごちゃ混ぜで正規兵は殆ど居なかった。

 それというのも旧ギルメロン帝国の王がマイネフランに攻め寄せた時に精鋭兵の殆どが王と共に死んでしまったからに他ならない。


 そのため、がたがたになっている防衛戦力は未だ回復しておらず、人材不足のまま魔物たちの力まで借りてようやく迎撃が出来ている状況だった。

 特攻雀たちが戦闘機にバードアタックを仕掛け、トロール達が動く要塞として前面に出て敵を駆逐する。


 高い肉体再生能力を存分に活用した突撃により帝国兵は大苦戦を強いられていた。

 トロールの周囲を小型の魔物がうろちょろするせいでトロールの大ぶりを避け切れない兵士が続出するのだ。

 しかも銃弾の数百発ではトロールを殺しきれず、ロケットランチャーも当りどころによってはたちどころに回復してしまうのである。


「くそ、クレイモアを直接投げ込んでやれ!」


「アレ対人地雷ですよ!?」


「構わん! パイ投げの要領で投げつければ爆発するだろ」


「んなテキトーな!?」


 指揮官の言葉に帝国兵が重々しい地雷をトロールへと投げ始める。

 勢いが付いた御蔭か当った瞬間トロールの上半身が吹き飛ぶ。


「やった、行けるぞ!」


「トロール恐るるに足らず! 踏み潰せ!」


「よし、反撃かごべっ」


 意気を上げて突っ込もうとした帝国兵の顔面に金貨がめり込んだ。

 トロール達の背後から買い物籠を持ったオバサンたちが現れる。

 大根を引き抜く一際大きなオバサンが大根を目の前へと振り下ろす。

 それはまるで、総員攻撃。と告げているかのようだった。


 大阪のおばちゃん。を思わせるパワフルな女たちが走りだす。

 無数のジャガイモが投げられる。

 空中で爆散したジャガイモの欠片が帝国兵に襲いかかった。


「何だこいつ等!?」


「ぎゃあぁ!? お、おい、何だこれ、芽が、ジャガイモから芽がぁ!?」


「があぁ!? なんか身体の奥から吸われる感覚が!?」


「ま、待て、降参、降参するからやめ……」


 最後の一人がぶちゅぅぅぅっと濃厚なチッスを受けて崩れ落ちる。

 口元を腕で拭い、舌舐めずりをするのはサザウェン。以下ハイ・タリアンの群れが敵陣への突撃を開始した。


「クソ! こいつ等ネギやら人参で銃弾をはじき返して来るぞ!」


 迫るハイ・タリアン。追い付かれてしまえば濃厚なチッスの餌食。

 オバサンたちの厚ぼったい唇が迫る様を見せられた帝国兵は半狂乱になりながらハイ・タリアンを集中攻撃し始める。

 トロールが気勢を盛り返し、背後から攻撃して来るが、彼らにとっての最優先はハイ・タリアンの群れだった。


「よし、一匹倒し……嘘、だろ?」


 悪夢は終わらない。

 蜂の巣になったハイ・タリアンが倒れ伏し、ガッツポーズした帝国兵の目の前で再び五体満足で立ち上がる。

 蘇ったハイ・タリアンの熱いヴェーゼにより、また一人、帝国兵が無力化された。


「クソ、魔物どもがッ!!」


 片膝を地面に付いて足を狙う帝国兵。

 走り込んで来るのはサザウェン。

 連射される銃弾を大根で弾き返しながら戦場を走り抜ける。


「くっ、しまっ」


 袈裟がけに振るわれた大根が男を切り裂く。

 即座に銃を拾ったサザウェンは周囲の帝国兵向けてアサルトライフルを発動。

 全弾打ち尽くすまで続けると、最後にライフルを思い切り投げつける。

 銃口が帝国兵の頭蓋に突き刺さった。


「あいつだ! 一際動きのいいババァを集中攻撃で殺せ! 確実に二回は殺せ、一度だけだと蘇るぞ!」


 だが、彼らは知らない。自分たち若い男が目の前に居るせいで、サザウェン達の実力が徐々に上がって行っているということを。

 それでも戦車部隊や戦闘機部隊が戦場にやってきたことで戦況が一変する。

 ハイ・タリアンたちが砲弾で吹き飛び機銃斉射で即死して、そして再び起き上がる。


 徐々にだが数を減らすハイ・タリアンに、兵士達は希望を見出し始めていた。

 こいつ等を殺し尽くすのも時間の問題。

 このままいけば近いうちに……


 そんな戦場に、一羽のカモメがやってきた。

 足に捕まる男が一人。

 アフロヘアの男が参戦する時、戦況は再び変化する。


「フィ――――バ――――ッ」


 戦場の中央へ、そいつは大の字になって飛び降りた。

 空中で衣服が脱げていく。

 余りに自然に脱げ、大空を舞う衣類たちに、戦場の皆が空を見上げた。


「た、隊長、空から、空から全裸の男がっ」


「そこはお頭だろ!」


「ンなこと言ってる場合か! なんなんだあの変態は!? 空中で腰振ってやがるぞ!?」


「サタデー……ナイト、フィーッバーッ!!」


 帝国兵が銃口を頭上に構えた瞬間、サタデーオールナイト、ジョナサンの固有スキルが発動した。

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