AE(アナザー・エピソード)その保護者の無限強化を帝国兵は知りたくなかった
「フォォォォォ!!」
ネフティアが突撃したことで至高帝もまた走りだしていた。
ハロイアの守りを兵士達に任せ、自分はネフティアを守るために走りだす。
何しろ彼女の方が危機的状況なのだ。
そう、危機的状況が継続している。
死に掛けては回復し、死に掛けては回復する彼女を見たことで、幼女の守護者は爆発的に実力を増加していく。
少女の危機を救うために力を増加する至高帝、常に死に掛け危機に瀕しながらも周囲を血溜まりに変えていくネフティア。だからこそ継続する危機に至高帝の力もまた無限に上昇し始める。
気のせいだろうか? ぶれるように霞み始めた至高帝が一人、二人と増えて見える。
無数の場所で至高帝の連撃が放たれ、帝国兵たちが吹き飛んで行く。
上着で、あるいは帝国兵を使って自分に叩き込まれる銃弾を受け止め弾き、至高帝もまたネフティアが向かう敵中央へと突撃していく。
至高帝の目の前で、ネフティアが戦車部隊と衝突した。
「戦車に取りつかれたぞ!?」
「工具は脅威だが、それが……なにぃ!?」
ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
耳障りな音が戦車から響きだす。
ネフティアが付きだしたチェーンソーが車体の鉄を引き裂く音だ。
「う、嘘だろ、あんな簡単に!」
「如何、全員あの小娘を狙え!」
「させるかァ!!」
霞む無数の至高帝がネフティアを狙おうとした兵士達にステッキを叩き込む。
「何だこいつは!?」
「ふぉふぉふぉ、猛って来ましたぞ!」
「死ねッ!」
ロケットランチャーが至高帝へと放たれる。
当たる瞬間、上着が空を舞った。
「やったか!」
「残像ですぞ?」
「なっ」
驚き背後を見るロケットランチャーを持った兵士。その首がぐきりと音を鳴らす。
崩れる男の背後に、至高帝がいた。
シャツをぴしりと整え、ニタリと笑う。
「幼女の危機は私が守りましょう」
「舐めるな!」
無数の銃撃が至高帝に襲いかかる。
シャツが空を舞い、蜂の巣になった。
「残像ですぞ?」
「また!?」
帝国兵が振り返るより先に五人の兵士が撃退される。
「撃て! 味方を気にせず撃ちまくれッ」
「残像ですぞ」
スラックスが宙を舞う。
ブリーフ一丁の初老の老人が周囲の兵士を撃破しながら告げる。
さらに銃口が彼を捉える。
「もうブリーフだけだ、次撃てば確実に殺せる!」
身を守るモノは何も無い。当れば至高帝を倒せると、彼らは必死に銃を乱射する。
ブリーフが空を舞った。
「ぎゃぁ!? ブリーフが俺の頭に!?」
「お、おい見ろ! 全裸にネクタイだけの変態になったぞ!」
「ひぃ、変態だッ」
至高帝がステッキを振るう。無数の兵士達が空を飛び、地面に頭から突っ込んで無力化されて行く。
それをネフティアがチェーンソーを振るいさらに無力に変えていき、ネフティアを狙う兵士たちは優先的に至高帝に狩られ始める。
ネクタイが宙を舞った。
至高帝が最終進化系へと至る。
残像ばかりかもはや光と化した至高帝が兵士たちの間を駆け抜け撃破していく。
「クソ、俺たちは一体何を相手取ってる? 光?」
「とにかく撃て! 撃ってりゃその内当る!」
「その前に殲滅させられ……おい、嘘だろ!?」
気付いたのは偶然だった。
兵士の一人が背後を振り返り、空高くに浮かぶそれを見て悲鳴じみた声を上げる。
戦闘機向けて放たれていた剣の群れが、放物線を描いて彼らの頭上へと降り注ごうとしていたのだ。
「う、わああああああああああああああああああああ……」
「おーほほほほ。見ておりますかおじ様! ハロイアは、貴方のために戦場の華となりましょう!」
戦闘機に剣が突き立ち飛行不能になった一機が他の一機に激突し、二機揃って墜落していく。
丁度下に居た戦車を巻き込み大爆発を起こした。
「三人だ……」
「隊長?」
「あの三人を殺れば我が軍の勝ちだ! 犠牲などどれ程出ても構わん自爆でも何でもしてあの三人を殺せッ!」
帝国軍が指揮官の言葉を聞いて動き出す。戦車部隊がネフティアに、戦闘機部隊がハロイアへと攻撃を集中し始め、どちらにも向かえない至高帝がマズいと動く前に、歩兵が彼の動きを止める。
「FOOOOOOOOOOOOO!?」
「よし、こちらは封じる! あの血色の悪い小娘を粉微塵にしてしまえ!」
歩兵部隊に答えるように、無数の戦車部隊がネフティアに襲いかかる。
火を噴く砲塔。ネフティアの周囲に着弾し始める砲弾。
それでもネフティアは戦車に取りつき、破壊を続ける。
だが、そのネフティアへ、直撃の砲弾が襲いかかった。
乗っていた戦車にぶち当たり、盛大な爆発が起こる。
ハロイア、そして至高帝の悲鳴が轟いた。




