AE(アナザー・エピソード)そのロリと保護者の関係を帝国兵は知りたくなかった
「ヒィヤッハー!! 帰りてぇっ!!」
最初の掛け声こそ突撃していきそうな楽しげな声だったのだが、アキオの本心は帰りたいの一言の方だった。
ここはギルガン王国防衛戦線の最後尾。
アルセ教教会の門前である。
そこにアキオは立っていた。ここを守れと言うネフティアからの戦力外通告である。
せっかく来たのに戦力外。俺、何のためにここに連れて来られたの? 状態である。
そんな指令を与えたネフティアはハロイア、ロリコーン至高帝と共に最前線へと向かってしまった。
幼女の前ではまず死なない至高帝や遠距離ガトリングソードを持っているハロイアはそこまで心配ではないが、ネフティアの武器はアルセ神グッズとはいえチェーンソーなのである。
突撃オンリーの彼女では近づく前に蜂の巣にされてしまうだろう。
一応回復魔弾を持ってはいるが、果たして手持ちだけで間に合うか、そもそも打つような余裕があるのかどうか……
アキオはナイフを舐めつつ空を見上げる。
「無事に戻ってきやがれよネフティ……痛ってぇ!?」
ナイフが舌に突き刺さる。
闘っても居ないうちに血だらけになったアキオ。
発見した兵士により怪我人として野戦病院へと運ばれて行くのであった。
ネフティア、ハロイア、ロリコーン至高帝の三名が最前線へとやってくると、既に戦争が始まっていた。
ギルガン兵たちはアルセ神盾を構えて防御を整え、その隙間から矢や魔法が飛んで行く。
対する帝国兵はアサルトライフルを構えて銃撃を行いながらゆっくりと一歩、また一歩と近づいている。
何人倒れようと気にすることなく近づいてくる帝国兵に、流石に肝を冷やしている様子のギルガン軍。しかし、彼らが逃げることは無い。
祖国には愛すべき妻子がいるのだ。
ここを突破されれば国が蹂躙されてしまう。
「では、行きます!」
ハロイアがガトリングソードランチャーを構える。
この日の為に各所から無数の武器を買い占めた。
アルセ神グッズが売れだした為に普通の武器が捨て値になってしまったのだ。御蔭で大量購入出来て武器屋もハロイアもホクホクである。
「盾隊、背後からアルセ姫護衛騎士団の攻撃行くぞ、中央開け!」
銃弾の嵐が吹きすさぶ中、その中央が開かれる。
銃弾が飛び込んでくるが、そこに逆方向から連射されて行く剣の束。
改造してあるために弾装ベルトを取りつけ、ここに剣を取りつければ後は勝手にガトリング内に取り込まれ、打ちだされて行く。
弾装の装填は近場に居た兵士がやっているのでハロイアはただひたすらに打ち込むだけだ。
剣が撃ち逃した弾丸は至高帝が軽々弾き、ハロイアの一撃が敵軍を一列に粉砕していく。
背後から来ていた戦車に突き刺さり、砲塔を破壊し、爆散させた。
流石に脅威と思ったのか敵軍はハロイア向けて戦闘機を差し向ける。
「盾隊戻れ! ハロイアどの、上を!」
「了解ですっ!!」
騎士団長の声にハロイアはガトリングソードランチャーを持ち上げる。
飛びだす剣達が斜め上へと放物線を描きながら上がって行く。
「ハロイアどの、前進を、それ以上の角度では味方に被害が!」
「了解。いっけぇぇぇ!!」
迫り来た戦闘機が機銃を打つより早く、無数の剣が戦闘機に突き刺さって行く。
ギュイイイイイイイイイイイイイイイイ
ハロイアの闘いに皆が期待を浮かべた瞬間、それをぶった切るような駆動音。
無骨な工具が唸りを上げる。
「ネフティアどの? だ、駄目です、今突撃はっ」
だが騎士団長の制止空しく、ネフティアは盾隊の頭を踏み台にして防衛戦の外へと飛んで行く。
「フォッ!?」
「馬鹿な!? 正気か」
当然、銃弾がネフティアに襲いかかる。
蜂の巣になる少女、思わず目を瞑る防衛部隊。
歓声を上げようとした帝国兵。
その全てが、目を見開いた。
倒れそうになったネフティアは地面を踏み締め走りだす。
全身を穿たれながらも、文字通りの特攻を始めた。
焦る帝国兵がネフティアに銃撃を集中させる。
別に、ネフティアが死なない訳じゃない。
別に、ネフティアは無敵な訳じゃない。
ただ、死ぬ前に回復しているだけに過ぎない。
回復魔弾を使い、死ぬ寸前までダメージを受けながらぎりぎりで回復して回復魔弾の消費速度を減らし、同時に特攻。
巨大な工具が兵士を真っ二つに引き裂く。
悲鳴が上がる。
間近に近づいたせいで銃撃が無意味になった兵士達。
だが、振るわれるチェーンソーに恐怖を覚えた兵士たちは必死に銃で応戦しようと、味方に銃弾を叩き込みはじめる。
御蔭で受けるダメージが緩和され、ネフティアの動きが少し良くなる。
竜巻のように周囲を粉砕しながら敵軍中央へと向かうネフティア。
戦場を駆け抜ける血塗れの戦乙女は、ギルガン王国兵に衝撃的な何かを与え、皆の視線を釘づけにさせていた。




