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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
1272/1818

AE(アナザー・エピソード)その紫炎蜉蝣の危機を彼らは知りたくなかった

 銃弾が飛び交う。

 互いに銃を持った大戦争。

 ダーリティアの兵士達は見よう見まねで銃撃を行っているため暴発したり味方に打ちこんだり、跳ねた拍子に無防備な頭に銃弾を喰らったりしていたが、武装条件が同じになれば防具が優秀なダーリティア兵の方が数が少なくとも優勢になった。


「戦車には下から攻めろ!」


「工兵出陣! 車体下に取りつき爆破してしまえ!」


 屈強な男達が戦車に向かって行く。

 砲弾が何度も飛んで来るが、被害が出ようとも戦車の下へと入り込み、爆破。

 キャタピラが吹っ飛んだ戦車が動かなくなり、あるいは衝撃で横倒しになったりでいくつもの戦車が行動不能になる。


 だが、そこへ空からの戦闘機。

 機銃による銃撃が兵士達を打ち抜いて行く。


「マズいな。アレをなんとかしないと……」


 コータの呟きに答えるように、リファインがロケットランチャーを真上に発射した。

 飛びあがって行く砲弾が通過しようとした戦闘機を撃墜する。


「ヒットだ」


「さすがです隊長!」


 負けてられないとメイリャもまた、ロケットランチャーで空を狙う。

 だが、ランチャーの衝撃で肩が外れたらしく涙目で戻って来て味方に嵌め直して貰っていた。


「勝てるか?」


「結構歩兵倒せてるはずだ。このまま押せる!」


 このままであれば、確かにダーリティアを守り切れる。

 だが、戦車の一つがリファインに砲口を向けた。

 リファインは上を狙っているため気付いていない。


「隊長ッ!」


「ッ!?」


 丁度ランチャーは発射し、無防備になった瞬間を狙い、戦車砲がリファインに放たれる。

 逃げる余裕などなかった。

 気付いたリファインの驚いた顔が砲弾に映る。


 爆散した。

 味方が呆然とそれを見る。

 リファインが、隊長が死んだ……?

 メイリャが慌てて駆け付ける。

 果たしてリファインは……


「……うぅ……私は、どうなった……?」


「ぶ、無事です。五体満足です隊長っ。でも……」


 メイリャの声に目を開く。

 身体の感覚は無かった。おそらく爆風のせいで麻痺しているのだろう。

 火傷のせいもあるかもしれない。


「身体が動かない、どうなっている?」


「ダーリティアの兵士さんが隊長を庇って、その上半身が乗ってるせいです」


「……そうか、庇われたか……メイリャ、しばらく指揮を頼む」


「隊長!?」


 それだけ告げるとリファインは身体の力を抜いて気絶する。

 衝撃を殺し切ることはできなかったようだ。

 メイリャは呻き、しかし自分がやらねばならないのだと立ち上がる。

 先程までのようにただ戦場で暴れるだけではいけなくなった。


「全隊防衛! 突出を控えリファイン隊長が戻るまで敵を食い止めて!」


「し、しかし、今防御に回っては戦線が崩壊します!」


「うぅ、どうすれば……」


「メイリャ副隊長、現状を維持しながら隊長を後ろへ! 砲弾の届かない場所に避難させましょう」


「ハイネス……そう、ね。ハイネスとローアで魔法の援護をお願い。テッテ、近づく敵から優先して!」


「はいです!」


 メイリャはリファインを抱き上げなんとか後方へと下がろうとする。

 だが銃撃激しい敵の攻撃がリファインに向かわないようにしながら下がるのは骨が折れる作業だった。


「副隊長殿、私がやります、戦場の指揮を!」


「で、ですが、私はそういうのやったことが無くて、下手な人がやるよりも指揮経験のある人が……」


「隊長から託されたのは、貴方です。しっかり気を持ってください」


 兵士長がリファインを無理矢理奪い取り、メイリャを戦場へと押し戻す。

 しかし、今まで指揮などした事の無いメイリャが出来る筈が無かった。


「て、敵軍攻勢盛り返しました!」


「あ、ど、どうしよ……」


 見る間に押され始めるダーリティア軍。

 指揮官であるリファインが居ないだけでどんどんと戦線が崩れ始める。

 これを指揮し直す力は、メイリャには無かった。


「マズいな……ヤバいのが出てきた……」


「何よアレ!?」


 気を見たのか帝国軍からは巨大戦車が現れる。戦車を二つ上下にくっつけたような体躯の二砲付き戦車だ。


「ハイネス、アレ、何とか出来るです?」


「アレをか!? 無理……いや、待てよ。周囲からの銃撃さえ止められれば大魔法でいけるかも?」


「あと周囲に敵を集められればだいぶ楽になるですよね?」


「あ、ああ。ローアさんと協力すれば。あと魔法部隊も合わせれば充分かな? 纏まった場所に居ればあの一帯を殲滅出来る。戦線は俄然優勢に傾くだろうな」


「では、行くです」


「テッテ?」


 あんなモノが火を吹けば戦線は一気に崩壊する。

 リファインが居ない以上、一度でも本陣が崩れればそこで終わりだ。

 ならば出来るだけ多くの兵士諸共に、アレを使用不能にしなければならない。

 例え、犠牲が出るのだとしても、きっと、それが一番効率的で、勝利に近づくはずだから。


 だから、少女は犠牲になる決意を固めた。

 本当ならば好きになった相手と一緒に居たかった。死にたくなんてなかった。

 けれど、他の者にはできない。誰にもこの役はできはしない。

 自分にだけ、周囲数メートルの攻撃を無効化する能力が備わっている自分だけにできること。

 敵陣に突っ込めば、その周囲で行われる攻撃は全て無効化出来る。そして敵は自然、戦車を破壊しに単独で来たテッテに集中する。

 そこに、遠距離から魔法部隊の攻撃が向かえば……


「兄さん、援護よろです!」


 自然溢れ出た涙を拭い、少女は決意と共に戦場を駆け抜ける。


「なっ!? テッテ!?」


 主戦場を走るテッテに驚くコータ。でも、彼女を無視する訳にも行かずフォローに向かう。

 テッテが敵陣深く潜り込み、銃弾を受けながら戦車に辿り着く。

 直接攻撃するように見せて遠距離の敵を撃破し始めると、一人突出して来た彼女へと兵士達が殺到する。


「ええい、チクショウ。デス・サイクロン!!」


「テッテ、生き残ってよッ。テリブルフレア!」


 魔法部隊からの連続攻撃が二段戦車の周囲へと殺到する。

 丁度多くの兵士が集まっていたせいで多くの犠牲が帝国兵にでる。

 その中心で、風によりテッテが天高く舞いあげられていた。

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