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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)その紫炎蜉蝣の働きを帝国兵は知りたくなかった

「盾隊前へ!」


「サー、イエス、サーッ!!」


 ダーリティアの大空に、気合いの入った野郎共の声が響く。

 紫炎蜉蝣リファインの凛とした声で、兵士ばかりか隊長も全員が戦場を忙しなく動く。

 もはやダーリティアの防衛隊ではなくリファインの私設部隊であった。

 彼女の命令でのみ動く兵士達、隊長すらも彼女の命令を周囲に復唱しているので自身が指示をだすことはない。

 だが、だからこそ、この国の兵士は精強であった。


 飛び交う銃弾を盾部隊が受け止め、弓矢隊が隙間から敵を狙撃。

 魔法部隊がさらに敵を駆逐する。

 本来ならばそれで終わりだった。

 だが、ダーリティアは止まらない。

 暇を持て余す歩兵はその場で投げ槍を放つ。

 数の多い歩兵が全て槍を投げるのだ。


「敵陣命中。次!」


「すげぇ……」


「ハイネス、ローア。広範囲魔法だ!」


「は、はい!」


 リファインに言われ慌てて魔法を唱えるハイネスとローア。


「行くです。とりゃとりゃとりゃぁ!!」


 テッテにはもはや指示すらいらない。

 ただただ味方本陣で敵を発見しだい拳を虚空に突き出し遠距離攻撃をすればいいだけなのだ。

 彼女の視界に入った敵兵士が何百メートルも離れた場所で拳を打たれたように踊りだす。


「トドメです!」


 回転踵落としが綺麗に決まった。

 遠くの兵士が突然倒れ、周囲の兵士が騒然としている。


「次行くです!」


「テッテはこういう時強いよなぁ。俺も頑張らないと」


「コータさんも私も近接ですからね。出番はもう少しだそうですし、気合いだけは入れておきましょう」


「はい、メイリャさん」


 メイリャに言われ気合いを入れ直すコータ。さりげなく寄って来たローアががんばれっと背中を叩き、魔法を放つ。

 飛んで行った魔法が広範囲の敵を炎に包み込んだ。

 少し遅れ、ハイネスの風魔法が別の兵士達を切り刻む。


「敵軍、報告通り戦車を投入してきました。空には戦闘機です!」


 物見兵の声にリファインは次の指示を出す。


「砲兵用意! 戦闘機はお前らで撃ち落とせ!」


「サー、イエス、サーッ!!」


「歩兵隊戦闘準備! 戦車に取りつき破壊しつくせ!!」


「サー、イエス、サーッ!!」


「さぁ、本格戦闘の開始だ……総員、鏖殺せよ!!」


「ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!」


「ひゃは、撲殺だぁぁぁぁ!!」


「うわぁ。メイリャさんが……」


 リファインの突撃を聞いた瞬間メイリャがフレイルを振るって走りだす。

 血走った眼はまさに狂人のものだった。


「行って来るよローア」


「ええ。無事に帰って来なさい」


 送り出すローアに背を向けて、コータもまた走りだす。

 目指すは敵戦車部隊。

 砲塔から放たれた一撃が歩兵達を薙ぎ散らすが、男達は空中で身体を捻り無事に着地する。

 防具の性能だろうか? 一撃食らった程度では皆死ななかったようだ。


「一般兵がバケモノに進化かぁ、リファイン隊長はっちゃけたなぁ……」


 こんな化け物部隊が各国に存在するのだ。たった数日彼女が教官しただけで変わり過ぎた兵士達に、コータは思わず同情を禁じ得ない。


「それそれそれぇ、ぶっ倒れろです」


 本陣ではテッテが一人演舞を繰り広げている。

 傍から見ると間抜け以外の何者でも無かった。


「敵兵銃撃に気を付け……メイリャどの!?」


「きゃはははははははっ」


 兵士の一人が叫ぶ。おそらく隊長とか偉い役職の人だったのだろう。

 周囲の兵士に気を付けるよう告げているところにメイリャが通過して敵陣に突っ込む。

 銃弾の嵐が吹き荒れるが、気にすることなくフレイル振るって敵を屠りだす。


「メイリャどのだけに負担させるな! 全員命を賭けて国を守れ!!」


 一斉に敵に打ちかかる兵士達、銃弾に打たれようとも気にすることなく突撃していく。

 何人かは鎧の隙間に銃弾を受けていたが、昂揚により痛みを感じていないのか、血走った眼で敵に打ちかかって行った。


「クソ、なんだこいつ等!?」


「当ってる筈なのに、死なないのか!?」


「頭を撃て! 額に打ち込めば死ぬぞ!」


「動きが速い、狙い撃ちなんてできるか!?」


 帝国兵たちもなんとか迎撃しようとするがそれより早く間合いを詰められ無力化されて行く。


「そこだ、死ね!」


「残念。俺だってただ死ぬだけのつもりは無い!」


 飛んで来た銃弾を手甲で弾き、帝国兵に剣を突きだす。

 逃げることすら念頭にないのか、心臓を一突きされた帝国兵が力尽きる。


「……消えた? 人間じゃないのかこいつら」


 倒れた兵士たちは、まるで霞みのように消え去る。

 後には兵士の装備だけが取り残された。


「これ、使えるか?」


 アサルトライフルを拾いあげたコータは何も思わず引き金を引く。

 ズダダダダ。目の前に打ちだされ、固定されていなかったアサルトライフルが暴走しながら上空へと弾丸を打ちだす。


「うわっ!? なんだこの武器!?」


 思わず尻持ちついたコータだが、その声とは裏腹にワクワク顔で銃を構える。

 敵の打ち方を真似始めたのだ。


「こうか! 行け!」


 帝国兵向けてアサルトライフルが火を噴く。

 無数の帝国兵が銃撃を受けて倒れる姿に、ダーリティア兵も敵の武器が有効だと気付いたようだ。

 率先して倒した敵から武器を奪い敵へと放つ。


「クソ! こいつら俺らの武器を!!」


「ひゃっはー撃て撃て撃て!!」


 メイリャもいつの間にか拾ったアサルトライフルを四方八方に打ちまくる。

 両手に持って乱れ打ちする姿はあまりにも悪女が板についた姿であった。


「総員前方から退避ッ!」


 リファインの声にはっとしたメイリャが飛び込むように横へと避ける。

 一瞬遅れ、メイリャの居た場所を通り過ぎる一発の砲弾。

 リファインが鹵獲したロケットランチャーから放たれた一撃が敵戦車部隊の一台を粉砕する。


「一発づつしか撃てんのか。よし、次、どんどん破壊するぞ!」


 近くの兵士に新しいロケットランチャーを渡して貰い、さらなる一撃。


「砲身が熱くなっています、連続射撃には向かないようですね」


「ええい軟弱な。次撃てばコレが壊れるか。仕方無い。まだあるだろう、次だ」


 使えなくなったロケットランチャーを投げ捨てアサルトライフルを両手に構える。


「突撃する!」


 リファインまでが前線に突入して来た。

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