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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)その全裸の魔女を兵士達は知りたくなかった

「フハハハハハ! 温い温い、温いぞ童っぱ共!!」


 骸骨男がマントを翻し叫ぶ。

 周囲を飛び交う各種属性魔法が敵軍を蹂躙していく。

 グーレイ教総本山。山頂のように高い場所に存在するこの神殿に、グーレイ教の本部が存在した。


 ここを守りに来たアルセ姫護衛騎士団は二人と十匹。

 ただし、にゃんだー探険隊は既に各所に散って探検に向かってしまった。

 ルグスとしては心配だったが、今回ばかりは彼らに構っている余裕も無い。


 何しろ現在進行形で侵略を受けているのだ。

 グーレイ教に向かう階段に陣取る二人の元へ既に敵軍が迫っている。

 グーレイ教の民間人は全て教徒であるため、グーレイ教本部に避難させたし、鎮圧部隊も神官でしかないので実質軍隊相手に闘える存在など居なかったのだ。


 だからこそ、ここはアカネとルグスの独壇場。

 命中率が上昇したルグスの的確な魔法連弾が敵軍を穿ち、全裸のアカネがその裸体を惜しげも無く晒しながら抜けて来た敵軍を消炭に代えていく。


「クソ、なんだあの露出狂女は!?」


「全裸の癖にめちゃくちゃつえぇ!?」


「というか全裸だから強いんじゃないか? アレだろ、ロリコーン亜種。ショタコンとかそんな感じの奴じゃ……ぎゃば!?」


「伍長――――っ!?」


 迫る帝国兵は階段を上っての征圧ということもあり動きが鈍い。

 高低差のある戦場なのでアカネとルグスに軍配が上がっているのだ。


「銃撃、放て!!」


 だが、敵もただ負ける気は無い。

 アカネ向けて一斉射。アカネを蜂の巣に変えていく。

 アカネはそのまま踊るように銃弾を一身に受け、倒れ……ない。

 足を踏み出し倒れそうになった身体を押しとどめた。


「馬鹿な!? 全裸で銃弾を喰らって無傷!?」


「た、隊長反撃の魔法連弾。防げませ……ぎゃあぁ!?」


「なんなんだ、なんなんだこれはっ!? あんなバケモノがいるなんて聞いてねぇぞ!?」


 彼らは気付きもしないだろう。

 アカネは今、バグっているのだ。バグっているせいで物理攻撃は彼女にとって回復魔法と同義であった。

 ルグスにしても彼にダメージを与える術は無い。


 何しろ彼は今リッチの上位、不死王なのだ。

 彼の命を封じ込めた聖句箱はアルセがどこぞに仕舞いこんでいるため、それを壊さない限り死ぬことの無いルグスもまた、銃撃を幾ら食らおうとも好きなだけ再生出来る状態だった。


 そんなほぼほぼ無敵の二人が行う攻撃は、広範囲殲滅型の魔法連弾。

 魔力については常時回復で周囲から魔素を取り込んでいるため無尽蔵。

 つまり、ここはアカネとルグスが居るだけで充分迎撃可能なのであった。


「クハハ、見るがいい。至高なる頂きの果てにある魔術というモノを!」


「お、戦車部隊と戦闘機部隊出現確認」


地獄蝿之狂雨ヘルレイン・ベルゼビュート


 空へとルグスの魔法が噴き上がる。

 小型の魔法連弾が戦闘機の群れへと突っ込んでいった。


「ではでは、地を這え! サラマンデル・ブレス」


 アカネの魔法が階段を這うように帝国軍へと襲いかかる。

 地上から迫るガス攻撃のようなその攻撃は、帝国軍に逃げる隙を与えず数千人単位の被害者を叩き出す。

 さらに転進の出来ない戦車の群れにもブレスが雪崩れ込み、内部を蒸し焼きにしていく。


「せ、戦車部隊壊滅!?」


「戦闘機部隊応答ありません!」


「ほ、歩兵部隊壊滅!!」


「クソ、二人だぞ、なぜあんな全裸女に勝てんのだ!?」


 兵士達が口々に悪態付きながらアカネを睨む。

 生き残った兵士たちはもはや少数。数百も居ない程に減ってしまっていた。


「ありえん、既に壊滅状態……たった二体だぞ? 二体の魔物に……」


「魔物じゃなーいっ!!」


 アカネの怒りの一撃が男を消し飛ばす。

 慌てて他の兵士がトランシーバーを手にして泣きそうな声で叫ぶ。

 もはやグーレイ教本部の攻略は彼らのみでは不可能だった。

 彼我の実力差が開き過ぎているのだ。


 戦闘機が次々に墜落する。

 骸骨の高笑いが聞こえる。

 全裸の魔女の叫びが聞こえる。

 ここは地獄か?


 それでも、部隊壊滅など許容できる訳が無い。とにかく援軍を呼ぶのだ。

 東部にはまだ百億もの軍団が待っている。それを使って彼らを撃破するしかない。

 本部に報告を行う。

 悔しいが出し惜しみしている訳にはいかないのだ。


「さぁ、ルグス、あそこで終わりよ」


「ふん、温いくらいだな。準備運動にもならん。これならば敵本陣への突入に参加した方がよかったか」


「まぁ、確かに私とルグスは過剰戦力だったかもしれないわね。とりあえず他の場所に救援いっちゃいましょうか」


「うむ、そうだな。それで……」


 ルグスが頷いた時だった。一匹のにゃんだー探険隊がルグスの元へと合流する。


「おお、どうした?」


「にゃー」


 にゃんだー探険隊を抱き上げ、ルグスは楽しげに尋ねるのだった。

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