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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その西大陸の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)その神の奇跡を兵士達は知りたくなかった

 ロックスメイア軍は国を守るため三方に軍を分けていた。

 ツバメの屋敷を中心にして、右と左、そして西に面した屋敷正面からまっ直ぐに伸びた大通りにある。

 アルセたちからの援軍を貰えなかったロックスメイアはツバメの指揮の元、なんとか国の防衛を行っていた。

 一応教会からアルセ神グッズだけは卸して貰えたものの、本人たちからの救援が無いためロックスメイアの士気は低い。


 正面にはツバメ率いる正規軍。

 右方面には實近率いる義勇兵。

 冒険者たちは左方面に陣取り、迫る敵と闘いを行おうとしていたのだが、いざ戦闘が始まると一方的だった。


 帝国兵は銃撃を行いながらゆっくりと前進を始め、ロックスメイア軍はアルセ神の全身盾で防御しながらその奥から矢を射るだけである。

 帝国兵にいくらかの損害こそ出たモノの、徐々に押し込まれているのは仕方の無いことだった。


「ツバメ様、このままでは盾が接敵されて……」


「くっ。このままではロックスメイアが滅びる。どうすれば……」


 迫り来る帝国兵。

 ついに先行部隊が全身盾の前までやってきた。

 ニタニタと笑いながら兵士の一人が全身盾に取りつき、隙間を開ける。


「マズいっ」


「死ぃねぇ!!」


「そこでリフレクトシールド!」


「ぎゃぁ!?」


 発砲音の瞬間、火花と共に飛びだした銃弾が反射されて銃口に引き返す。

 途端、破裂した銃器に帝国兵が悲鳴を上げた。


「がぁぁ!? 腕、俺の腕がぁ!?」


「ふぅ、間に合いました」


「あ、アナタは?」


 金色の髪を掻きあげ、ツバメの横に並んだ女。その周囲に無数の小さな妖精たちがやってくる。


「私はシアナ。妖精女王様の指示によりロックスメイアに援軍に来たわ。別方向にも援軍が来てるわよ」


「よ。妖……精?」


「アルセ姫護衛騎士団、ここには来れないんでしょ。騎士団メンバーじゃ無ければ、手伝ってもいいんでしょ」


「あ……恩に着ます」


「ふふ。じゃあ一緒に撃退しちゃいましょうか?」


 ロックスメイア大通りを守るべく、シアナとタルイス・テーグ部隊が参戦した。



 ロックスメイア左方面にも、妖精たちの援護が来ていた。

 もう少しで大盾が排除されるその刹那、ティターニア率いるエサソンたちが参戦する。

 突然の魔法連撃が始まった御蔭で帝国兵の戦線が後退した。


「おほほほほ。今回の戦で次の妖精女王が誰なのか、しっかりと見せつけてやりますわ」


「ハハハ、さすがティターニア、頑張ってくださいですハイ」


「ふふ、アルベリヒ、アナタこそ、張っちゃけ過ぎないでくださいませ」


 ハンカチで額を拭いているアルベリヒに軽口叩き、ティターニアはエサソンたちに指示を出して行くのであった。




「っと、言う訳でー。援軍、来ちゃいましたっ」


 ぽんぽん持った手を突き上げ、グラゲーズ・アンヌーンが応援を始めた。

 ロックスメイア右の街門を護衛するメンバーの元へ援軍に来たのだが、こちらの一団は他の方面と少々違うようだった。

 折角援護に来たグラゲーズ・アンヌーン率いるヴァンニク部隊はやや戸惑った様子の右方防衛部隊を見て突き上げた拳をゆっくりと下ろす。


「あれ? 援軍、来たんだよ?」


「全裸の女性が援軍と言われても……」


 ヴァンニクたちはサウナの妖精だけあって常に全裸である。

 男達は突然現れた全裸妖精たちから視線を逸らし、隊長である實近がグラゲーズ・アンヌーンに歩み寄る。


「援軍ありがたい。しかしこちらの門には敵が来ないのだ。援軍というのであれば別の門の救援に向かってほしい。我々は敵が来る可能性がまだあるのでここから動けんが、貴女たちならば可能だろう」


「え? 敵さん来ないの?」


「う、うむ。少し先から銃撃が聞こえはするのだが……」


 と、門の先に視線を向ける實近。彼らには何が起こっているかなどわかるはずも無かった。




 その少し先の場所。

 ロックスメイアの右門から少し離れた場所で、そいつはいた。


「全く、グーレイ神様とアルセ神様に帰依すればいいと告げただけで攻撃するのは感心しませんな」


「クソ、なんだこいつは!?」


「キモいんだよ銀色野郎ッ」


 右方征圧部隊の帝国兵たちが対峙していたのは、たった一人の男であった。

 アルセ神からの天罰を受け、身も心も入れ替えた神官。放浪しながら宣教を行い罪を償っていたリパルツォは、つい先日、アルセからの伝言を持って来たアルセギンに導かれ、この地を守るべくやって来たのである。

 いわば、ロックスメイアに近づけないアルセ姫護衛騎士団からの、本当の助っ人が彼であった。


 アルセだってロックスメイアを見捨てたりはしていなかったのだ。

 リパルツォは兵士たちの前に立ち、神々に帰依するよう説得にかかった。

 当然、返答は銃撃の嵐であった。


 だが、リパルツォのバグ状態には、物理反射が付いていた。

 バババババと銃撃が鳴れば、キュンキュンキュンとリパルツォの身体が銃弾を弾き返す。

 全て銃口に舞い戻り、暴発、あるいは直接脳天に反射されて息絶えるなど、リパルツォに攻撃を加えた帝国兵が悉く潰される。


「な、なんだ貴様は!」


「神の奇跡と罰を伝えし者。さぁ、愚かなる侵略者たちよ。この世にはグーレイ神、そしてアルセ神が居る事を知るがいい。我が名はリパルツォ。神々の伝道師である」


 両手を開き、天を仰ぐリパルツォ。白銀に輝く彼の身体は日差しを浴びて存分に煌めく。

 その全身に銃撃が襲いかかるが、その全てがまさに神の奇跡、彼を守るかのように、襲った相手に等しく襲いかかるのだった。

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