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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのマイネフラン周辺の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)その肩すかしを喰らっている冒険者たちを兵士達は知らない

 喧騒が聞こえる。

 遠くから銃撃の音がしている。

 他の門は既に戦闘に突入したようだ。


 冒険者天元の頂のリーダーバズラックは東門を守る一団の中に居た。

 頭を掻きながら小首を傾げる。

 他のメンバーも既に小一時間、正午を回った筈なのに来る気配の無い新日本帝国兵に戸惑いを覚えていた。


「来ねぇ……な?」


 他の門は一斉攻撃を受けていると連絡が来ているのにこちらの門は静かなモノだ。かなり遠くから銃撃は聞こえるが、帝国兵が押し寄せてくる気配は微塵もない。

 だが、他の門の援軍に向かう訳にも行かない。

 遅れてやってくるかもしれない帝国兵に相対しなければならないし、援軍が必要ならばアルセギンによる通信で何処からかの援軍要請がある筈だ。


 しかし各門問題ないようで、西門こそ破られたが今、街中で戦闘中らしい。

 自分たちが援軍に向かう必要は無く国王自ら中央軍を率いて討伐に入ったそうだ。

 南門も蔦の御蔭で防衛できているようだし、北門は散発的に敵兵士が顔を見せるが森の魔物達が攻撃しているそうで、充分守り切れているらしい。


 結果、東門を守るため、天元の頂チームはここから動くことが出来ないでいた。

 正味暇でしかない。


「あー、激戦必至なのもキツいが、これはこれでキツいなぁ」


「命あるだけマシよ」


 ナポの言葉にそりゃそうだ。と頷く。

 だが、実際問題ただ来るかどうかも分からない敵兵士を待ちぼうけするのは暇以外の何物でもない。

 しかも常に気を張っていなければならないのだ。苦痛でしかない作業であった。




 そんな東門防衛部隊が待ちぼうけしている頃、東へ少し進んだ場所で、パティアとカルエは安全な場所で互いに抱き合い成り行きを見守っていた。


「カルエさん……」


「な、なによ?」


「あの時、貴女の声が無ければ、たぶん私は死んでました……」


「そ、そんなこと……ないわ。あいつは立ち上がって貴女を守ってたわよ」


「いいえ、カルエさんの御蔭です。カルエさんは、私の命の恩人です」


 涙目で見上げるパティア。彼女よりは背の高いカルエは、見上げられた少女の潤んだ瞳にうっと唸る。ついつい面倒を見てしまいたくなる弱々しい表情に、カルエは優しくパティアを抱きしめた。


「もう、大丈夫よ。あいつら、あんたを守ってくれるから」


「……私、何も出来なかった。ここに来ても足手まといにしかなれなくて……」


 二人の側には数人のオッカケ。皆が命を賭して二人に銃弾が飛んでくるのを防いでくれている。

 だから二人は安心して見つめていられた。

 命を掛けて闘うオッカケ達の奮闘を、自分たちを守ってくれる漢たちの激闘を。


「なん、だなぁッ!!」


 ヘイオが強化ポスターを振るいアサルトライフルを切り裂く。

 メガホンを相手の耳に押し当てパティアたーんと咆哮する。

 ぼふっと全身から血を噴き出した帝国兵が倒れた。


「ひぅっ!?」


「辛いなら見なくていいのよパティア」


「い、いえ、大丈夫です。私の為に、闘ってくれてるから。せめてその雄姿を見ていたいんです」


 青い顔でパティアは告げる。

 自分を守るために全身に銃弾を受けながらも復活して立ち向かうオッカケ達を、二人はしっかと見つめていた。

 自分の脳裏に焼き付けるように、彼らを最後まで見届け応援するのだと、彼女にとって自分が出来る事を行うのだ。


 だから、ヘイオは闘えた。

 だから、オッカケ達は立ち向かえた。

 どれ程凶悪な攻撃を受けようと。


「砲撃用意! ブチ殺せ!」


 キュラキュラと音を立て、鋼鉄の箱が現れる。長い砲塔の着いたキャタピラ付きの箱だ。

 ヘイオ向けて打ち出された砲撃。

 巨大な砲塔から打ち出された一撃でヘイオの周囲が爆散する。


「やったか!」


「なん、だなぁ!!」


 爆炎を突っ切りヘイオが走る。

 服装は殆ど破れ去っていたが、気にせず彼は鋼鉄の箱へと走り寄る。


「クソッ、戦車に取りつかれた!?」


「馬鹿め! その装甲を破れる訳が……」


「パティアたんが見ていてくれる。それだけで……」


 サイリウムを抜き放つ。

 光り輝く棒が輝きを増し剣のように長く、雄々しくその姿を変えていく。


「秘剣・斬鋼!」


 サイリウムソードが真下から戦車を切り上げる。

 物凄い金属音とブゥンと謎の音が混ざり合う。


「大好きなんだなパティアたーんッ!!」


 気合い一閃、ヘイオのパティア愛の強さを証明するように、戦車は真っ二つに分かたれた。


「嘘だろ!?」


「ありえねぇ!?」


「ぜ、全員奴に集中しろ! 他のロリコーン共を復活させてるのはあいつだ! 最優先で仕留めてしまえ!」


「ふっ。僕ちんにはパティアたんが付いているんだな」


 ポケットも消し飛んでいるのに何処からともなく取り出すパンツ。

 昔、ヘイオ・ロリコーンでしか無かった時にパティアから奪った八枚のパンツの一つである。

 それを、ヘイオは迷わず顔に装着した。


「い、いやぁぁぁ!? なんで顔にっ!?」


「パティア、見ない方がいいんじゃ……」


 スキル、パティアたん装着によりヘイオの全能力が爆増する。

 脱ぎ散らかされる衣類。全裸となったヘイオの能力がさらに高まる。

 さらにパティアの危機が常時発動しているためパティアの観測者と至高の興奮が永続的に彼の力を引き上げている。

 今、ここに最強の変態仮め……幼女神の英雄が解き放たれたのである。

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