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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのマイネフラン周辺の闘いを総統閣下は知らない
1254/1818

AE(アナザー・エピソード)その南方部隊がどうなったかを兵士達は知らない

「おや? お前ら都市の中心から侵入するとか言って無かったか?」


 メライトス森林でダンジョン発掘していたチームは、地下からの奇襲が無理だと南門の部隊と合流しに来たのだ。

 しかし、既に市街に入ったと思っていた南方部隊は、未だ入口に居るマイネフラン部隊と睨み合っていた。


「そちらこそ、まだこんな場所で手こずっているのか」


 互いに嫌味を言い合い膠着する戦線を見る。

 謎の蔦が張り巡り、敵であるマイネフラン軍の防衛を行っているため銃撃戦が上手く出来ないのだ。


 こちらはほぼ平野で見通しが言いのに対し、相手は銃弾を弾く蔦に囲まれ、隠れながら遠距離攻撃でこちらを削って来ている。

 相手はあそこから出れば蜂の巣にされるので出るに出られず防衛状態、こちらの攻撃は殆ど効果なく、結果膠着状態がここに出現していた。


「このままではこちらの損耗が激しい。しかし、打つ手に困るのも現状だ」


「しかし、あの蔦ってなんだ? 俺が森に入る時にはなかったよな?」


「侵攻開始直前に出て来たんだ。敵の攻撃だろうがよくわからん」


「成る程」


 南の闘いは膠着に入った。

 そんな敵兵士たちを、少し離れた丘の上から見下ろす一団が居ることに、彼らは気付いちゃ居なかった。


 そう、アルセとその仲間たちである。

 丘の上で透明人間がペンネを抱え、成り行きを見守っている。

 側ではアルセが踊りを行っており、まるで何かの儀式をしているかのようだ。

 そんなアルセの護衛はチューチュートレインとブラック・アニス。


 アルセの側で激しく回転するチューチュートレインとアルセを見ながらロリもいいのよねぇとうっとりした顔で見つめるアニス。

 なぜじゅるりと舌舐めずりしているのか不明でならない。


 あと、そこの草原に隠れようと必死のおっさん。ペインティングなんかでお前の身体は隠れんよ。と、透明人間は悪態付きながらも皆の頑張りをただひたすらに待つ。

 アルセが南門に蔦の防壁を発動させた以外はここの面子は何もしていないのだ。


「流石にアルセに気付いた奴は居ないみたいねぇ。ここを急襲されるとマズいけど、これなら皆に指令も送れるし、相手からは分かりにくい場所だし、いい場所選んだわアルセ」


「おー!」


 不折の白ネギを両手に構えたアルセが楽しげに踊る。

 んー。なんか横から見ていると雨乞いに見えるわね。

 アニスが思わず呟く。誰かに同意された気がして振り向くが、そこには半眼のペンギン娘しか居なかった。


「たん」


「良く分からないけど、私達の出番は無いと思うわよ?」


 別に気にしてないといった表情のペンネはふと、帝国兵たちの背後に視線を向ける。



「あら? あれは?」


 アニスも気付き、アルセも踊りを終えて焦った顔をする。

 そこにはオーク村より集まった義勇兵数百名。

 ニンゲン、オークごちゃ混ぜの混成軍だ。

 どうやらマイネフランを守ろうと村からやってきたようだ。でも、今はむしろ邪魔でしかない。


「おーっ」


 敵が気付くより先にアルセが進行方向を塞ぐように蔦を張り巡らせる。


「ぶひ!?」


「おわ!? なんで蔦が!?」


「道が塞がれた!! でもなんで蔦?」


 敵の攻撃ではないと気付いた義勇軍が困った顔で周辺を探る。

 そしてアルセ達に気付いた。


「おい、アレってアルセちゃんじゃね?」


「なんでここに!? コルッカにいるんじゃないのか?」


 何人かはアルセを直接知っていたようで義勇軍の中に動揺が広がる。

 蔦とアルセを何度か見て、もしかしてこれはアルセちゃんが? と可能性に気付く。


「ど、どうする? この蔦が邪魔で敵に襲撃出来ないぞ?」


「アルセちゃんが邪魔したってことは、アルセちゃんはあいつらの仲間……?」


「アホか! マイネフランをゴブリンから守った英雄だぞ。むしろ俺らを守ったって考えた方が不思議はないだろうが!!」


 アルセが敵かと邪推した男の頭に拳骨落とし、リーダーと思しき男が指先をアルセに向ける。


「全軍転進。アルセ姫護衛騎士団に合流。彼らの意図を探るぞ」


 義勇軍が転進してアルセ達の元へと向かう。

 敵にばれないように移動する彼らが丘の上へと集まってきた。


「あら、ごきげんよう」


「ああ、よかった。話が出来るメンバーがいてくれたか」


 初めまして。とニンゲン代表の男が頭を下げる。


「私はオーク村からやってきましたバニングと申します」


「私はアニスよ。ふふ、良くこっちに来てくれたわ。あのまま進んでいたら無駄死にだったもの」


「それは……どういうことで?」


 銃の恐怖を知らなかったらしいオーク村の義勇兵。

 アニスが指差した先を見て声を失う。

 マイネフランの南門防衛が繰り返されており、飛び交う銃弾に息を飲む。


「あれが……敵の武器」


 初めて見る銃の闘いに、今更ながらぶるりと背を正す義勇兵だった。

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