AE(アナザー・エピソード)その城に向かった部隊がどうなったかを兵士達は知らない
「攻め込め攻め込めっ」
「ふはは。最強ではないか我が軍はっ」
西方侵略軍の帝国兵たちは調子に乗っていた。
部隊を二つに分け、一つは鍛冶屋方面征圧に、もう一つがここ、王城に直接乗り込む部隊である。
マイネフラン軍は銃弾の前に壊滅的打撃を受けているようで、必死に抵抗しつつも徐々に王城前へと追い込まれ始める。
「おーおー。攻め込まれてんじゃねーかマイネフラン軍」
帝国兵たちの足が止まる。
目の前に一人の男が座っていた。
まるでここから先は行かせんとでも言うように、両手を組んで、道の真ん中に胡坐を掻いて座っている。
「何だ貴様は?」
「俺か? 俺はヘンリー。勇者ヘンリーだ」
ニヘラと笑みを浮かべるヘンリーに、帝国兵は迷わず発砲した。
バンっとヘンリーの眉間に叩き込まれる銃弾。しかし。仰け反ったヘンリーはニヤニヤしながら平気そうな顔をする。
「なっ!? 銃弾の直撃を受けて平気だと」
驚く帝国兵。その間に冒険者たち義勇兵が教会と王城に別れて退避してしまう。
「チッ。一部隊でこいつを囲め。一部隊はそこの教会を征圧。他は俺に着いて来い!」
500程の部隊を三つに分け、帝国兵は王城へと向かう。
一部隊は教会へと向かい、侵入作戦を開始、そして一部隊は教会前に座り込んだヘンリーを囲み、銃口を突きつける。
四方八方を敵に囲まれ四面楚歌状態のヘンリー。しかし、彼は全く恐れを抱いては居なかった。
「撃ち殺せ!」
部隊のリーダーが号令を掛ける。
無数の銃が火を吹く。
しかし、銃弾をどれ程食らおうと、ヘンリーが死ぬことは無かった。
そしてしばらく、空撃ちが始まった瞬間、目を閉じ穿たれるままのヘンリーは、開眼するように目を開く。
「馬鹿共が、俺がただやられるだけと思うなよ? 英雄の帰還、デッドランドハーヴェスト、くたばれ屑共」
ヘンリーがスキルを発動する。バグってしまった最悪のスキルを。
英雄の帰還ことケツレーザーによりヘンリーの尻が光り輝き無数のレーザーが周囲に飛び散る。攻撃属性・回復により帝国兵たちの体力が回復した。
デッドランドハーヴェストによりエロスランドハードゲイが発動。屈強なアニキ達が無数に召喚される。ブーメランパンツのみの脂ぎったムキムキアニキたちがムンと肉体美を披露した。
くたばれ屑共により■属性魔法ア・シが発動。突然現れたアニキたちに驚き逃げ出そうとした帝国兵を取り囲むように無数の毛深い足が地面より生えて逃げ道を塞ぐ。
「気持ち悪っ!? なんだこの足!?」
「おい。止まるなっ、気持ち悪い男共が迫ってんだぞ!?」
「クソ、マガジン交換が、あ、ま、待て、止めろっ、服を脱がすなっ!? ア゛――――――――ッ!?」
地獄の宴が始まった。
一方、そんなヘンリーの周辺には気を配ることもなく、教会の扉を爆破した部隊は、扉が全く無傷なことに驚いていて背後の阿鼻叫喚に気付くことは無かった。
部隊突入をと思っていただけに、まさか扉が爆破出来ないとは思っていなかったのだ。
爆破量が足りないとかではない、全く無傷の緑色の蔦でできた扉は、どうみても爆破程度でダメージを負いそうにないのである。
だが、彼らの焦りは杞憂に終わる。
「ん? おい、開いてるぞこの扉」
「マジかよ。爆破の意味なしか!?」
普通にカギが掛かっていなかった扉を押し開く帝国兵。相手バカだろ。と笑い合いながら内部へと突入する。
銃を構え、大聖堂に部隊を展開。
アルセ神像の前で祈りを捧げる信者たちを見てニヤリとほくそ笑む。
「はは。無防備にこんな所に居やがるぜ」
「殺してくれっつってるようなもんだな」
「それじゃ、全員構え、蹂躙を開始す……」
隊長格が告げる、その刹那。神父と思しき優男が立ち上がる。
両手を開き、話し合いでもしましょう? というような姿で信者たちの前に立った。
「神への祈り中です。無粋ですよ皆さん」
「撃ち殺せッ」
「愚かな……天罰を受けなさい。神は我が手に奇跡を賜る」
帝国兵たちが銃を放つその刹那、神父ロリデッスの魔法が発動した。
マイネフラン王城には300名の帝国兵が攻め寄せた。
だが、城は跳ね橋が上がっており、侵入路は塞がれている。
「チィ、面倒な」
帝国兵たちは舌打ちしながらも掘りの中を調べたり、周囲を調べマイネフラン城への進入路を探しだす。
だが、すぐに異変は起こった。
「あー、なんかやる気なくなってきたな」
「あー、地面気持ちいい。この絶妙な冷え具合最高ー」
「なんだ? どうした!? 何をしている貴様等!?」
突然一部の兵士が銃を投げ出し座り込み始めた。
驚く隊長のすぐ側に居た帝国兵が地面に寝そべり眠りだす。
「寝るな貴様等っ」
「もう、なーんもやる気にならねぇ、たいちょー、一緒に眠ろうぜー」
やる気ない声で告げる男を蹴飛ばし次々にやる気を無くす兵士達に激を飛ばす隊長。しかし、彼もまたやる気が無くなってくるのに気付き焦る。
「こ、攻撃を受けているのか!? どこから……」
無くなってくるやる気を振るい立たせ周囲を探る隊長。その視線が跳ね橋に向いた時、その上部に寝そべる存在を目に止めた。
「貴様か!」
「くまっ」
跳ね橋の上に片肘付いて寝そべっていたのは、アクアリウスベアー。
七大罪が一人、怠惰がマイネフラン防衛に乗りだしたのであった。




