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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 そのマイネフラン周辺の闘いを総統閣下は知らない
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AE(アナザー・エピソード)その女を守る者を僕等は知らない

「キューッ!!」


 叫んだスマッシュクラッシャーたちがハンマーを投げつける。

 一度ハンマーを無くした個体はもはや攻撃手段を持たなくなってしまうが、彼らが帝国兵を撃破するにはこの攻撃が一番なのだ。

 まさに一生に一度の渾身の攻撃で帝国兵を撃破していくスマッシュクラッシャーたちに混じり、龍人形態になったプラムが突撃する。


 カッタニアが弓で援護し、プラムが突撃。

 向けられた銃口に的確に突き刺さるクナイ。

 サヤコの投げクナイが銃口に突き刺さり銃が暴発。

 手元で爆散した男の指が飛び散る。


 武器を失った男達に殺到するスマッシュクラッシャー。

 武器を無くした彼らが集団で蹴りつけ、その合間からアリアドネの槍がトドメを刺す。

 別の場所ではモーネットが符術を使い銃弾を受け止め、打ちつくしマガジン交換の隙を付いたクラリッサが突撃。自慢の斧で相手をカチ割る。


「いい状況だ!」


「スマッシュクラッシャーたち、ほれ、誰のか知らんが持ったら投げよ」


 プラムは地面に落下しているハンマーを時折拾っては近くのスマッシュクラッシャーに手渡す。

 これは自分のじゃないのですが? キューと困ったように鳴くスマッシュクラッシャーに強制じゃ。とばかりに投擲を促すプラム。

 そう告げながらも近づいた兵士に鋭い爪の一撃を叩き込み、遠くの兵士にドラゴンブレスをお見舞いする。


「一度撃って終わりにせずに、拾って次の敵に投げつけて行け!」


「キュ、キューっ」


 了解しました。とばかりに地面に落下しているハンマーを引きずり上げるスマッシュクラッシャーたち。

 一度手放したからか持ち上げるのが大変そうだ。

 急激に筋力低下でもしているのだろうかと小首を傾げたくなるプラムだったが、一匹が遠心力を味方に付けて投げ飛ばすのを見た他のスマッシュクラッシャーたちが次々に新たな敵へとハンマーを投げつけ始めた。


「カッタニア、右舷!」


「はいはいよっと。ああもう、なんか私だけ重労働なんですけどっ!?」


 唯一の弓使いは今回大忙しだった。

 木の枝から全体を見ているサヤコの指令を受け、全体のフォローを一人で行っているのだ。

 遠距離可能な唯一職なだけに酷い重労働になっていた。息つく暇すらなかった。


「キュー!」


「あ、ちょっと君、突出し過ぎ!?」


 小柄のスマッシュクラッシャーがハンマーを投げつける。

 目の前にいた兵士が直撃して死亡するが、無防備になったスマッシュクラッシャーへと別の兵士が銃口を向けた。


「危ないっ!」


 とっさだった。

 モーネットは考えるより先に走り出し、小柄なスマッシュクラッシャーを横から引っ掴み飛び退く。

 遅れ、発砲音。自身の身体を貫く衝撃にモーネットは思わず顔を顰めた。


 地面を転がりなんとか起き上がる。

 痛みを感じてそちらを見れば、左足に穴が空いていた。


「痛ぅっ」


「はは、魔物守るために名誉の負傷ってかぁ? 優しい女だなァあんた。でも、そのせいでお陀仏だ」


 ジャキリ、銃口がモーネットに向けられた。

 助けようにも他のメンバーからは遠い。

 そして彼女はリーダーだ。戦乙女の花園は彼女がいなければ瓦解する。


「モーネット!」


「……無念です。後を頼みますクラリッサ」


 叫ぶクラリッサ。しかし彼女が辿りつくより先に銃弾がモーネットを貫くだろう。

 悔しげに、モーネットは目を閉じる。

 折角あの人と婚約まで出来たのに……


 引き金が引かれ、発砲音が響く。

 無数に鳴り響く銃撃で、自分の体は愛しい人が見ても分からないくらいグシャグシャになるのだろう。

 泣きそうな思いで死を待ちうける。

 だが、鋼鉄の壁に当ったかのような無数の音が手前で響くだけ、彼女に衝撃など来なかった。


「なに……が?」


 恐る恐る目を開く。

 そこに、背中があった。

 青白い、血の通っていない男の背中。


「あ……あぁ……」


 柩を盾に銃弾を全て防ぎ、そいつは背後に視線を向けることなく立ち上がる。


「良く頑張った。モーネット」


「クーフ……さん?」


 思わず涙が滲む。

 これは今際の際に見た幻か? それとも神の奇跡だろうか?


「総員投擲開始! 侵略者共を駆逐せよ!」


 側面から鬨の声が上がった。

 遅れ飛び交無数の水晶剣。

 アルベルト率いる古代人遊撃隊が帝国兵を急襲する。


「なぁ!? バカな奇襲だと!?」


「アレは古代人!? なぜここに!?」


 もともとスマッシュクラッシャーたちの防衛戦で数を減らしていた帝国兵はこの襲撃に対応すら出来ず散々に蹴散らされ逃げ散って行った。

 敵がいなくなったのを確認し、クーフが後ろを振り向く。


「クーフさん……」


「まったく、無茶をする。無事でよかった」


 言葉少なに、しかし心からの心配が伝わる。

 だからモーネットは、クーフの胸板へと飛び込み、安堵した少女のように泣きだすのだった。

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