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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十五部 第一話 その侵略による悲しみを僕らは知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その捨てられた国を僕等は知らない

「ありゃ、誰もいねぇ?」


 ゴーラ王国に辿りついたネフティア、アキオ、ロリコーン至高帝、ハロイアの四人は、もぬけの殻となった王国へと来ていた。

 否、城にやってくると、兵士が一人だけ待っているのが見えた。

 彼もネフティア達を見て近づいてくる。


「アルセ姫護衛騎士団の方々ですね」


「おう、あんたは?」


「ギルガン王国にて近衛騎士団の団長をしております、セロンと申します」


「はー。で、あんたがなんでまたゴーラ王国に。つか誰もいねーじゃん」


「はい。ギルガン王国は属国であるゴーラ王国まで守り切るのは不可能と判断し、ゴーラ王国の国民全てをギルガン王国に保護、皆さんにはギルガン王国の守護をお願いしたいと、連絡役として私を遣わせました」


 わざわざネフティアたちに連絡するために待っていたらしい。

 城の方に来なかったらどうするつもりだったのだろうか?

 とはいえ会えたのだから彼の判断は的確だったのかもしれないが。


「ふむ。ではギルガンに向かった方がよさそうですな」


「おじ様とでしたら私はどこへでも。例え火の中水の中、地獄の底へでもご一緒いたしますわ」


「幼女に地獄など似合わんよハロイア。そのような場所に向かうと言うのならば、私は何度でも救いだすさ」


「おじ様……」


 目がハートマークになったハロイアに気付いてしまい呆れるアキオ。さっさと行こうぜ。と外に待たせておいた鳥たちに口笛で合図。即座にアキオ達の元へと四羽のマホウドリたちがやってくる。

 が、人が一人増えているのに気付き一羽が旋回してどこかへと飛翔していった。

 おそらく鳥の数を増やすために仲間の元へ向ったのだろう。

 しばらく待機していると、五羽目のペリルカーンと共に戻ってきた。


 五羽に一人づつ飛び乗りギルガン王国へ向う。

 ゴーラ王国は既に軍隊に囲まれていたが、彼らが飛び立つ鳥のことに注意して見て来ることは無く、さっさと脱出してギルガン王国へと辿り着く。

 ギルガン王国もまた、新日本帝国兵に囲まれていたが、空からやってきたネフティアたちは素通りだった。

 ギルガン王国中央広場へと降り立つと、セロンは時間を確認して息を吐く。


「どうやら襲撃までには辿りつけましたね」


「まぁな。しっかし、二国分の人民が居るはずなのに、随分と閑散としてんな」


「アルセ教教会に地下施設があることが発覚しまして、この国の地下全てが教会施設になっております」


「……は?」


「まるで今回の事を見越したかのように、アルセ神様はゴーラ王国の教会とここの教会を地下で繋ぐ巨大通路を作っておりまして。昨夜のうちにそこを通ってゴーラ王国民全てとギルガン王国民全てがここの教会の地下に……」


「いやいやいや、なんだそりゃ、凄過ぎだろ!?」


「ねぇ、それだったら向こうの教会からこっちに侵入して来るんじゃ!?」


「それが、全てのゴーラ国民がこちらに来た瞬間通路が途切れまして。まるで意思を持つかのように蔦がうねり道を塞いでしまいました。皆さんが来る前にゴーラ王国側の通路を調べましたが、完全に通り道が塞がっており地下から敵が攻め寄せることは不可能ですね」


「アルセェ……」


 ハロイアがあははと溜息を吐いて空を見上げた。

 ネフティアがなるほどと頷き周囲を見回す。


「ってことは、俺らはアルセ教教会さえ守っとけばいいっつーわけか」


「ええ。我がギルガン王国軍は前門の防衛に回っています。この国は既に前門のみに敵が集中しているのは斥候が報告して来てますので、もちろん背後も警戒はしていますが、敵は真っ向から蹂躙するつもりのようです」


「ならば、我らもそちらに向かおうか」


 至高帝の言葉を皮切りに、ネフティアとハロイアが戦場へと向かいだす。

 一人残されたアキオは隣のセロンを一瞥し、頭を掻きながらしゃーねぇ。と彼らの後を追うのだった。




 ギルメロン王国では、周囲の魔物が王国内を闊歩していた。

 トロールの群れが街中を歩き、特攻雀たちが屋根の上に止まっている。

 そんな街中に人は見当たらない。全員がアルセ教教会に避難済みだからだ。

 街中に居るのは王国兵のメンバー。リファインの魔の手が伸びた兵士たちの為かアルセ教教会前に無言で佇み号令を待っていた。


 その近くにはサザウェン率いるタリアンの群れ。その数はあまりにも多く、さらに別種の魔物達もゾクゾク集結し始めていた。

 そんな光景を見て、志願兵のハワードは隣のレミー共々息を吐く。


「まさか、タリアンたちと共同で闘うことになるなんて……」


 自分が再起不能になった原因だけに近づきたくもないハワードだが、彼らタリアン種が今回の要であることも理解はしていた。

 まだアルセ姫護衛騎士団の助っ人は来る気配は無い。

 最悪、間に合わないことも考え、サザウェンをトップとした作戦を今立案中であった。

 開戦の狼煙はもう間もなく、サザウェンもギルメロン兵も、牙を研ぎ澄ませ時間が過ぎるのを待っているのだった。

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