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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十五部 第一話 その侵略による悲しみを僕らは知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その国のクーデターを僕等は知らない

「こんな、ことが……」


 その鳥がやって来たのは、昼になる少し前のことだった。

 アルセ姫護衛騎士団リーダーリエラからの手紙を結わえたウミネッコが一羽。ジャッポンへと降り立ったのだ。

 丁度まろまろ頼朝の元に来ていたチグサとケトルは受け取ったその手紙を見て震えた。


 手紙には世界中の国が危機に瀕しているらしい。

 自分たちは大丈夫か? 心配する内容の手紙に、二人は、否、横から覗き見たまろまろ頼朝と扇動ちゃんも震えていた。


「忍っ。行くのか?」


「うわっ!? ちょ、忍者さん脅かさないでください」


「緊急事態と聞いて急いで来た。くのいちの婆さんやアルセに世話になったという男も来ている」


「そ、そうですか……」


「で、手紙にはなんと?」


「え、ええ。新日本帝国を名乗る一団が世界各国同時襲撃を行うそうです。師匠、修行中の身ではありますが、私は母国を守りに行きたいと思います」


「未熟な貴様が一人向かったところで死ぬだけだ」


「いいえ。姫一人ではありません。私も、向かいます」


「それでもだ。一人二人増えたところで大軍相手に焼け石に水であろう」


「まろまろまろ。回りくどいでまろ。我らも手伝う。そう素直に言えばいいのでまろ」


「そうだ、行けー! やれー」


「全く……だが、我が弟子の故郷の危機、手伝ってやるのも吝かではない」


 ふっと微笑む忍者にケトルが目を見開く。


「よろしいのですか?」


「うむ。それに、向こうもそのつもりのようだぞ?」


 空を見れば、エアークラフトピーサンが出迎えに来ていた。

 さっさと乗りな。その告げるように嘶きジャッポン手前に降下する。


「お雛様軍団にも声を掛けるでまろ」


「では忍者部隊は我らが受け持とう」


「どうせ街中で暇してる力自慢がいるでまろ。全員声掛けて来るでまろ。扇動ちゃんよろしくまろまろまろ」


 散って行くジャッポンの住民に、ケトルとチグサは熱い思いが込み上げ目頭が熱くなるのがわかった。


「姫……」


「偽人なのに、皆さんいい人ね」


「お嬢さん方……」


 泣きそうになったケトルの肩を優しく抱いたチグサに、背後から声が掛かる。

 誰だ? と視線を向ければ、そこにはロリコーン紳士の群れが居た。


「貴方達は?」


「私はロリコーン子爵。こちらはロリコーン男爵。ロリコーン騎士爵、ロリコーン辺境伯、以下ロリコーン紳士200余名。私以外は話すことはできませんが我々の思いは一つ。我々を救ってくださり、幼女たちを解放してくださったアルセ姫護衛騎士団の皆さんに恩を返したい。そして幼女たちも救いたい。その為に、ロリコーン紳士一同、微力ながら参戦致します」


 紳士的なお辞儀を揃って行う紳士たちの群れにうぐっと唸る。

 ここまで揃うとある種悪夢であった。




「なぜです父上!」


 フィグナート謁見の間ではジーン・エーゲ・フィグナートが叫んでいた。

 彼の目の前には玉座に座った父、フィグナート帝王が座っている。

 厳かに座る彼は目の前の息子を虫のように見下していた。


「他にやりようがあるのに、兵士を無駄に死なせるつもりですか!?」


「ふん。奴等にフィグナートの力というものを存分に見せつけてやるだけだ。全軍で全力で叩き、他のどの国よりも先にフィグナートの実力と言うモノを他国に知らしめる。それの何が悪い?」


「悪戯に兵力を疲弊させては敗北してしまいますっ。それも全軍で一気に行こうなど、全滅しかねません。相手には銃という未知の武器があるのですよ!」


「ふん。未知であろうが弓の強化武具だろう。そんなモノに恐れてなんになる」


 徹底抗戦。それだけは父も息子も肯定していた。しかし、その戦術に関しては違ったのだ。

 本来ならば聞く価値も無い息子の言葉だが、賢くなったと言われるようになった息子の言、何かしらの策でもあるのかと思えば自分の決定を否定するだけのものだったため、フィグナート王はすこぶる機嫌が悪かった。


「それとも、我が意を反するだけの策でもあるのか?」


「そ、それは……国壁を閉じ防衛に力を注いで……」


「助けもこんのに牢城か。緩慢なる死とは恐れ入る」


「ぐっ、し、しかし、全軍を敵に差し向けて敗北すればもはや援軍を期待する戦法すら取れませんっ」


「ふん。そんな戦法を取る必要などない。全軍を我が率い敵軍を蹂躙する。それだけだ」


「……やはり、こうするしか、ないのですね、父上」


「ジーン?」


「全軍決起! 私は今、この時よりフィグナート帝国を手中に収め父上を拘束する!」


 ジーンの言葉に謁見の間にどかどかと現れる無数の兵士。

 驚く大臣たちを取り押さえ、フィグナート王を拘束した。


「ジーン、貴様ッ」


「父上、申し訳ございません。罰は後にいかようにでも。今は、今はフィグナートの為、私が王位を簒奪致しますっ」


「ふざけるなッ、貴様ッ、このような事をしてどうなるか分かっているのかッ!!」


「父上と大臣たちを全てあの部屋にお連れしろ。これよりフィグナートの全指揮権を掌握するっ」


 ただ民と兵士の消費を抑えるために、祖国を守るために、ジーンはフィグナートの王位を簒奪したのだった。

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