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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十五部 第一話 その侵略による悲しみを僕らは知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)そのニンゲン兵器出陣を僕らは知らない

 トルーミング王国に、その二人は戻ってきた。

 アンディとリアッティは特使より遣わされた書類を片手にこわごわ城門を抜ける。

 兵士に案内されるままに二人は謁見の間に。そこにはやや疲れた表情のトルーミング国王が玉座に座って待っていた。


「召喚状により参上いたしましたアンディです」


「あの……本当ですか? 私達が罪に問われないというのは?」


「口を慎め。国王の御前であるぞ?」


 本来ならば罪人と言われても仕方無い二人は、宰相に窘められて押し黙る。


「アンディ、リアッティ。そなたらは本来我が息子オーギュストの護衛であった」


「「はっ」」


 頭を垂れ、国王の言葉を冷や汗混じりに聞く。

 二人とも今回の召喚状に応じるのはかなりの不安があった。

 実は二人をおびき出し処刑するための罠ではないか?

 そう思ったのも事実だ。しかし、だからとこの召喚状を無視するには国王の印が危険過ぎた。

 もしも無視した場合、トルーミング王国とは完全に敵対することになる。捕まれば死罪は確定だ。

 だが、もしもこれが本当であった場合、召喚状に書かれてある通り、新日本帝国軍との闘いに従軍すれば無罪放免になる。


「放棄し逃亡、さらにオーギュストの身を守れずあのような天罰を受けさせた罰は余りに重い」


 やはり罠だったか。二人は悔しげに呻く。


「だが。此度この国が晒されようとしている新日本帝国による脅威に立ち向かうとなれば別だ。英雄の一人とし、アルセ神の元、その罪は浄化されるだろう」


「……え?」


「昨日、神より連絡があったのは知っていよう? そなたらはただ、今までのように息子の護衛をすればいい。神の名の元敵を撃破した英雄の一人となれば、罪になど問えよう筈も無い。息子の貞操については気にするな、命だけ無事ならば今回は文句は言わん」


「あの、それはどういう……」


 顔をあげてしまったリアッティに国王はにやりと笑む。


「我が国はアルセ神の呪い、否、祝福により起死回生の能力を手に入れたオーギュストを前面に押し出す。残念ながらオーギュストは自力で移動出来ん。移動不可というスキルを持っているからな。敵のど真ん中までオーギュストを護衛し投げ入れてこい。それがお前達の任務である」


「「は、はあぁっ!?」」


 まさかの自分の息子を死地に置いて来いとの言明に、リアッティたちは驚きを露わにする。


「つい昨日のことだ。アルセギンだったか? アルセ神の使いが来た時にな、アルブロシアという実を授かったのだ。オーギュストに食わせろとジェスチャーして来たので食わせたところ、能力オヤジ狩りがオヤジ狩り狩りに変化してな。若い男だけを狙い撃ちにした魅了スキルに変化したのだ」


「……うわぁ」


「神罰が酷過ぎる……」


「ごほん。まぁ、そう言う訳で、どうも斥候の話ではこの国に展開された兵士たちは皆若い、同じ顔の男達だと言うのでな。まさにこの時の為のようではないか。不死亡のスキルによりオーギュストが死ぬことはまず無いだろうしな、任せるぞ」


「た、大役、しかと承りました」


「アンディ!?」


「リアッティ、大丈夫だ」


 リアッティに告げて、アンディは国王へと声を掛ける。


「恐れながら国王陛下。戦争終了時、私共の罪状が許される保証を頂きたく」


「面をあげよ。これがその証文となる」


 顔をあげた二人は一枚の紙を見せつけられた。

 それは今回の闘いに従軍し、見事作戦遂行の暁には二人の罪状全てを白紙にするという免罪符であった。しかも国王自らその場で印を押し、王命であることを証明してみせる。


「これは写しだ。二人とも持っておくと良い」


 宰相の従者から渡された二人はごくりと息を飲みそれを確認する。

 正真正銘の免罪符。つまり、今回の任務を遂行すれば晴れて自由の身なのである。


「リアッティ、やるぞ」


「……そうね。やるしかなさそうね」


 二人は頷き、オーギュストが軟禁された場所へと向かうのだった。



 ゲーテリア帝国国王は焦っていた。

 国を囲む兵士の数が尋常じゃ無い。

 しかも全員が銃という未知の武器を持っているのも物見兵が確認している。

 そればかりか鋼鉄で出来た馬車のようなモノが砲塔を国に向けている。

 昼までは返答を待つと告げているが、昼を越えれば確実にアレに蹂躙されてしまう。

 空は鉄の鳥が無数に飛び交っており、周囲の鳥が軒並み逃げ去ってしまった。


「なんなのだ、なんなのだこれは?」


 昨日のうちに兵士分のアルセ神グッズは国に運び込まれている。だが、これは悪夢だ。勝てる気がしない。

 こんな敵軍に打ち勝つ術が見当たらない。

 何しろ敵軍は、ゲーテリア帝国を円状に囲んでいるのだから。

 迷彩服の軍勢で大地が埋まる。そんな状況、自分が帝位を冠してから、否、建国からしても未曾有の事態であると言えた。


「まだか。アルセ姫護衛騎士団の助っ人は!」


 既にアルセ2号とリフィは去ってしまった。昨日連絡を取るために来ただけで、海洋の防衛に向かってしまったのだ。


「陛下! アルセ姫護衛騎士団を名乗る者が鳥に乗ってきました!」


「おお、来たか! それで、何人だ!?」


「は、一人であります」


「……あ゛?」


「ひ、一人で、あります」


 ビキリ、国王のこめかみに浮かんだ青筋に、報告に来た兵士は全身を震わせながら再度告げる。


「一人……だと?」


「ええ。一人よ」


 兵士がやってきた扉を開き、そいつはカレーを食べつつ現れた。


「初めましてなんとか国の王。アルセ姫護衛騎士団七大罪が一人、飽食のパイラが来た」


 ゲーテリア帝国を救うべく、パイラが単身遣わされたのだった。

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