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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十五部 第一話 その侵略による悲しみを僕らは知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その鬼神の出現を僕等は知らない

 スマッシュクラッシャーたちは焦っていた。

 無数のハンマー投げでかなりの敵兵を屠った。しかし、敵兵の数はまだまだ多い。


「キュー!」


 闘えなくなったスマッシュクラッシャーたちを下がらせ子供達を引き連れ先に逃す。

 ハンマーを投げてしまえばもう出来ることが無くなってしまうのだ。

 一撃必殺に賭けた数匹のスマッシュクラッシャーは悔しげに嘆きながら肉の壁となり仲間たちの逃走を助ける。

 リーダーは悔しげに呻くしか出来なかった。


 なんとか迎撃してやりたいが、自分が居なくなってしまえばリーダー不在のスマッシュクラッシャーなど蹂躙される未来しかないだろう。

 だからリーダーは自分も攻撃に加わりたい思いを必死に押し殺し逃げに徹する。


 だが、無理だ。敵は無慈悲に屍乗り越えやってくる。

 女性陣の中からも私が殿を務めます。と出て行ってしまったモノもいた。

 男性も残らないと種族が絶えますと、血気盛んな若者を押しのけ出て行った老婆もいた。


 居なくなっていく。

 自分たちの仲間が、次々に消えて行く。

 もう、嫌だ。なんでこんなことをして来るんだ?


 追い詰めて行く兵士たちから嘲笑が聞こえる。

 悔しい。悔しい。なのに自分には枷がある。リーダーという枷が反撃を許してくれない。

 ああ、このままでは、このままではッ。


 ヒュンッ


 風斬り音と共に兵士の一人に矢が突き立った。


「なんだっ!?」

「敵襲か!?」

「そんなバカな!?」


 兵士達が口々に叫ぶ。

 スマッシュクラッシャーたちは好機とばかりに逃げに徹し、彼らを守るようにニンゲンの女性たちが現れる。


「カッタニア、貴女がメインよ! クラリッサとアリアドネはスマッシュクラッシャーたちの逃亡を援護、サヤコとプラムはカッタニアを援護しつつ敵の排除! 私は結界を張って援護します!」


 モーネット・スパルタクス率いる戦乙女の花園が援軍にやって来たのだ。


「ふふふ、久々の絶望的闘いじゃな! モーネットよ、我が力全力解放するが、よいな!」


「お願いプラム!」


「ドラゴニュート形態は久しぶりじゃからな。猛って来るわ!」


「では、私も全力で。忍法多重影分身ッ」


 プラムの身体が赤銅色へと変化していく。

 サヤコも忍術を唱え無数に分かれだした。

 モーネットが結界を張る。遅れて一斉射。無数の銃撃が結界に阻まれた。


「なんだありゃ!?」

「現代武器じゃ傷付かないんじゃねーのか!?」

「魔力が無くなるまで撃ち続けりゃいいんだよ!」


 兵士達は結界があったとしても気にせず連撃を放ちまくる。

 カッタニアの矢が、プラムのドラゴンブレスが、サヤコの分身体が敵兵士を狩って行く。

 これを見たスマッシュクラッシャーたちも立ち止まり、彼らに交じって兵士駆逐に乗り出すのだった。




「止め!」


 隊長の言葉により銃撃が止まる。

 もう、立ち上がろうとするオークは存在しなかった。

 無数のオークたちが積み重なるその場をしばし見つめる。


「凄い一団でしたね。でも銃撃無双楽勝?」


「ふん。この人数だぞ、オーク何するモノぞ」


 ふふん。と胸を張る隊長。同じ顔の兵士たちが数の勝利だ。と鬨の声をあげようとした時だった。

 ゆらり、そいつは時を止めるように立ち上がる。

 兵士たちはなぜか皆、言葉を止めてそれを見つめていた。


 エルフの女が立ち上がる。

 その顔は絶望に彩られ、瞳は何も見つめていなかった。

 何が起こったのか理解できない。そんな顔。

 しかし、その女の纏う雰囲気が、彼らの動きを完全に止めていた。


 まるで嵐の前の静けさのように、兵士全てが息を飲む。

 はっと、隊長が気付いた。

 完全に呑まれていた。何か良く分からないがこのままではマズい。

 咄嗟に手を振りあげる。


「ぜ、全軍……」


 手を振り下ろすその瞬間、女の目がギンッと彼を見た。


「撃て! 撃て撃て撃てぇぇぇぇッ!!」


 恐怖に鷲掴みされたように隊長が叫ぶ。

 兵士達がハッと思い出したように我に返り、銃口をエルフに向けた。

 ……いなかった。


「え? 今、エルフ……」


「撃てッ、なんでもいいか撃ち殺せぇッ!! 撃ち……」


 狂ったように叫ぶ隊長。

 慌てて引き金を引こうとした兵士の横を風が通り過ぎた。


 ブチリ


 目を見開く。その視界の片隅で、先程まで叫んでいた隊長の姿が消えていた。


「た、隊長……」


 恐る恐る振り返る。

 首の無い胴体がぐらりと傾いだ。


「隊……長?」


 兵士たちの中心に、エルフが居た。

 飛び散った血飛沫を全身に浴び、般若も裸足で逃げ出す嫉妬に歪み、手にはヘルメットの角。そのヘルメットにはまだ首が付いていて…… 


「あ、あ、わああああああああああああっ!!?」


「撃て、撃てぇぇぇぇっ!!」


「憎い、憎イ、ニクイニクイニクイオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!」


 七大罪、嫉妬の女帝が覚醒した――

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