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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十五部 第一話 その侵略による悲しみを僕らは知りたくなかった
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AE(アナザー・エピソード)その開戦の狼煙を僕等は知りたくなかった

「おるぁ」


 その泉では、ポンパドール頭の男達がう○こ座りで屯っていた。

 やる気なさそうに座りながらもオルァ、オルァと時折鳴き声を発し、あるいは水浴びの為に突然泉に飛び込み、すぐさま上がって来てぶるぶるっと身体を震わせてみたり、別の男と拳を打ちつけあったりしている。


 偽人、ツッパリ達の憩いの場。

 森林に囲まれた泉というなの理想郷。

 無数のツッパリたちがひしめく千年王国。


 そんな場所に屯っていたツッパリの一人が、んぁ? と思わず空を見上げた。

 木々の途切れから空が見える。

 そこを、何かが通過した。


 漆黒の鳥。否、鋼鉄でできた鳥のような何かだ。

 そこから、無数の何かが落下して来る。

 空の途中でぼわっとキノコの笠みたいな形状の何かを展開しながら、ゆっくりと降下して来る。


「オルァ?」


 なんだありゃ?

 そう、思っていた。

 危機感など抱くはずも無かった。




 ツッパリの総長、辰真は本日も平原の見回りを行っていた。巨大ロードローラーに黒妖号改を乗せて、番長の殆ど全員を引き連れバイクで移動していた時だった。

 空を轟音響かせ無数の鉄の鳥が通過していった。

 なんだ? と空を見上げた瞬間、自身の本能が告げる。

 何か分からんが、アレはヤバい。


「オルァ!」


 全員警戒態勢!

 叫ぶ辰真に異変を察した番長達が辰真を中心にして集まる。

 辰真は焦りを見せていた。

 自分たちは戦力があるからまだいい。だが、森はマズい。


 空から落下するモノたちは森の中へも入っている。

 急いで泉に戻らないと、マズい。

 あそこにはリーダーとして番長一人を置いてるだけなのだ。


 それだけじゃない。自分たちツッパリだけじゃないのだ。レディースたちのシマもあるし、スマッシュクラッシャーたちのシマもある。そして、オークマザーのシマも……ある。

 なによりその先にあるのはセルヴァティア王国。


「オルァ!!」


 全員撤退、泉に戻れ!

 叫ぶ辰真だが、遅かった。

 平原に、そいつらは数十、数百と落下して来る。


 迷彩服にヘルメット。ジャケットには六つほどの手榴弾。

 顔にはペインティングをしており、顔は全て同じ人間の群れ。

 手には黒光りする魔銃のような形状の武具。


「オルァ!!」


 総員、突撃!

 話し合いが通じる相手だとは思わなかった。

 見敵必殺、先手必勝。辰真は即座に指示を飛ばし、部下の番長たちが突撃する。

 そんな彼ら向け、兵士たちは黒き砲口を構える。


「遭遇戦開始! 放て!」


 角の生えたヘルメットを被った男が告げた瞬間だった。

 無数の銃弾が辰真達へと襲いかかる。

 乾いた発砲音が無数に響く。

 突撃銃を遠慮なく撃ち放つ男達に、番長達が撃ち抜かれて行く。


「オルァ!?」


 目の前で倒れて行く仲間たち。辰真はかつて無い絶望にただただ呆然とするしかできなかった。




 森の中、ぶひぶひと鼻息が鳴り響く。

 無数の子豚たちが一人のエルフを中心にして楽しげに行軍していた。

 今日は皆でピクニック。

 母親であるエルフもにこやかな笑みを浮かべて我が子たちと行う森の散策を楽しんでいた。


 そこへ、奴らは現れた。

 突然足音が響き渡り、数百を越える兵士たちが森を駆け抜ける。

 子オークたちが異変に気づきブヒ? と視線を向けた瞬間だった。


「放て!」


 部隊長はあげていた手を振り下ろす。

 無数の銃声が唸りをあげた。

 オークたちの悲鳴が上がる。

 驚くエルフの女性にも、銃口は向けられていた。


 それに気付いたオークたちの動きはまるで初めからそう動くように決まっていたかのように、エルフを押し倒し、自分たちが固まることで彼女を銃撃から守っていく。

 無数の悲鳴が轟いた。しかし銃撃が鳴り止むことはない。

 数匹のオークが立ち上がり反撃に出ようとするが、良い的にしか成らずに四散した。




 スマッシュクラッシャーたちはすぐにその異変に気付いた。

 きゅーきゅーと皆に異変を知らせ、女子供を安全な場所に隠そうとする。

 しかし、安全な場所はどこだろうか? 結果、村の中央に彼らが集まることになった。

 迫り来た兵士達に、闘えるモノが向かって行く。

 しかし即座に蜂の巣にされていった。




 泉に屯っていたツッパリ達もようやく異変に気付く。

 レディースたちがスケバンに引き連れられて合流し、セルヴァティアに逃げようということになった。

 しかし、その時にはもう泉は包囲されており、下っ端たちが泉に飛び込み震える始末。

 辰真の留守を任された番長は絶望的な状況に焦っていた。

 自分がなんとか辰真が来るまで持たせねばならない。しかし、自分にはそんな力はない。

 どうすれば? どうすればいい、この絶望を乗り切るには?

 焦る番長に向け、兵士たちの無慈悲な銃口が向けられた。


「放て!」


「お。お、オルァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 指揮官の指令で銃声が鳴り響く。

 もう、逃げ場などなく迷っている時間も無かった。

 だから、だから彼は……

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