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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十五部 第一話 その侵略による悲しみを僕らは知りたくなかった
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その繋がる国々を敵は知らない

 ―― グレイシア世界全ての住民に告げる ――


 その言葉は、突然降ってきた。

 アメリス邸でくつろいでいたアルセはぴくんっと反応し、空を見上げる。

 すぐに踊りを止めると、未だに鳴り響く脳内音声を放置して庭へと歩み出た。


 ―― 我が名はグーレイ。神である ――


 アルセがせっせと種を蒔く。空を見上げキャッキャと笑いながら、準備出来てるよーっとグーレイさんへと教えてあげる。

 その周辺で、もこもこっと出現するアルセギンの群れ。


 ―― 異世界の女神より勇者たちがこの世界に遣わされた。彼らには神殺しの権能が与えられており、私では手が出せない。こんなことを我が子らに告げるのは心苦しい。だが、グレイシア世界の者たちよ、心して聞いてくれ ――


 ぴゅいっと羽笛を吹いてエアークラフトピーサンを呼ぶと、ウミネッコ、マホウドリ、ペリルカーン、空軍カモメにアルセギンを一人一人乗せていく。


「おっ」


 アルセの一言で四方八方へと飛び立っていく鳥たち。


 ―― 女神の勇者たちはこの世界を破壊するために遣わされた。既に東大陸は壊滅。この世界の半分は破壊されてしまった後だ。西大陸に生きし我が愛する子らよ、手を取り合い、彼らを打ち倒してほしい。神の身でありながら手伝うことも出来ず皆に託さざるをえない我が不甲斐なさを許してほしい ――


 最後に残ったアルセギンと仲良く手を繋ぎ、アルセは部屋へと戻る。

 庭から部屋に上がる際、置かれていたタオルで足を拭き拭きするのを忘れない。

 土塗れの足で家に上がるとアメリスやメイドたちに怒られるからだ。アルセはお行儀がいいのである。


 そのまま上がろうとするアルセギンの足元も拭いてやり、お姉さんぶりを発揮したアルセは、笑顔で室内にやってくると、おっと告げて注目を集める。


 ―― 女神の勇者は八人。増殖、知識創造、鋼鉄、融合、料理、錬成、飛行、操船の権能を与えられた勇者たちである。頼む我が子らよ、彼らを皆の手で撃破してほしいっ ――


「あれ? 融合の勇者ってなんか聞いたことあるような?」


「ユイアがアホ毛化した要因じゃないのか?」


「あ! あいつか!?」


 ユイアとバルスの会話を待つかのようにテーブルへとよじ登ったアルセギンが、会話終了と同時ににょきり、頭上のタマネギからネギが出現し、そのまま開花。トランペットのような形状の花を咲かせる。


「ちょっとアルセ、アルセギンそんなところに昇らせないでくれないか? 破裂されたら……」


『おお、なんか声が聞こえると思ったら、もしかしてアメリスか?』


「なっ!?」


 アルセギンの花から誰かの声が聞こえた。

 驚く皆に、そいつは告げる。


『なんつーか便利だな。長距離連絡スキル覚えたのかアルセ』


『そんなどうでもいい事言ってる場合ではありません。ルルリカです皆さん、先程のグーレイ神の声聞きましたか!?』


「え? ルルリカ……じゃあさっきのってカインさんの声!?」


『リエラ。驚いてるところ悪いが緊急事態らしいからな。どうやらアルセが遠距離で会議するためにアルセギンを各国に送ったみたいだ。ついさっき来たばっかだから推測だがな』


『おお、本当に声が聞こえますね。どうやらハリッテ王の推測通りですな。皆さん聞こえてますか、ドドスコイの唯野です』


「唯野さんの声まで聞こえ出した!?」


『おお、アルセ神様、このような奇跡まで! こちらダリア連邦ステファンにございます! 神からの救援にアルセ神様が各国の声を集めて会議するのですな!』


 なんだかよく分かっていないリエラ達は、どんどん聞こえ出すいくつもの声に驚きを隠せないでいる。

 いち早く我に返ったアカネがアルセギンに近寄る。


「とりあえず、何処の国の誰が居るのか教えてもらえますか。誰かリストにして」


「では私が!」


 クルルカが慌ててメモ帳を取り出し筆記を始める。


『こちらマイネフラン王国だ。リリルカ、悪いがこちらもリスト作成を頼む』


『言われなくともやってます』


『こちらはセルヴァティア王国アルベルトである。今バズたちにも連絡しているからもう少ししたら全員揃うだろう。辰真やスマッシュクラッシャーのリーダーも呼んでおく』


『こちらはコルッカ冒険者学校です。まさかここにも連絡が来るとは思いませんでした。あ、一応学園を代表して私、ボナンザ・デカメロンが対応してます。葛餅先生、すみませんがリスト作成お願いしますね』


『こちらエルフ村、ランツェルという。グーレイ神の連絡を受けて妖精郷に退避準備中だ。一応会話に参加させて貰う』


『はいはいそのエルフたちの保護先である妖精郷のロッテアです。ちょっとアルセさん、アルセギンだっけ、設置しに来てくれるのは良いけどここ妖精郷! 結界無視して突っ込んで来ないでくださる? 妖精郷の面子が丸潰れなんですけど』


『あら、ロッテア、貴女の妖精郷にも面子はあったのねぇ。こちらユグドラシル下の妖精郷。メイブというわ。でも面倒だから対応はエイケン・ドラム、お願いね?』


『え? 私!?』


『うわわっ!? クイーン・メイブ様!? ちょ、え? 繋がってるんですかこれ!?』


 すでに会議以前に大混乱の様相が醸し出されていた。

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