プロローグ・その誰かの決意を誰も知らない
脳内OPは『君のために僕は…』
EDは『この指とまれ!』ですかね。
最後は丘の上の大樹の木蔭でピアノを弾くリエラとこの指止まれしているアルセを囲んで皆が歌を歌って、それを遠くから狙った兵士が引き金を引く瞬間後頭部から主人公の一撃。
アルセたちを遠くから見つめる主人公の背中と倒れた兵士の銃に止まる青い鳥の光景が脳内に流れてます。
気が付けば、屋上に居た。
涙して、空を見上げた。
もはや自分には何も無かった。
学校では、一人だった。
イジメが始まり、机に落書きがあり、椅子を濡れた雑巾が占領した。
掃除用具入れに閉じ込められたこともあった。
なんで生きてるの? そんなことを言われたこともあった。
家では、孤独だった。
父は言った。こいつは、本当に俺の子か?
母は言った。してないっ。私はっ、不倫なんてしてないからっ。
けれど父は出て行った。
母が日に日に壊れて行くのを見ていた。
なぜ、生まれて来たの?
なぜ、あの人の子じゃなかったの?
あんたなんか、生まれて来なければ……
世界は、彼を拒絶した。
生まれた事を間違ったことだと。誰も彼もが告げて来た。
だから、彼は終わらせることにしたのだ。
自分は生まれる世界を間違えた。
この世界は僕の世界じゃなかった。
後から知った取り違え、赤ん坊の頃自分が違う家族に引き取られたことを今更教えられても困る。
既に家族は壊れてしまった。
母は泣きながら今日も何かを破壊している。家はテーブルやテレビの残骸だらけだ。
終わろう。
もう、自分はこの世界から居なくなろう。
だから……だからお願いします神様。どうか生まれ変わったら……僕を受け入れてくれる世界に……
そして彼は……飛んだ。
……
…………
……………………
ぐしゃり、聞こえたはずだった。
終わった。そう思っていた。
でも、気が付けばそこは森の中。
周囲には誰もいない、ただ何処からか鳥の声が聞こえてくるくらい。
恐くなった。自分は何処に居るのか分からなくて。
恐ろしくなった。自分は何者か分からなくて。
記憶が混雑している。なぜ自分がここにいるのか、どうやって自分がここに来たのか、否、自分が何者だったかすらも分からなくて、不安で、不安で、だから……
目の前に、少女が居た。
三人組に殺されそうになっていた少女。
良くは分からなかった、それでも本能に任せるままに彼女を救った。
それはきっと日本人の習性みたいなもので、困ってる人を助けたい。その程度の感情だっただろう。
だけど、彼は思う、彼女を助けられて本当に良かったと。彼女との冒険は、今までの人生で一番素敵な時間だったと。
だから……もしも、僕がいなくなったとしても……君は幸せに……
少女には知恵が無かった。
少女には何も無かった。
彼女にとって、全ての事象が煌めきに溢れていて、よくわからない恐怖すべきモノであった。
その日も、好奇心で動く生物に寄って行った。
生物はニンゲンと呼ばれる三人組だった。
彼女は理解できなかったが、剣を槍を向けられた時、ああ、この人たちは危険な存在なのだ。それだけを察して恐怖に怯えた。
そんな彼女を、そいつは救ったのだ。
初めは、よく分かっていなかった。
ただ、目に見えないのにそこに居る。そんな生物が面白くて、一緒に付いて行った。
そうしたらいつの間にか別のニンゲンと出会い、なぜか彼らと行動することになった。
そこからの日々は本当に、素敵な日々だった。
恐い目にもあったし、痛い思いもした。
それでも知恵を手に入れて、学習することを覚え。そして知った。
知って……しまった。
遥か未来に絶望が来る。
彼が、自分を助けてくれた存在が居なくなる未来がやってくる。
知り合った人たちが嘆き悲しむ時期が来る。
そんな予言を告げられた。
だから、彼女は行動した。
知識が足りないならば知識を、力が足りないならば力を。
示された場所に向かい、仲間を集め、様々な出会いを経て力を手に入れた。
そう、全てはたった一人の為だけに。
絶望はもう、直ぐそこまで来ている。
やれる準備は整えた。
心強い仲間もできた。
奥の手だって考えた。
万全だ。もはや負ける気はしない。
なのに不安は拭えない。
あの人を守りたい。助けてくれた恩を返したい。
皆との幸せな日々をもっと、もっと……
僕の人生はきっと君の幸せを守るために。
私の人生はきっと貴方の不幸を救うために。
名も知らぬ誰かの為に、彼女は神になる……
だからきっと、これは誰かの為の英雄譚。
名も知らぬ誰かの為に神になった少女の話。




