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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人の子供がどんな姿になるのかを僕らは知らない
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SS・その魔物のクシャミを彼らは知りたくなかった

 バズラック・チャイコビッチを御存知だろうか?

 そう天元の頂というクランを率いる長である。

 彼のパーティーは今、マイネフラン聖樹の森でアローシザーズ狩りを行っている最中であった。


 パーティーメンバーは巨大な大剣を操る筋肉男、バズラックを筆頭に、盾役の巨漢、エンリッヒ・エンデンベルグ、アタッカーのオルタ・ピグマリオ、魔法使いにして副リーダー、他のメンバーからはお局様と言われる10代後半の少女ナポ・リティアン、斥候役のベロニカ・ピグマリオ。そして今回のみ手伝いに来てくれた助っ人のアルセ姫護衛騎士団のバズ・エル・ぱにゃぱ。


 同じバズと呼ばれていることから飲み友達となったバズが今回は手伝いに来てくれたのだ。

 もともともう一人パーティーが居たのだが、王族侮辱罪で地下牢に入れられてしまったのでパーティーの穴を埋めるため、よくセレディというオーク冒険者に手伝って貰っていたのだが、今回はエンリカが外出の為に子守りを任されたそうで、手が空いていたバズが手伝いに来てくれたのである。


「いやー、悪りぃなバズ、アローシザーズ程度相手なのにお前に出張って貰って」


「ブヒ」


「へっ。嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか」


 居酒屋で良く飲む間柄のせいか、バズラックはバズのオーク語をなぜか理解出来るようになっていた。といってもバズ以外のオークが相手では全く分からないのだが。


「それにしてもアローシザーズの牙って結構需要あるのねー」


「毎回取って来ても次の日には依頼に出てるもんな」


「たぶん、必要としてる貴族か誰かが依頼だしてる」


「魔術の触媒かしらね? まぁ私達には関係の無いことだわ。ほら、そろそろアローシザーズが居る場所よ」


 アローシザーズは牙の鋭い虎やチーターの亜種である。鋭い咆哮で周囲から魔物を呼び寄せることから魔物の哨戒役と言われている。


「いるな」


「他の魔物も居るわね。アレは……アルセイデス?」


「鼻水垂らしながら笑って踊ってるぞ?」


「アルセイデスの恋が蔓延してるからでしょ、ほら、オルタ凄いことになってるじゃない」


「放っといてくれ。とりあえずくしゃみしねぇよう気を付けてんだ。ずびずび音くらい許せ」


「声変わってるよ兄さん」


「お前は大丈夫なのかよ?」


「来る前にアルセ教教会で状態異常回復して貰ったもの」


「くそ、ずっこい……」


「アルセイデスは放置、でいいわよね?」


「ぶひ」


「了解っ」


「一気呵成に行くぜ。天元の頂、出撃!」


 天元の頂が一斉に動き出す。

 驚くアローシザーズ。

 そこへバズラックとバズのダイレクトアタック。


「おおっ!?」


 驚き踊りを止めるアルセイデス。

 その目の前で、アローシザーズが狩られて行く。


「ぶぇっくしょんっ」


「きゃぁ!? オルタ汚いっ!」


「うぇ、すまん、やっぱ俺は戦線突入無理っす」


「バズさんが居るから大丈夫だろ。俺もタンク役必要ないみたいだしな」


 バズとバズラックだけでアローシザーズを圧倒していく。

 途中、アローシザーズの咆哮があったものの、援軍が来る前に撃破完了したのであった。


「ふぅ、バズがいりゃ楽勝だな」


「ぶひ」


「謙遜するな。いい闘いだったぜ」


「よし、牙ゲット。でも気を付けて、援軍がそろそろ来る筈よっ!」


 ナポの言葉通り、がさりと揺れた木々の隙間から、そいつはひょっこり現れた。


「すびずばぁ……」


 アルセイデスの恋で花粉症を患ったアルルーナが現れた。


「うわぁ……」


「ぶひぁ?」


「ふぁ、ふぁ、ぶぇっくしょいちくしょう、べらんめぇ」


 出現と同時にくしゃみするアルルーナ。妙におじさん臭い言葉が吐き出され、天元の頂チームは完全に硬直した。

 オルタの鼻をすする音だけがしばし響く。


「おー?」


 恥ずかしげに眼を伏せるアルルーナと何今の? と興味津津寄ってくるアルセイデス。

 バズラックたちは互いに顔を見合わせ、今のを見なかったことにした。


「よし、アローシザーズの牙は手に入れたし、さっさと帰るか」


「そ、そうね。花粉も結構飛んでるみたいだし、早めに帰宅しましょう」


「オルタもそろそろ限界だろう。今日はこのまま解散だな。家で大人しくするとしよう」


「おおおっ!?」


 え、あの、ちょっと、待って。

 そんな様子のアルルーナを放置して、天元の頂チームは踵を返し、アルルーナを無視して街へと戻って行くのだった。

 アルルーナのクシャミ。その事実はあまりにも受け入れがたい現実だったようで、彼らが他所へその話を漏らすことは一生無く、このたびの戦果もただアローシザーズを討伐出来たのみ。

 その一点のみでアルセイデスやアルルーナに出会った事実は彼らの記憶からひっそりと消されるのであった。


 ただ、バズだけは、アルセが成長したらくしゃみはあんな感じになってしまうのだろうかと、謎の心配をするようになったという。

没になったSS

俺の尻で泣けVS浣腸艦長:いろいろ見苦しい闘いになりそうだったので。

七大罪の日常:色欲がいろんな意味でアウトだったので。

七美徳の日常:こっちやったら大罪の方もやらないと不自然なので。


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