SS・そのピロートーク? を彼女は知りたくなかった
アタ○ンテオルタが当らんってということでむしゃくしゃして書いた。
後悔はしている。
なぜ、私はこんな状況にいるのだろうか?
何度目になるだろう? 彼女はそんなことを思っていた。
いや、分かっているのだ。
自分が押し流されたのが悪い。
彼女は今、全裸であった。
全裸で自身のベッドに横になり、シーツを掛けている。
隣には荒い息を吐きながらもどこか幸せそうな女が一人。彼女も全裸でベッドインしていた。
両手を後頭部に回し枕代わりにして、天井を見上げる。
彼女、アメリスは自分が陥っている境遇に付いてぼんやりと考えていた。
自分は何処で、何を間違ってしまったのか……
隣を見る。
全裸のミルクティの背中が呼吸と共に上下している。
なんならここでタバコの一つでもくゆらせてみたいところであるが、自分はそんなもの一度も使った事がないので以後もやる気は無い。
「ねぇ、アメリス……」
「……なんだ?」
「何、考えてるの?」
「この先、どうしたものか。とな。このような関係を続ける訳にはいかんだろう?」
「いいじゃない。別に……私じゃ駄目なの?」
「駄目というか、父からは子を作れと言われているからな。男と結婚することは決まっているのさ。そこに、お前を入れる訳にはいかんだろう?」
「私は、アメリスと一緒ならそいつの子を孕んでもいいわよ。でも、私の心は……」
「違うのさミルクティ。お前の身体が他人に抱かれるのは嫌だと言っている」
「あ、アメリス……」
がばり、起き上がったミルクティが頬を染めた。
「いいの? その言葉、信じていいの?」
「ここまでお前の人生を変えてしまったのだ。責任くらいは……取らねばな?」
ふっと微笑むアメリスに、感涙極まったミルクティは抱きついた。
嬉しさに涙が溢れ止まらなくなる。
「嬉しいっ。ようやく、ようやく実るのね私の恋ッ」
「いろいろ間違っている恋だがな。こうなってしまっては仕方あるまい。全く、人生とは分からんものだ」
溜息と共にやれやれだと呟くアメリス。
「あ、あのね。アメリス、だったら、だったらなんだけど……結婚式、とか、したい」
「結婚式? まさか、私とお前でか?」
「新郎アメリスで」
思わずひくりとアメリスの顔がひくついた。
「し、新郎……女、なのだが?」
「私新婦がいい。お嫁さんでアメリスに嫁ぐ」
「いや、だから私も女で……はぁ。ほんとお前は強引だな」
がしがしと乱暴に頭を掻き、深みに嵌っていく自分に溜息を吐く。
そしてアメリスは覚悟を決めた。
「全く、我儘娘に関わってしまったモノだ。いいだろう、こうなったらとことんやってやろうじゃないか」
「い、いいのアメリス!?」
「そうだな。番いの男についても考えはあるし、父を説得する術もいくつかある。フッ、出来てしまう自分が恐ろしいな。結婚式。身内だけならば何とか出来るだろう。ここで上げるか、いや、皆が帰って来た後相談するか」
「えへへ。やった。ますます好きになっちゃうわアメリス」
「はぁ、女に好かれても困るのだがな……それで、ミルクティ、私が嫁ぐ相手なのだが、カイン王と透明人間君とどっちがいいと思う?」
「へ? カイン王は分かるけど、透明人間? 誰それ?」
「ああ、君は気付いてなかったか。私をこんな性格にしてくれた奴さ。せっかくだから責任取って貰おうかと思ってね。リエラやルクルがお気に入りの奴なのだが、……姿は見えんが初期メンバーの一人だぞ」
「えええっ!? 今までそんなの居るとか知らなかったんですけどっ!? マジで居たの!?」
「アカネがよくエロバグと叫んでいただろう」
「ああ、突然虚空向けて全裸になりながら魔法撃ってた時ね。あそこに居たんだ」
「なんだかんだでメンバーを影ながら救っていた奴だ。アルセの周囲を観察していれば存在はすぐに気付けるぞ。で、どっちがいいと思う?」
「んー。カイン王はあんまし接点ないし、エロバグ? もまだ気付いたばっかりだしどっちかと言われても……」
「だろうな。私も決めかねる。だが、他の男に嫁ぐのはちょっと、な」
「この前仲間になってたアンサーさんとか今家に残ってるギリアムさんとかは?」
「アンサーは国を追い出された身だ。父を説得することは無理だろう。ギリアムやセキトリは実家と遠過ぎる。父が絶対に反対する。あの父だ、自分が行き来出来る場所の王族か高位貴族に嫁がせるつもり満々だろう。となると、私の知り合いで王族で身近となるとカイン王が一番だ。流石にアルベルト王は私が嫌だしな」
「な、成る程……」
貴族に嫁ぐのもいいがどうせなら知り合いの方が自分の性格を知っている分気安い。
「じゃあエロバグ? が候補に入ってるのは?」
「男不明でお前との間に子が出来たと言い張れる。父親を探す魔法もあるのだが、絶対に見つかることは無いからな」
「おお、まさに神の奇跡で授かった子供!」
「そう、神の奇跡となれば父も納得するしかあるまい。そうなれば他の男に嫁ぐ意味は無くなる。何しろ神の妻だからな。そこは上手く言いくるめればいいのさ」
「じゃあ、じゃあ、私、本当にアメリスのお嫁さんになれるのねっ」
「全く、とんだ子猫に好かれたモノだ」
くいとミルクティの顎をあげる。「あっ」と期待に満ちたミルクティが目を閉じ、二人の唇が重な……
「アメリス帰ったわよーっ」
そんな部屋に、アカネが無遠慮に入ってきた。
「……」
「……」
「……」
「……失礼しました」
「待てッ、ちょっと待てぇっ!!」
刹那に止まった時間の中で、能面になったアカネがすっと部屋から出て行く。
慌ててベッドから飛びだしたアメリスが鬼の形相でアカネを追って行くのだった。




