その全裸たちの宴を僕らは知りたくなかった
メイブさんからペンネたんひっぱがすのが一番苦労しました。
待って、行かないで。お願い、お願いだからぁぁぁ。
とか、女王の威厳かなぐり捨ててへっぴりごしで匍匐前進状態から片手を伸ばし滝のような涙ながしながら空飛ぶペンネたんにかむばぁっくぺんぺ――――んっ。とか叫んでいた。
そんな彼女からペンネたんを奪い去り、なんとか皆とユグドラシルへと向かった。
「メイブさん、凄いペンネちゃん気に入ってましたね」
「ペンネ置いてった方がよかったんじゃないのエロバグー」
ふざけんな全裸卿。ペンネたんを置いてくなどできるか。裸にひんむいてユグドラシルから吊るしあげるぞ露出狂め!
「あぁん?」
ひぃっ!? すんませんっした!?
「ど、どうしましたアカネさん?」
「いえ、エロバグがなんかイラッと来て」
おかしい、言葉は伝わらない筈なのに何を感じ取ったんだこの女。これが、バグキラー!?
「おーい」
「ん? なんだ?」
その声に一番最初に反応したのはジョナサンだった。
彼が脇道に逸れたことで僕らも気付いてそちらに向かう。
声を掛けて来ているのは女性型の妖精だった。
「何か用か?」
「人間達って貴女達でしょ。妖精郷来たからにはぜひぜひ寄ってってよー。夢と熱気の楽園、我らがバーニャに!」
と、ご紹介されたのは一軒の家、というか小屋というか……あ、違うぞこれ、サウナだ。
ペンネたんと中を覗いてみると、なんと全裸少女たちが中できゃぴきゃぴと会話していた。
すっげー、とりあえずCG激写。なんだこの楽園。確かに夢と熱気が詰まった楽園だ。
「ここって何なの?」
「私達ヴァンニクの為にメイブ様が作ってくれたバーニャだよ!」
へーっとアカネがバーニャ内を覗いた瞬間、固まった。
ギギギと潤滑油切れの機械みたいにヴァンニクに振り返ったアカネは恐る恐る尋ねる。
「サウナよね、これ?」
「おお、知ってるのかニンゲン。そう、これこそは我ら風呂守護妖精ヴァンニクの為に作られし神聖なるバーニャ。ぜひぜひ入っていってくんなまし!」
「いや、私はちょっと……」
「汗だくになりそうですね。今は、いいかなぁ」
「ニーズヘグ取りに行ってるメンバーが帰りに入る感じかしらね。あら、行くの?」
「誘われたのに誰も行かない訳には行くまい、少しだけ、入って来よう」
そして、服を脱ぎ去ったジョナサン、裸一貫、漢がバーニャへと堂々入って行く。
全裸少女の群れがいるサウナに、男が一人入って行った……
「き、きゃああああああああああああああっ」
あーあ。なんか凄い喧しくなったぞ。
アイツ、死んだな。
「巨人だ巨人。アルバストルかな?」
「わー、筋肉凄い、触っていい?」
「あははもじゃもじゃ。頭凄い」
……あれ? なんか意外と好意的? あの、そいつ男なのですが?
「あれ、いいの? 男なんだけど」
「私達ヴァンニクは男女とか気にしません。バーニャは神聖な場所なので裸であるのが当たり前、不埒な思考をする者こそが不埒モノなのです。そういう相手には熱湯浴びせたり背中引っかいたり首絞めます。こう、キュッと」
首絞めるジェスチャーするヴァンニクさん。色白なうえに銀色な髪なので凄く綺麗に見えるのだけど、その笑顔で首絞める動作は凄く恐いので止めてください。
「きゃー、なにそれすごーい」
っ!? 何があった!?
「あはは。凄い腰振りー。何ソレ、ダンス?」
「凄い汗飛びまくってるよおじさーん」
「ぽ――――ぅっ」
あの野郎何してんだ。美女に囲まれて腰振ってるだとぅ!?
「って、きゃあぁ!? 倒れた!?」
「そりゃそうでしょ、バーニャでそんなに動いたら駄目だって」
「でもニンゲン面白いねー」
覗いてみたけどどうやら激しく踊って力尽きただけのようだ。
ジョナサン死んだかー?
アルセがとことこ入って行って、倒れたままのジョナサンのアフロを引っ張り外へと連れ出して行った。
「うわー。ジョナサンの全裸とかもう見たくないんだけど」
「アカネさん、もはや見慣れたみたいに言わないでください」
顔を赤くして眼を逸らすリエラと普通に視界に収めて毒を吐くアカネさん。
アカネ、だいぶ擦れたなぁ。
「おー」
ヒヒイロアイヴィでジョナサンの息子さんを覆い隠したアルセが僕を見る。
あ、これ連れて行くの僕の役目なのね? はいアルセ、ペンネたんをよろしく。
アルセに言われ、僕は泣く泣くペンネを手放す。
アルセにしっかと抱きあげられたペンネたんに見つめられながら、ジョナサンの服を集めて服を着せてやる。パンツを頭に被せてみたけど、まぁこの辺りは適当でいいかな。
ジョナサンのアフロを引っ張って行こうかと思ったけど汗なのか湯気なのか濡れてるみたいだったので着せた服の腕部分を引っ張ることで連れて行くことにした。
地面を引きずっていくのは仕方無いことなので諦めてくれ。




