その選民思考の直し方を僕らは知らない
「とりあえず、どこから攻めようか?」
一度妖精郷に戻ってきた僕らは一塊りになって相談中。
「えーっと、ブラ……アニスさんいるし、私は一度メイブ様の元へ戻るのだわ」
「あ、エイケン・ドラムさん案内ありがとうございました」
「気にしなくていいのだわ。アニス、あまり迷惑掛けてはいけないのだわ」
「あら、問題はないわよ。私迷子以外に手は出さないもの」
迷子なら手を出すんだ。
「アルセが気に入ったから手を貸すだけよ。さぁアルセ。今タルイス・テーグたちは三人の大妖精の下に付いているわ。三大勢力ね」
エイケン・ドラムをさっさと送り出し、ブラック・アニス改めアニスさんが案内役を買って出る。
にしても、三大勢力かぁ。
「へぇ。じゃあその三人のボスを何とかすればタルイス・テーグたちも押し黙る訳?」
「いいえ。そもそもが種族で染み付いた性格だから、三人のボス? を訪ねても多分意味は無い、と思うわよ。でも現状を知る意味でもあの三人に会っておいた方がいいんじゃない?」
「なんか、面倒そうだなぁ。どうしますアカネさん、メリエさん、パルティ」
「んー。ちゃっちゃと終わらせたいし全員手分けしてってのでもいいけど、全員の言い分自分で聞いときたい気もするし」
「でしたらニーズヘグでしたか、そちらと二班に分けてはどうでしょうか?」
「あ、それいいですね」
「それで、すみませんがこちらにはもしもの為にパルティさんに来ていただきたいのですが」
「まぁ、あいつが手を拱いてるみたいだし、対四聖獣用の用意はいるか。いいわ。私は害虫退治組ね」
「じゃあ二班に分けましょうか」
と、言う訳で、タルイス・テーグ組とニーズヘグ組に別れることになりました。
「んじゃ、えーっとタルイス・テーグの鼻っ柱圧し折り組はリエラ、私、アルセ、ルクル、ペンネ、ジョナサン、アニスね。他はアニアが案内役でニーズヘグ行ってきて」
基本いつものメンバーにアニスが付いたくらいかな。
メリエ、パルティ、アニア、ローア、マクレイナ、コータ、テッテ、バルス、ユイア、アンサー、落ちこぼれニンニン、ルグス、にゃんだー探険隊、メイリャ、セキトリ、クルルカ、ハイネス、セネカ、マホウドリのマホはニーズヘグ討伐部隊に配属されました。
ニーズヘグって聞いたことはあるんだよな。ユグドラシルの根っこを食い荒らす害虫で、ニーズホッグとかニーズヘッグとか言われてる虫だったはずだ。
まぁ、どんなのが出てもパルティいるし問題は無いだろう。
というわけで、僕らはアニスに連れられて一人目の妖精さんの元へと向かった。
池の近くにある洞窟にそいつはいるらしく、アニス曰くお隣さんだそうだ。
そこには洞窟が二つ存在していて、右がアニスの家、隣が件のボスキャラだそうだ。
洞窟内はそこまで大きくなく、ただの洞穴のようで、アニスが無遠慮に一歩踏み込み、「シアナいるー?」と尋ねると、はーい。と声が聞こえてきた。
ゆっくりと出てくる金髪の女性。
おお、アニス同様人間とそう変わらない姿だ。
金髪の長い髪を揺らしながらやってきたのは優しげなお姉さん。
なぜかでっかい金色の弾を二つ、両脇に抱えてご登場です。
まばゆいばかりに金色の衣類を身に纏ったお姉さんは頬に手を当て細眼であらあら~っとアニスを見る。ゴトッと脇から離された金た……ゲフンゲフン。黄金の球が地面に落下した。
明らかに重そうな音がしたぞ今。
「アニスちゃんどうしたの?」
「ちょっと話してほしいんだけど、ほら、あんたを慕ってるタルイス・テーグたちのこと」
「あらー? 皆賑やかよ? どんな話をしてほしいの?」
「えーっと。アカネさん、どうしましょう」
「はいはい。こういう時は私出陣ね」
言いづらい話はアカネさん任せ。皆にお願いされる形でアカネ出陣です。
「実はタルイス・テーグたちの鼻っ柱圧し折るよう頼まれてね。貴女から自重するよう呼び掛けることはできるかしら? タルイス・テーグたちのボスなんでしょ?」
「ぼす~? なにかよくわかりませんが。タルイス・テーグたちは時々私の所に金でできた物を持ってきてくれるだけよ? 私が黄金好きだから気を利かせて持ってきてくれるの」
「ん、んー? なんか話がすれっすれで交わってないような?」
アカネの聞きたかったこととシアナの主張がクロスすることなくすれ違いました。
これは多分シアナさんとの認識が違うと思われます。
なるほど、面倒臭そうな予感しかしねぇ。
アカネもすぐに悟ったようで、他に幾つか世間話を交えてシアナから聞き取り調査を行って行く。
洞窟からでると、アカネは顎に手を当てふーむ。と息を吐いた。
「どうです?」
「正直、シアナにタルイス・テーグのボスやってるなんて自覚は無いみたいね。そもそも彼女達を友達感覚でなぜか来るたび金のお土産をくれる優しい子たちとしか認識してない」
多分、シアナが金髪だから金髪マニアのタルイス・テーグたちが勝手に慕っているだけのようだ。




